2021-11-02

Z世代インフルエンサーが本音で語る若者ぶっちゃけ会議(後編)

Z世代インフルエンサーとのタイアップに求められる「クリエーターエコノミー」視点
現役高校生を含むZ世代のインフルエンサーたちで構成された10代向け人気YouTubeチャンネル「CulTV(カルティービ―)」(チャンネル登録者数22.4万人※1)のメンバー6名に、電通テックのコンテンツビジネス室、若者消費ラボの4名がZ世代の「本音」を聞き出す今回の企画。前編ではSNSやマスメディアに対する意識を伺いましたが、後編ではインフルエンサーとしての企業案件への取り組み方や、Z世代の価値観について質問してみました。

※1……2021年10月現在
※2022年4月より電通テックから電通プロモーションプラスへ社名変更しました。

【座談会メンバー】

<CulTV(カルティービー)>
〇芹沢 瞬/せりしゅん(24歳)
〇馬場 海河(21歳)
〇よきさん(23歳)
〇池田 翼/いけつば(22歳)
〇ゆな(16歳)
〇もか(17歳)
※2021年10月時点

<株式会社電通テック>
○コンテンツビジネス室 川崎誠也・北川未来
○若者消費ラボ 大木佳奈・永井崇史

※インタビューはリモートで実施しました。
※撮影時のみマスクを外しています。


案件動画は、なるべくクリエーターの色や意見を尊重してほしい

電通テック川崎――私と北川の所属している電通テックのコンテンツビジネス室では、インフルエンサーマーケティングのお⼿伝いもしばしば⾏っています。そこで、みなさんのようなZ世代のインフルエンサーさんとお仕事をする上で、気をつけるべきポイントなどについて質問をさせてください。

質問⑩
――企業タイアップ案件を受ける機会もあると思いますが、​案件を受けるスタンスについて、率直なお考えをお聞かせください。

せりしゅん――お金で選ぶのではなく、自分で実際に使ってみて本当にいいなと思えた案件を受けたいなと思っています。動画の内容も過度に「案件、案件」はしたくなくて。極端な話ですけど、例えば普段メイク動画を紹介している女の子が案件で車を紹介するってなった時に、サムネにいきなり車の写真が出てきたら違和感があるじゃないですか。その場合は、サムネイルだけはその子の普段の動画のテイストに合わせてなじませてあげるとか……。企業の方が事前にガッチリと動画の内容を決められていることも多いんですけど、視聴回数を増やしたいのであれば、もっとクリエーターの意見も聞いて、寄り添ってほしいと思うことはありますね。


いけつば
――お仕事をいただいている立場としてはどんな案件もありがたいのですが、おこがましいことを言わせていただくと、そのクリエーターにとって紹介しやすいものを案件としていただけるとうれしいなとは思います。知識もない状態で、いきなりこの商品について紹介してくださいと言われても、正直良さを伝えられる自信がありません。視聴者は「こいつら全然使ってないじゃん」ということをすぐに見抜きますので、クリエーターの色に合った、自然な流れで紹介できる内容が一番いいのかなと思います。

よきさん――先ほどしゅんくんが言ったような、メイク系の女の子のチャンネルで車のタイアップ動画を作るとなった時、特にCulTVのようなマルチでエンタメ要素の強い動画に商品をなじませるとなると、相当企画を考え込まなければいけません。だとしたら、クリエーター本人が使ってみていいと思える商品であれば、変になじませないで、振り切ってストレートに商品を紹介するという内容でもいいのかなとも最近は思っています。というのも、数年前と比べると、YouTuberさんが案件動画に関わる機会も増えてきたせいか、視聴者の側も案件動画に対しての抵抗感が少なくなってきているんですよ。

CulTVチャンネルで配信している動画のサムネイル


せりしゅん――確かに昔は、案件動画をあげると「案件かよ(笑)」みたいなアンチコメントがたくさんつきましたね。

もか――最近はむしろ案件動画があると、視聴者から喜ばれます。グッジョブみたいな。

よきさん――クリエーターと視聴者が一緒に成長している感じなんですよね、今は。動画の内容に関しては、企業さんが譲ってくれる部分と、ここは最低限っていうところは絶対あると思っていて、そこの調整を代理店さんがうまくやってくれれば、すごく助かるなというのは正直あります。

電通テック川崎――なるほど。視聴者の心理としては、推してる若手アイドルの成長を喜んでいる感覚に近いのかもしれませんね。案件動画を依頼されるということは、それだけ応援しているYouTubeが有名になってきていることの証左だから「案件とれてよかったね!」とポジティブな反応になる。
ちなみに、参考までにお聞きしたいのですが、今までに断った企業案件ってあるんですか?

一同――(沈黙の後)あります(笑)。


プロモーションのポイント

・ユーザーの特性や喜ぶポイントを⼀番理解しているクリエーター自身の声に耳を傾けることが重要である。
・PRした商品やサービスが「クリエーターが使⽤していて違和感がない」「クリエーターが普段投稿している動画とトンマナが合う」かどうかを確認する。
・今は「PR案件動画」がクリエーターの成⻑を⽰す指標にもなってきているので、クリエーターを応援する視聴者の心理をうまく掴むことが、「案件動画」成功の鍵となりそう。





「Z世代」の自覚はないが、呼ばれることにネガティブな感情はない

質問⑪
――ご自身より年齢が高い方と接していて、​ジェネレーションギャップを感じることはありますか?​


電通テック永井――価値観についてギャップを感じることはないでしょうか。例えば、Z世代はSDGsなど社会問題に対しての意識が高いと言われることもありますよね。

もか――SDGsって、今学校で教わるんですよ。だから中高生の子たちは基本的な知識は持っているんじゃないでしょうか。ただ授業で調べたり、考えたりする機会はあるんですけど、1週間たったり、1ヵ月たったらみんな忘れているんだろうなと思います。


いけつば――同じZ世代でも、僕の年代は学校で習っていないので、SDGsについて知らない子も多い気がしますね。

電通テック永井――では、「Z世代はSDGsに関心が高い」というのは、勝手に言われている特徴という感じがしますか?

もか――そうですね。SDGsについてそこまで気にしている人がいるかと言われたら、そんなにいないと思います……。ただ、指標の中には私たちにとって身近な社会課題とかも盛り込まれているし、「SDGs」としては意識をしていないですけど、環境に優しいことをしようみたいな感覚は普通にあると思います。

質問⑫
――「Z世代は◯◯な特徴がある」といった、​世代でひと括りにされることへの違和感はありますか?​

電通テック川崎――
この質問を私たちがするのはおかしいかもしれないですけど、例えば、Z世代の前のミレニアル世代は、「ゆとり世代」とも言われて、「これだからゆとり世代は」と、ネガティブな捉えられ方をする機会も多かったんですよ。

もか――ひとくくりにされるほど、そこまでみんな同じではないなぁと思いますね。そもそも、Z世代という言葉を知らない子も多いですよね。

海河――「Z世代って呼ばれてるんだ、俺ら」って感じだったね。

いけつば――我々より上の年代から見て、「Z世代」というのはわかりやすいくくりではあると思います。ただ、当事者として「Z世代」と言われることに関して、特に思うことはありません。

よきさん
――「ゆとり」の時代と比べると、上の世代が積極的に若者の知識や価値観を吸い取って、理解しようとしているイメージがあるから、Z世代と呼ばれることに関しては、ネガな感情はないですね。

せりしゅん――上の方々が自分たちに合わせて話してくれるのはかわいいなと思います。「今、これがはやってるんでしょ?」みたいな。


一同――(笑)。

せりしゅん――すごく頑張って、はやってるものを言ってくれてるんだけど、別にそこまで自分たちも知らないから、「ああ、そういうのがあるんですね」みたいな(笑)。

電通テック川崎――社会人、特にマーケティングに従事する人々は「Z世代の特徴はこうです」「Z世代はこれが好き」と断定的に語ってしまいがちですが、お話を聞くと、イメージが先行し、誤解していることがたくさんありました。一方で、これまでの「ゆとり世代」などの若者論と違って、「Z世代」が肯定的なニュアンスで捉えられていること、そしてZ世代の当事者も、上の世代からの好意的な眼差しをしっかりと認識されているというのが新鮮でした。みなさんのリアルな声が聞けて、今日はいろいろと発見することが多かったです。本日はありがとうございました。

一同――ありがとうございました!



プロモーションのポイント

・彼らは「世代」で⾃分たちをくくらず、「個人」で考え、⾏動する傾向にある。
・Z世代に対する先入観を持たず、フラットな姿勢で接し、意⾒を聞き続けることが⼤事である。





【編集後記】
見えてきたのは「個人」や「クリエーター」に信頼を置くZ世代の実像

電通テック川崎――CulTVメンバーとの座談会を終えて、感じたことや印象に残ったことを最後に教えていただけますか?

電通テック五十嵐――興味深かったのは、彼らが最も信頼している情報源が「個人」であるということ。マスメディアの正確性や権威性より、YouTuberやSNSでフォローしている好きなモデルなど、自分と価値観や嗜好が似ているクリエーターの意見が、彼らに合っているのですね。これからのプロモーションは、クリエーターがやるべき「もっともらしさ」が必要ですし、トレンドを掴まないとすぐ時代遅れになるので、今後も若者研究を続けていきたいとおもいます。

電通テック大木――対談を終え、各プラットフォームごとに情報収集や役割が違うことを改めて感じました。デジタルネイティブ世代は様々なツールを駆使して情報収集をしているのだなと。また、Z世代と呼ばれる彼らは、ひとくくりにされがちですが、実際に対談をしてみてそれぞれ全然違った価値観や視点を持っていました。その中でもやはり「トレンド」というものは共通事項としてあるのかもと感じ、今後ともマーケティングに繋がるような様々な視点からの「トレンド」を追求していきたいです。

電通テック北川――案件動画の話から垣間見えた、彼らの作り手としての姿勢からも、クリエーターとしてのこだわりを強く感じることができました。クリエーターが企業やマスメディアよりも力を持つようになる「クリエーターエコノミー」という概念が盛んに叫ばれていますが、今後、第一線で活躍するZ世代のクリエーターはますます増えていくはずなので、企業がクリエーターと関係性を築いていく上で、彼らの意見は大いに参考になるのではないでしょうか。

電通テック永井――情報収集にもパターンがあるのが印象的でした。SNSのタイムラインやTikTokのトレンド欄など新しい情報と出会うための受動的な情報収集と、既に関⼼のある分野についての理解を深めるためにYouTubeで能動的に情報収集の2パターンがあるのではないかと思いました。企業が複数アカウントを運⽤する場合の情報の出し分けとしては、⽣活者が受動的な場合は、そもそも興味がない状態のため、瞬時に⾃分にとって有益なものであることを理解してもらう⼯夫が必要になりそうだと思います。⼀⽅で、能動的な場合は、ある程度関⼼があるので、情報の網羅性などが⼤事になるのではないでしょうか。


左から、五十嵐響介(若者消費ラボ)、永井崇史(若者消費ラボ)、北川未来(コンテンツビジネス室)、大木佳奈(若者消費ラボ)

若者消費ラボとは:
「若者の買いものを、もっとたのしく」をモットーにユニークな消費体験を提案する企画調査型ユニットです。若者で構成されたメンバーが、若者だから⾒えてくる視点で、企業様の課題を解決していきます。

コンテンツビジネス室とは:創造的活動によって⽣まれた著作物の権利(コンテンツ)を活⽤し、商品化、タイアップ、アニメプロデュースや映像制作まで、時には独⾃にコンテンツを⽣み出してビジネスを⾏うチームです。

芹沢 瞬/せりしゅん
美容系やファッションセンスに定評あり。YouTubeやTikTokだけでなく、声優やバラエティタレントとしてなど活躍の幅を広げている。YouTubeチャンネル登録者数22.1万人(2021年10月現在)

日比野 恵
雑誌『Popteen』の専属モデルを務める他、俳優として、様々な舞台などにも出演する、マルチなクリエーター。YouTubeチャンネル登録者数10万人(2021年10月現在)

よきさん
ネットを中心としたトップクリエーターを抱えるプロダクション株式会社VAZの元社員で、せりしゅん、馬場海河、池田翼の元マネージャー。ゆるい雰囲気や世界観、歌唱力に人気がある。

池田 翼/いけつば
話題の恋愛リアリティショーで若者から注目を集めたクリエーター。
歌唱力や演技力にも定評があり、モデルとしてなど活躍の場を広げている。
YouTubeチャンネル登録者数7.05万人(2021年10月現在)

ゆな
現役高校2年生で、雑誌「Popteen」の専属モデルを務めるほか、女優、バラエティ番組出演などマルチに活躍する女子高生クリエーター。
YouTubeチャンネル登録者数64.6万人(2021年10月現在)

もか
“いつでも泣ける”を武器に「DUO presents TGC AUDITION 2020」を勝ち上がったシンデレラガール。デビューから僅か1年でTikTokフォロワー数20万人を達成した女子高生インフルエンサー。YouTubeチャンネル登録者数8.31万人(2021年10月現在)

川崎 誠也
株式会社電通テック コンテンツビジネス室
2017年電通テック入社。1994年生まれのミレニアル世代。主に「インフルエンサー」を活用したプロモーションの企画・キャスティングから制作まで手掛ける。
アニメのプロデュースおよび、物販催事のPR作業にも従事。

北川 未来
株式会社電通テック コンテンツビジネス室
2020年電通テック入社。1995年生まれのミレニアル世代。
「アニメ・キャラクター」や「インフルエンサー」を活用したキャスティング・タイアップサービスの提供や、自社IPの開発・プロデュース業務に携わっている。

大木 佳奈
株式会社電通テック 若者消費ラボ
2019年電通テック入社。1995年生まれのギリギリミレニアル世代。普段はプランニングから運用まで幅広い領域を担当。若者消費ラボの中でもSDGs関連に特化していて、自身でも日ごろからソーシャルグッドな行動を実践している。

永井 崇史
株式会社電通テック 若者消費ラボ
2019年電通テック入社。1996年生まれのZ世代として若者消費ラボの活動に参加。主に飲料メーカーを中心としたプランニングに従事。
プライベートでは筋トレとキャンプ、サウナが趣味。担当領域はヘルスケア/SNS。

五十嵐 響介
株式会社電通テック 若者消費ラボ
2013年電通テック入社。「若者消費ラボ」発起人であり、リーダーを務める。
記事執筆や外部講演など精力的に活動。
ご飯をつくるのも、食べるのも好き。スパイスカレーとつくりおき男子。担当は食・アニメ・昭和/平成レトロ。

Written by: BAE編集部

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