2020-01-31

OMO時代におけるアプリの役割――D2Cの加速とファン化の促進

エンゲージメントを高める架け橋としてのアプリ活用
現在も日本を含め、世界のアプリ市場は成長し続けています。しかしなぜ、昔からあるアプリが現在も伸び続けているのでしょうか。また企業がアプリを利用する理由、またそのメリットとは、どのように変化してきたのでしょうか。

スマートフォンアプリをプログラミング不要で開発・運用・分析できる自社アプリ開発プラットフォーム「Yappli」を運営する、株式会社ヤプリ マーケティングスペシャリスト 島袋 孝一さんにお話を聞きました。


非ゲーム系アプリの台頭でさらに拡大するアプリ市場

——まず、世界的に見て、アプリ市場は伸長傾向にあるとのことですが、その市場規模とは、どれほどのものなのでしょうか?

世界最大級のアプリデータプロバイダー・App Annieの調査によれば、世界のアプリ市場は、2016年に620億ドル、2017年に820億ドル、そして2021年には1,390億ドルと、今後も順調に成長する見込みです。


その背景には、以前はアプリといえば「ゲーム」系が主流でしたが、昨今「非ゲーム」系のアプリのダウンロード数が伸びていることも関係しています。たとえば最近ですと、NetflixやSpotifyなどのサブスクリプションサービスを、スマホアプリで利用するケースも急増していますよね。

今後アプリ市場は、「動画」や「音楽」、「ソーシャル」「コミュニケーション」といった、ゲーム以外のアプリによって、さらなる成長を遂げることになるでしょう。

日本でもその傾向は同様です。加えて、ジャストシステムの調査によれば、2019年の時点で、10〜50代のスマホ保有率は86〜91%、さらに60代でも68%に達しています。シニア層にもスマホが浸透し始めたことで、新たな市場が生まれる可能性も出てきています。

——いま、なぜ「非ゲーム」系のアプリの分野が伸びているのでしょうか?

アプリ利用のメリットは、プッシュ通知などの機能によって、ユーザーとのエンゲージメントを強化できる点にあります。企業はユーザーとより密にコミュニケーションができますし、ユーザーは欲しい情報をいつでも得られる。まさにWin-Winな状態を生み出すことができます。また、オウンドメディア的に情報を発信したり、ポイントカード機能を加えたりするなど、さまざまなコミュニケーションの方法が可能なため、顧客育成にも寄与します。

さらにOMO時代の現代においては、オンラインとオフラインは別世界ではなく、つながっていますから、アプリがECサイトやリアル店舗をつなぐ役目を果たしているため、そのニーズも高まりを見せているのです。いうならば、スマホアプリは、繁華街における店舗のようなもの。出店しないことは、機会損失につながってしまうと考える企業が増えてきているわけです。そうした時代背景も、ユーザーにとって身近な存在である“アプリ”を活用しようという企業の意識を高める要因のひとつになっていると感じます。

しかし、アプリ利用のメリットはわかっていても、これまでコストや運用面が大きな障壁となっていました。その課題を解決したのが、スマホアプリの開発プラットフォーム「Yappli」です。

それまで、アプリ開発といえば数千万円単位の制作費と高額のランニングコストが発生していました。また、運用にはプログラミング知識を有するエンジニアなどの配置が必要だったこともあり、大企業以外にとって、アプリ導入のハードルは、非常に高いものとなっていました。

しかしYappliであれば、アプリの開発・運用・分析をプログラミング不要で利用可能です。Yappliは、多数の機能が用意されており、またデザインの自由度も高いプラットフォームです。品質の高いアプリを誰でも運用できる環境を提供することで、企業のアプリ導入のハードルを下げることに成功しました。

Yappliの管理画面イメージ。同アプリでは、テンプレートを活用することで、ほしい機能を搭載した、オリジナルアプリを簡単に作成できる

2019年時点でYappliは、約300社が利用するアプリプラットフォームに成長し、現在の合計ダウンロード数は3,500万件に達しています。現在サービスをご利用いただいているのは、アパレルや食品メーカー、大学など、幅広い分野にわたっています。

またお問い合わせの数も非常に多く、「実はアプリを利用したい」と考えていた潜在ニーズの高さを、私たちは日々、肌で実感しています。企業のデジタルマーケティングの施策として、すぐに想起できるのは、無料で始められるSNSアカウント運用や、瞬発力のある広告宣伝施策でしょう。しかしここ数年、企業と消費者が、直接的かつ継続的につながっていくための手段として、スマホアプリの価値が再評価され、重要視されているのを感じます。


ファン化を促進し、D2Cを加速させる「アプリ」

——これまでアプリ利用をしていなかった企業がアプリを活用し始めたということですが、その目的とはどのようなものなのでしょうか?

以前から、スマホとEコマースは親和性が高く、最近では、Instagramのショッピング機能やライブコマース、インフルエンサーマーケティングが注目を集めるなど、ショッピングは新時代を迎えています。そのなかで、ブランドと顧客をさらに強く結ぶ架け橋として、自社アプリのニーズがアパレルブランドを中心に高まっています。

経済学では、パレートの法則「2割の優良顧客が8割の売上を生み出す」といわれていますが、優良顧客とは“商品(もしくは企業やブランド・サービス)の熱狂的なファン”でもありますから、常に情報を求めている顧客ともいえます。ですから、自社アプリを上手に活用すれば、大きな効果を発揮するポテンシャルがそこにはあるのです。

株式会社ヤプリ マーケティングスペシャリスト 島袋 孝一さん

——アプリによって、企業はD2C(Direct to Consumer)を加速させることができるわけですね。

はい。まさにその通りです。アプリでファン化を促進し、ECサイトや実店舗に誘導し、商品の購入を促すことで、D2Cを加速させることが可能です。加えて、アプリを利用すれば、アプリからの流入数はもちろん、顧客がアプリ内でどんな情報を閲覧したかも把握できますから、より深く顧客を知ることが可能です。

スマホを使うことが日常ならば、アプリは生活の一部です。企業と顧客をつなぐハブという役割を、現在アプリは果たしています。OMO時代の現代において、アプリを利用することは、時代に即したユーザーとのコミュニケーションであり、非常に有効な手段だといえます。またアプリにおいても、ユーザーは良質な体験を求めています。そこでどんな体験を提供できるかが、愛されるアプリになれるかどうかのカギとなります。

——では、愛される(利用される)アプリになるためには、どんなことが大切なのでしょうか?

アプリは様々なトライをしやすい環境にありますから、ユーザー目線でモノを考え、さまざまな試みをしてみることが大切です。販促で利用する際にも、プッシュ通知の開封率によって効果測定できますし、結果に応じて、改善を繰り返すことで利用は促進されるでしょう。

たとえば、Yappliをご利用いただいている、某アウトドアブランドは、ユーザー目線を大切にした情報発信を意識することで、成功を収めた企業のひとつです。同社はアプリを、ショップスタッフによるスタイルなどを発信するオウンドメディア的に利用することで、ブランディングに活用しています。結果、現在プッシュ通知の開封率は約40%と高く、配布したクーポンの利用率も高いものとなっています。

また販促に限らず、プッシュ通知(情報提供)の頻度についても、ユーザー目線での検討が必要です。若年層のブランドであれば、1日に数回というケースもあり、シニア向けであれば、月に1回というケースもあります。重要なのは回数ではなく、ユーザーが“好意的に受け止める頻度とメッセージ”であることです。

ほかには、ユーザビリティを考慮し、機能は絞って、シンプルな構成にした方がアプリは利用されやすい傾向にありますね。また、短期期間だけのキャンペーンアプリよりも、長期的に顧客との関係を構築する場として活用する方がアプリは効果を発揮しやすいという特徴があります。


シニア向けや社内用途など、さらに利用が拡大する未来

——今後、アプリによって、生まれる可能性について教えてください。

日本ではシニア層のスマホ保有率も7割弱あり、彼らのアプリ利用も活発です。Yappliのお客様である、明太子メーカー「ふくや」様のアプリをダウンロードしているのは60代以上のユーザーも多く、若年層だけでなく、幅広い年代にアプリ経由でのコミュニケーションが有効な時代が到来していることがうかがえます。

「ふくや」の公式アプリは、シニア層の利用も多く、スマートフォン経由のECサイト流入に貢献している

今後アプリのニーズはさらに高まり、役割も増えていくのではないでしょうか。最近では、企業とユーザーだけでなく、社内コミュニケーションの円滑化、情報共有の効率化を目的とした、社内アプリのニーズも高まっています。社内の部署や社員同士・取引先をつなぐ架け橋としても、アプリ利用のシーンは拡大していくと考えています。

そしてこの先に、どのような時代が待っているとしても、私たちはアプリ開発のプラットフォーマーとして、さらなる進化を遂げ、企業とユーザーをつなぐサポートをし続けていきたいです。

世界的に伸長し続けるアプリ市場。アメリカではスーパーなど小売店でのアプリ活用もトレンドとなっています。
ユーザーとのエンゲージメントを高めるアプリは、開発のハードルが下がったことや、ユーザーの消費行動の多様化などの背景から、今後利用のシーンは拡大していくでしょう。
Written by: BAE編集部

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