2023-05-11

9割近くのユーザーがチェックする「UGC」──購買につながる活用法とは

リアルなクチコミ「UGC」が起こす態度変容
情報過多時代とも呼べる現代。ユーザーはいま、信用性の高い情報を探しています。そのなかで、「信頼できる情報」であり、「人々を動かす効果」があると注目されているのが「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」です。

その現在地と、購買につなげるポイントとは、どのようなものなのでしょうか。
日本、アジア、欧米でマーケティングDX支援事業を展開し、運用型UGCソリューション「Letro(レトロ)」の提供ならびに、UGCに関する意識調査も実施しているアライドアーキテクツ株式会社 取締役 村岡 弥真人さんに、電通プロモーションプラスでSNS領域を担当する菅原あかりが聞きました。

【対談メンバー】
〇アライドアーキテクツ株式会社 取締役村岡 弥真人
〇電通プロモーションプラス デジタルエクスペリエンス事業部 デジタルストラテジー推進3部 菅原あかり


年々上昇している「UGCの信頼度」

菅原――私は現在、SNSマーケティング全般に関わる仕事をしています。そのなかで、ユーザー生成コンテンツ「UGC」の創出・活用はSNS領域だけでなく、マーケティング全般において重要なテーマであると捉えています。村岡さんは、昨今UGCが注目される背景について、どのようにお考えですか?

村岡――インターネットが普及し、ライフスタイル全体のデジタルシフトが加速するなかで、私たちがデジタル広告に触れる機会は激増しました。結果、ユーザーは広告に対して敏感になるのと同時に、広告=企業発信の情報であり、その信頼性は高くないと考えるようになりました。では、信頼できる情報はどこにあるのだろうと考えたときに、自然と「誰かのクチコミ」(UGC)に行き着いたと推測しています。

菅原――時代が目まぐるしく変化するなかで、「UGC」への信頼度は年々高まっている印象があります。御社では、「UGCに対する意識調査」も行っておられますが、最新の調査ではどのような結果になっているのでしょうか。

村岡――2019年、ニールセン デジタル株式会社が発表した調査によれば、「購買の際にUGCを信頼する」と回答した30代のユーザーは33%(2017年)から45%(2019年)に増加していました。さらにその傾向は加速し、私たちが2022年に実施した同調査では69.9%にまで上昇。UGCの信頼度は、ますます高まっていることがわかりました。

生活者の64.6%が購買行動においてUGCを信頼すると回答。30代の生活者では、信頼すると回答した割合は2022年には約7割にまで上昇。
出典:「生活者のUGCに対する意識調査 2022」(2022年8月実施)

菅原――6割以上ものユーザーが信頼していると考えると、その影響力も自ずと大きくなりますよね。

一方で、友人や家族、同僚からシェアされる「クチコミ」自体は、昔からありました。今はそれがネット上で展開されているわけですが、年々UGCへの信頼が高まり、マーケティングにおいても注目度が高まっているのはなぜでしょうか?

村岡――コロナ禍で、外に出ることもできず、人にも会えず、買い物はEC、情報はオンライン上に求めるしかない、という期間があったことは、「UGC」ニーズの高まりに大きな影響を与えたと思います。当時は、新型コロナウイルス感染症自体に関する情報も錯綜していましたし、誰もがオンライン上で「正しい情報」を求めていました。そうした背景から多くのユーザーが「UGC」を信頼できる情報として認知し、頼った影響もあると考えています。

菅原――そう考えると、2022年に「UGC」の信頼度がコロナ禍前より高まっていた理由も理解できますね。

現代ユーザーのおよそ9割が、ネットで商品を購入する際にUGCをチェックすると回答。UGCを最終の購入判断の材料に活用している様子がうかがえる 出典:「生活者の購買行動におけるUGC 影響度調査 2022」(2022年10月-11月実施)


購買につながるUGCは、「体験主語」

菅原――「UGC」は、一般ユーザーに自発的に投稿してもらう必要があります。誘発するためのポイントなどについて、村岡さんの考えをお聞かせください。

村岡――まず、効果を発揮する「UGC」というのは、誰のどんな課題をいかに解決したかが、ユーザー目線で語られているものです。そこに共感が生まれるから、同じ商品やサービスを求めるわけです。これを私は「体験主語のUGC」と呼んでいます。一方で、商品の概要や機能だけを紹介している「UGC」というのは、「商品主語のUGC」です。共感を呼びづらく、行動にもつながりづらい傾向にあります。

菅原――つまり、心が動く体験がそこにあるかどうかが、「体験主語のUGC」誘発のポイントなのですね。

村岡――はい。たとえば、少し前に流行った「LOHACO(ロハコ)」で販売しているラベルレスのミネラルウォーターは、リサイクルをしたいけれど、毎回ラベルを剥がすのが面倒だと感じていた主婦の方の共感を呼んだ商品でした。ラベルを剥がすという手間(課題)を解決したから、そこに感動が生まれ、「体験主語のUGC」が自然と生まれたわけです。

菅原――広告は、認知拡大を目的に展開することが多いので、商品名や概要・機能性を訴求します。次に、その広告に触れたユーザーが「UGC」に触れ、共感できるような流れを生み出せると、購買につながりやすいように思いました。
私が担当したある飲料メーカー様でも、SNS運用で「共創マーケティング」に力を入れていましたが、お客様の声も参考にしながら運用に取り組んだところ、UGCの投稿率が前年比120%となり定常的に良質なUGCを生み出すアカウントへ成長しました。



村岡――「UGC」は、一般ユーザーに自発的に投稿してもらう必要があります。誘発するためのポイントなどについて、村岡さんの考えをお聞かせください。

菅原――はい。商材特性や施策目的に合わせて、ブランドの共感につながる「UGC」を生み出していければ、最終的に購買にまでつなげられるのではないかと考えています。

――最も購入意思に影響するUGCは「テキスト」

村岡――いちばんイメージしやすい「体験主語のUGC」の例は、Amazonのレビューです。「こんな問題があったけど、この商品を使ったら解決しました。★5つ」など、非常にわかりやすしですし、購入するかどうかの決め手にもなります。

菅原――たしかに、あのレビューにはプロもアマチュアもないですし、自発的な行動によるものでしょうから、信用度も高いと受け取りますよね。

村岡――そこにある主な情報は「テキスト」です。非常にシンプルですが、私たちが行った調査でも、「いちばん購入意思に影響するUGCはテキスト」と回答した方が半数近くを占めました。

ユーザーの半数近く(49.4%)がテキストのUGCを購入意思に影響すると回答 出典:「生活者のUGCに対する意識調査 2022」(2022年8月実施)

菅原――次いで「写真のUGCが購入意思に影響する」と回答している方が29.4%いる点も興味深いです。

村岡――前述の通り、「UGC」において大切なのは、誰のどんな課題をいかに解決したかがわかることです。テキストではわかりづらいもの、たとえばコスメ関連などは、写真の方が相性は良い傾向にあります。加えてテキストもあれば、利用体験や課題解決のストーリーを共有できますから、より共感しやすくなり、購買にもつながりやすくなると思います。

菅原――「動画のUGCが購入意思に影響する」という方もおよそ2割いますね。動画であれば、商品のことも、解決できる課題についても伝えることができます。うまく活用すれば、テキスト、画像以上により深く届けることもできそうですね。

村岡――そうですね。TikTokやInstagramの縦型動画「リール」も流行っていますし、今後、動画タイプの「UGC」は、さらに増えていくと私も予想しています。

菅原――私も、食品メーカー様の案件などを通して、TikTokハッシュチャレンジやInstagramストーリーズから参加できるキャンペーン、実際に食べた人のレシピや感想などの生の声を動画に編集して店頭で流すなど、UGCを活用した販促スタイルが最近のトレンドだと感じています。また、クライアント様からも、「商品を手に取ってもらうためにはユーザーの本音やリアルな表情が重要であり、そういった生の声の方が説得力がある」というお声を多くいただきます。

――UGCと相性が良い、リテールと実店舗

菅原――リテール全般、「UGC」との相性は良いように思うのですが、具体的なデータはありますか?

村岡――小売店・実店舗でもクチコミ・レビューをチェックするかどうかを調査したところ、化粧品・スキンケア、ヘアケア、アパレル、食品・飲料、健康食品のすべての分野で、4割強のユーザーが「チェックする」と回答しています。


実店舗での購入時においても、約4割がUGCをチェックすると回答 出典:「生活者のUGCに対する意識調査 2022」(2022年8月実施)

菅原――多くのユーザーがネットだけでなく、実店舗での買い物においても「UGC」を重視しているということが、このグラフからわかりますね。

村岡――ですから、「UGC」を活用しないことは、ECと実店舗、両方で機会損失を生んでいる可能性があるわけです。一方で、実は自社で「UGC」を抱えているのに、活用できていないケースも多くあります。たとえば、カスタマーセンターを運営している企業であれば、そこに集まる「顧客の声」は、「UGC」としてネット上に展開することができます。弊社では、「UGC活用」の一環として、そうした声の可視化、デジタル化の支援も行っています。

菅原――ユーザー発信の声が「購入の決め手」になるのであれば、有効利用しないのはもったいないですよね。

村岡――はい。「UGC」には行動を促したり、認識を変えたりする効果があります。そこで重要なのが、自分を重ねられるユーザーの声があるかどうかです。以前に洋服のサブスクサービスの支援をさせていただいた際、それまでなかった「働くママ」層の声を掲載したところ、CVRが倍になったというケースもあります。

菅原――同じ「働くママ」の声を見て、「だったら自分もサービスを利用してみよう」となるユーザーが増えたのですね。ユーザー発信だからこそ、「誰が」の部分で共感できるかどうかも、非常に重要なのですね。

村岡――はい。一方で、「UGC」を認知拡大に利用するというのは、少し違う気もします。認知拡大であれば、テレビCMやウェブ広告を出稿するほうが目的に合致していると感じます。「UGC」には「UGC」の特性に沿った活用をすることが成功のポイントだと考えています。

ユーザーの半数以上が「テレビCM・番組」または「店頭」を、商品・サービスなどを知るきっかけと回答 出典:「生活者のUGCに対する意識調査 2022」(2022年8月実施)


ブランド愛着度の指標にもなる「UGC」

菅原――昨今、類似商品が多く、他社との差別化が難しいといった「コモディティ化」もマーケティングにおける課題として広く認識されています。差別化という点でも、「UGC」は効果を発揮するのではないでしょうか?

村岡――これだけ「UGC」の価値が高まってくると、広告をいくら打っても、もし「UGC」がネット上に少なかったら、その商品・サービスへの信頼は下がることになります。広告的なリーチも大事ですが、実際の顧客がどれだけいるのか、そこからどれだけ良質な「UGC」が生まれているのかは、もっと大切だと感じます。つまり、日々ネットに新たな「UGC」が誕生するようなブランド体験を提供することが、これからのブランディングにおける重要なポイントだと思います。

菅原――
「UGC」の数がそのままファンの数であり、ブランド愛着度の指標になりえる世界というのは、よくわかります。
実際に、施策の効果検証においても、ハッシュタグがどれほど拡散されたかは重要なKPIとなります。「UGC」が多く見られると、プロモーションを行うことで企業の意図が伝わっていることも可視化されますし、その「UGC」の積み上げがファン化・ブランド愛着につながると感じています。

多くのユーザーは、「自分に合っているかどうか」をUGCで確認したいと考えている 出典:「生活者のUGCに対する意識調査 2022」(2022年8月実施)

菅原――ちなみに、御社の調査の対象は、10代〜60代となっていますが、年齢によっても「UGC」の受け止め方は異なるのでしょうか?

村岡――そうですね。これは私の感覚値の部分もあるのですが、一般的に若い方のほうがデジタルに多く触れてきていますから、「UGC」を見る目は厳しい。一方で、シニアの方は、正しい情報であれば「UGC」の効果が発揮されやすい傾向にあります。

菅原――「UGC」は若い世代に効果を発揮するイメージがありますが、たしかにシニアの方のスマホ利用も増えていますし、年代問わず「UGC」を活用できる可能性がありますね。

――テキストと写真のUGCでCVRを向上〜ZEMB JAPAN〜

菅原――「UGC」をマーケティングに活用した御社の事例があれば、お聞かせください。

村岡――SNS上でバズってモノが売れる現象も「UGC」のマーケティング活用の一種ですが、これは狙って起こせるものではありません。「UGC」の持つ、購買意欲を高めるという特性を生かして、商品サイトの信頼性を高めた事例をひとつ、ご紹介します。

菅原――お願いします。

村岡――ミツカングループの「ZEMB JAPAN(ゼンブジャパン)」では、豆100%麺「ゼンブヌードル」という商品を販売しています。この商品サイトでは、概要や特徴だけでなく、スクロールするごとに「レビュー(テキストのUGC)」と、購入したユーザーが作った料理写真「画像のUGC(Instagram)」を掲載し、UGCの最適化運用を行ったことでCVR1.9倍、コンバージョン件数は2.1倍にまで引き上がりました。


「ゼンブヌードル」商品サイトTOP 出典:「ゼンブヌードル」(https://zenb.jp/pages/noodle

 

サイト内のレビュー 出典:「ゼンブヌードル」(https://zenb.jp/pages/noodle


菅原――食品なので「味」は気になるところですよね。その説明を、商品主語ではなく、ユーザーによる体験主語で届けると、たしかに説得力がありますね。

村岡――はい。加えて、食材としての使いやすさを訴求するために、Instagramにアップされた購入者の方の作った料理写真を、まとめて掲載しています。これにより、「おいしくて、使いやすい食材である」ことを、テキストと写真の「UGC」を活用し、表現しています。

「ゼンブヌードル」商品サイトの「写真のUGC」(Instagram) 出典:「ゼンブヌードル」(https://zenb.jp/pages/noodle)リッチテキストを入力してください


菅原
――自社で運営しているサイトでも、「UGC」を活用すれば、商品の魅力を第三者視点で伝えられるというのは、大きなメリットですね。

村岡――はい。これは一例ですが、SNS上にある「UGC」も、自社収集の「UGC」も等しく価値があることは、ぜひ知っておいてほしいですね。


今後「UGC」は細分化し、当たり前になっていく

菅原――最後に、これからの「UGC」がどう変化していくとお考えなのか、聞かせてください。

村岡――今後、「UGC」は多様化、細分化していくような流れが起きると予想しています。その未来では、プロ制作の広告と、一般ユーザーが生み出す「UGC」はさらに融合し、併用することがマーケティングにおける当たり前になると私は考えています。そこで重要になるのは、目的に応じた使い分け、適切な活用。より緻密なマーケティング戦略が求められる時代になるのではないでしょうか。

菅原――
そうですね。「体験主語のUGC」は、顧客でなければ発信できません。そのためには「UGC」が生まれるブランドである必要があります。そこで重要になるのが、共感される顧客体験をブランディングからプロモーションまで一気通貫で設計し、長期的な関係構築も見据えたマーケティング戦略です。

コロナ禍やDXによってライフスタイルが変化し、人々の購買意欲のスイッチも多様化しています。ですが、広告メッセージがしっかり顧客に伝われば、それは「UGC」という反響として返ってきます。買わせるのではなく、買いたくなる気持ちをつくる。その意識を持って、「UGC」を理解、活用することが重要だと感じました。本日はありがとうございました。

ユーザーの9割近くがチェックし、6割超が信頼するユーザー生成コンテンツ「UGC」は、購入の決め手にもなりうるコンテンツです。いわば「UGC」は、いまの顧客が次の顧客を生み出す装置とも言えます。SNSだけでなく、自社のカスタマーセンター経由で収集したものをコンテンツ化して活用するという選択肢もあります。今後その重要性、活用の範囲はますます広がりを見せていくのではないでしょうか。


村岡 弥真人
アライドアーキテクツ株式会社 取締役 兼 CPO(Chief Product Officer)
大手ガラスメーカー勤務を経て2012年にアライドアーキテクツ入社。2014年よりSNS広告に特化した広告代理事業を立ち上げ、自社最大の事業まで事業拡大を行う。2016年にUGC Centric Creative Platform "Letro"の提供を開始、FacebookおよびInstagramのオフィシャルパートナーに。2017年より自社プロダクト事業全体の統括を行い、ベトナムの開発子会社2社の経営も兼任。2018年CPOに就任。2021年取締役就任。

菅原 あかり
株式会社電通プロモーションプラス
デジタルエクスペリエンス事業部 デジタルストラテジー推進3部
新卒で電通テック(現プロモーションプラス)に入社後、OMOプロデューサーとして、ナーチャリング施策の立案、サービス開発、キャンペーン・イベント企画から実施までを担当。2020年よりSNS領域に従事。CX戦略から企画立案、メディアプランニングまで、SNSを軸にしたコミュニケーションデザインを手掛ける。常に顧客インサイトに基づき、昨日より今日、今日より明日が豊かになる体験構築を目指す。

Written by: BAE編集部

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