まちづくりやソーシャルイノベーション(社会システム改革)に、デザインやクリエーティブの力を積極的に活用する動きが広まっています。 公共空間における魅力的で新しいプロダクトは、周囲の環境や人々にどのような影響を与えるのでしょうか。 渋谷区の公共トイレを新たに建て直し、高いデザイン性によって再定義したことで話題の「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの事例から、「公共空間×クリエーティブ」の効果や可能性について、日本財団の花岡さんにお話を伺いました。
それもTHE TOKYO TOILETの重要な意義の一つです。渋谷は一つの目的や用事のためだけに訪れるのはもったいない、魅力あふれる街です。点在する公共物を変身させることで、渋谷を“点”ではなく、広く“面”で捉えてもらうことが可能になります。建築ファンならずとも、「まわって見たい」と思われるでしょう。
——THE TOKYO TOILETが実現した結果、「公共空間×クリエーティブ」によってインクルーシブな社会の形成に繋げるという課題には、どのような影響が表れたと考えられるでしょうか。
予想以上に多くの方の興味関心が寄せられ、また話題にもなったことで、公共(まち)と人、また人と人との繋がりやコミュニケーションを増やす効果が得られました。目的通り、目指す社会像をどう伝えるかという事例の一つとなり、成熟した都市における望ましい公共空間のモデルにもなったと思います。 THE TOKYO TOILETをきっかけに、ユニバーサルな公共施設の在り方や、周辺環境の美化などに関心を寄せてもらう結果に繋がるなら、素晴らしいことだと思います。
今後クリエーターが自発的に社会課題に貢献する、社会課題の側がクリエーターに解決策を求める、という例も増えるのではないかと思っています。 社会課題に対する問題意識の強いミレニアル世代の台頭なども影響して、バブル期のように立派な建築やプロダクトを高額で売買するだけではなく、根底にあるアイデアや工夫を社会や公共のために生かそうという潮流が生まれていることを感じています。 THE TOKYO TOILETは私たちが旗振りをする形でしたが、今後はクリエーター自身が社会的なテーマに積極的に向き合っていく方向に進むのではないでしょうか。