2020-03-10

店舗での買い物体験を向上させ、OMOを促進するスマートミラーの活用術

売り場で活用され、EC、SNSと連携させるポイントとは
スマートミラーはユーザーの買い物体験を向上させるインストアテクノロジー。鏡面×タブレットによる試着や試用、レコメンドなどの技術でユーザビリティを向上させるだけではなく、ユーザーデータの取得、店舗の最適化、オムニチャネル化等を推進するツールとして注目されています。
しかし、スマートミラーのような最新のデジタルツールは、いざ導入しても現場であまり使われず、宝の持ち腐れとなってしまうケースも少なくありません。そんな中、数年前から活用を順調に広げ、ユーザーからも店舗からも好評を得ているのが、バーチャルメイクが可能なスマートミラーである「YouCam(ユーカム)メイク」です。
売り場でワークさせるためのスマートミラーの導入のコツを、「YouCamメイク」を展開するパーフェクト株式会社の磯崎さんにお話を伺いました。


ユーザーに新しい発見をしてもらうためのテクノロジー

——AR×AI技術によるバーチャルメイク。現在、店頭での活用はどのくらい進んでいるのでしょうか。

私たちは250以上の化粧品メーカーやブランドとコラボして、店頭でさまざまなコスメのアイテムをバーチャルで試せる、YouCam(ユーカム)メイクの「インストア コンサルテーションモード」を展開しています。

百貨店、路面店、ドラッグストアと店舗形式を問わず活用され、評価を得ています。例えば、米国の「エスティ ローダー」では店舗、カウンターで約8,000台が活用されています。2019年10月からはドラッグストア「トモズ」(東京10店舗、台湾10店舗)に導入され、「化粧品の売り上げが非導入店と比べて好調に推移している」と好評をいただいています。

AR×AI技術によって、自然で美しい仕上がりのバーチャルメイクが可能に。店頭のミラー(タブレット)やスマホに顔を映すだけで、瞬時にバーチャルメイクが試せる

2018年には阪急うめだ本店のコスメフロア「HANKYU BEAUTY」の店頭で月9万回、「HANKYU BEAUTY STUDIO」で月13万回トライ(アイテムのタップ数)された

——高評価の理由はどこにあるのでしょうか。

ただの便利なツールとしてスマートミラーを設置しているわけではなく、スマートミラーを介して店頭でバーチャルメイクの質の高さを体験してもらうことや、ユーザーに新しい発見をしてもらうための環境づくりの試みに成功しており、そこを評価されていると考えています。

通常、顧客が店頭でリアルに試せるアイテムは3、4色で、自分好みの色を選びがちですが、バーチャルなら1分間で30色以上を試してもらえます。リップ、シャドウ、チークと気軽に組み合わせることも可能ですから、複数買いを増やす効果が期待できます。
例えば、エスティ ローダーでは、イベントでリップのレコメンドを中心にした施策によって、バスケットサイズが3倍アップしました。

中央の白いデバイスがスマートミラー。ドラッグストア等でのバーチャルトライはサンプルの大量消費・廃棄等によるゴミ問題等の社会課題の解決に繋がる点からも評価されている


ユーザーのジャーニーや習慣に溶け込ませるのがコツ

——スマートミラーを介してユーザーと良好なコミュニケーションをはかるための、店頭でのポイントを教えてください。

まず大事なのが、ユーザーの体験と自由度、便利さを最優先することです。見せる側のこだわりや複雑化を避け、「スマートミラーで何をするか」をユーザー側の視点で徹底的に考える必要があるでしょう。

私たちのようにコスメを扱う場合であれば、アイテムの前を通りかかった際に、気軽にパパッとカラーが試せる、というように、カスタマージャーニーに溶け込むくらいカジュアルなほうが使ってもらえます。コスメのセレクトショップ「フルーツギャザリング」では、さまざまなブランドのリップが並ぶリップバーにYouCamをセットしており、非常に人気があります。

——ユーザーの視線を惹きつけるコツなどはあるでしょうか。

例えば、コーセーのコンセプトストア「Maison KOSÉ」では通常の鏡とスマートミラーが並べられています。これによって、ユーザーの視認性が向上し、直感的かつ自然と触れてもらうことに成功しています。逆に、スマートミラーと向き合うためにユーザー側が移動しなくてはならない環境にしてしまうと、エンゲージメントは激減しますね。

鏡の隣にセットすることで自然と視界に入る。少し上に設置することで、多くの女性が自分の顔を見るときに好む、やや上目遣いのアングルで見せるなどの効果も

——設置してもユーザーに使ってもらえなかった事例などはあるのでしょうか。

過去に、“特別な売り場”を作ったことでスマートミラーが店舗になじめず、結果的に失敗例となったケースがあります。あるショップで、売り場の一角に豪華なインテリアを配し、魔法の鏡のようなスマートミラーを設置しました。オープニングイベントでは未来的で美しいと絶賛を受けて成功しましたが、デイリーのオペレーションに入った途端、まったく使われなくなってしまいました。通常時のユーザーのジャーニーや心理からは逸脱していたのです。

イベントとデイリーでは、店舗内の温度感や条件、スタッフの動きなど、全てが異なります。普段の店頭では、ぱっと見が素晴らしくても「あれに触ってもいいのかな」という戸惑いがあると、近寄ってもらえませんでした。「顔が大きく映るところを他人に見られたくない」といった気持ちも、トライの際の心理的障壁になっていました。店内でのユーザーの導線上に、違和感がなく、心理的な抵抗を感じさせない形で置かれていたほうが、使われやすいのです。

それから、これはリアル店舗特有の面白い現象ですが、スマートミラーではなくサイネージだと思われると、触ってもらえません。スリープ中に動画を流したり、おしゃれなトップページを表示していたりするとサイネージに見えてしまい、急にユーザーの意識に留まらなくなって素通りされてしまいますので、これは避けるべきでしょう。

パーフェクト株式会社 代表取締役社長 磯崎順信(いそざき・よりのぶ)さん


OMOやオムニチャネル化におけるトラフィックの一つになる

——スマートミラーからのユーザーデータの取得やレコメンド等の機能も増えているようですが、リアルとデジタルとの連携については、どのようにお考えでしょうか。

ご存じの通り、YouCamでは、店頭のスマートミラーだけではなく、ブランドサイト上などでバーチャルメイクが可能なWebコンサルテーションモードを展開しています。これらとリアル店舗、またその他EC、SNS等との連携はもちろん、オムニチャネルでの一貫したサービス提供は、今後のリテールを語る上で重要な文脈だと思います。

国内でのユーザーのコスメの買い方ですが、実は化粧品・医薬品のECでの購買率を見ると、2018年で5.8%しかないそうです(※)。中国、米国、インド等、どこと比べても非常に低い数字です。
(※)参考/平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)報告書 経済産業省調べ 平成31年5月

——日本のECは遅れているのでしょうか。

実は、そうではありません。スマホやWEBでのYouCamのセッション(ユーザーの顔がYouCamで認証された回数)の総数を見ると、上位5位中、3つが日本国内からのセッションです。しかも、比較的認知度の低いブランドでも上位にランクインしています。「バーチャルメイクが試された数」で言えば、日本は抜群に多いのです。

しかし、結果的に95%程度が店舗で購入しているということは、日本のコスメは「リアルリテールが強く、デジタルのエンゲージメントが高い」という、他の国にはない特徴を持っていることがわかります。言い換えれば、O2OやOMOの結果が出しやすい状況にあると考えられるでしょう。

ECの購買率を上昇させる施策等も大切ですが、9割以上が店舗で購入してくれるのなら、リアルとデジタルをうまく連携させたほうが、結果的に楽しく買い物をしてもらえるのではないでしょうか。その際、購入商品の候補を増やしたり、データの取得が可能なスマートミラーは、店舗とECを繋ぐきっかけやトラフィックの一つになり得ます。

試したアイテムの情報をQRコードで持ち帰ったり、SNSに投稿したりする機能もプラスできる。取得したユーザーデータを一元化し、オムニチャネル化によるサービスを実現

——OMOとしてうまく連携・循環させるコツ等があるでしょうか。

例えば、2019年に私たちがローンチした、肌のトーンを検出する「AIスマート シェードファインダー」というサービスがあります。コスメブランド「コフレドール」がECでこのサービスを活用した事例では、2週間で約12万回のトライが得られました。
ここで検出された肌のトーンの結果をもとにAIによってレコメンドされたアイテムの情報を保存してもらう。そして、そのアイテムを再び店頭で見てもらう――といった流れなどが考えられます。
もちろん、百貨店のカウンター等でのカウンセリングの際にも、診断やアンケートやアプリと連動させて、告知や来店を促すといった力も発揮できるでしょう。

あべのハルカス近鉄本店の店頭の様子。2019年9月からスマートミラーがカウンセリングツールとして導入されている

——店頭でのスマートミラーの活用と、SNS等との連携も重要ですね。

はい。例えば「ソフィーナ ip」は店頭のPOP、もしくは公式LINEからECに誘導して、写真を撮影して肌の状態をチェックするYouCamのサービスをユーザーに薦めています。チェック後に表示される結果に基づくアイテムのレコメンドはもちろん、過去データの保管や閲覧ができ、肌の状態を比べることも可能になりました。この施策によってLINEでは約48万件の「お友達」を獲得しており、クレバーな成功例の一つと言えそうです。

スマートミラーの活用をはじめとするバーチャルトライやデータ取得の有効性は、リテール、EC、モバイルと全てのセグメントで重要視されるようになりました。ユーザーとのどのタッチポイントにおいても、パーソナライズされたサービスや、オムニチャネル内での一貫したサービスを提供できる環境づくりが、ビューティーはもちろん、さまざまなジャンルの企業に対して求められていくでしょう。

——店舗内でのスマートミラーの利活用の将来性や展望についてお聞かせください。

AIやARを活用したスマートミラーの普及は、ビューティーやアパレル、ヘルスケアなどを中心に、世界中で進んでいます。今後は店頭のスマートミラーからでも、スマホやPCからでも、一元化されたデータにアクセスでき、パーソナライズされたサービスが提供できる未来が当たり前になるでしょう。
私たちも、どのデバイスからも変わらず高品質なバーチャルでのトライやレコメンドができるようテクノロジーを研鑽し、よりよい顧客体験を実現していきたいと考えています。

テクノロジーの進化により、コスメやアパレルの店頭でのスマートミラーの活用は、もはや当たり前のものとなりました。将来的に、スマートミラー、スマホ、カウンターのどこからアクセスしても、一元化されたデータに基づくパーソナルなサービスが提供できるようになれば、ユーザーの買い物体験はもっと魅力的になるはずです。
スマートミラーをはじめとするインストアテクノロジーと、ECやSNS等とのデジタルの連携によるオムニチャネル化は今後ますます進みそうです。

Written by: BAE編集部

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