2018-04-03

鏡×インターネットによって生まれる体験価値とは?

最新のインストアテクノロジー「スマートミラー」
世界最大級の先進技術の見本市「CES」などで、近年注目を集めているのが鏡とIoTを組み合わせた『スマートミラー』です。

一見、普通の鏡に見えますが、実は鏡面仕上げが施された巨大なタブレット。その利用法はさまざまで、各社がその可能性を模索している段階にあります。そのなかで、株式会社ジーエルシーはスマートミラーと画像認識技術を組み合わせた「来店者のデータ解析サービス」を提供しています。同社の取締役副社長・金子裕輔さんに「スマートミラーの特徴、今後の可能性」について聞きました。


消費者の体験価値を高める「スマートミラー」

株式会社ジーエルシー 取締役副社長 金子裕輔さん

鏡をインターネットに接続するというシンプルな構造の「スマートミラー」。鏡は、私たちの生活に欠かせないアイテムであり、毎日触れるプロダクトでもあります。その距離感の近さが、IoT製品として利用したときに、さまざまな可能性を生むと金子さんは言います。

「まず朝起きて、顔を洗うとき、そこには鏡があります。また、自宅だけでなく、外出先でも鏡を見る機会は多くあります。たとえばコンビニ、百貨店、お手洗いなど、少し考えるだけでも、さまざまな場所に鏡が置かれていることに気付くと思います。しかも鏡は、意識的に見てしまう、という特徴を有しています。その鏡をスマートミラーに変えると、シーンに合わせ、いくつものメリットが生まれます」

すでにスマートミラーは、消費者の買い物体験を高める「インストアテクノロジー」としての活用が広がり始めています。たとえば、ニューヨークのアパレルショップでは、スマートミラーをバーチャルフィッティング(仮想試着)に利用。試着イメージを確認できるだけでなく、同時にサイズや在庫の有無も確認できるようになっています。

鏡の前に立つだけで、仮想試着体験ができる「バーチャルフィッティング」


もしも美容室の鏡が「スマートミラー」になったら?

鏡があるといえば、美容室を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。では、もし店内の鏡がスマートミラーに切り替わると、どんな変化が起きるのでしょう?

「美容室では鏡の前に座り、まずは雑誌を見ながらスタイリングを決めたりしますよね。もしその鏡がスマートミラーになれば、雑誌ではなく、画面上でヘアカタログを見ながら、スタイリングの相談ができるようになります。また、美容室では待ち時間も多くあるので、スマートミラーは巨大なタブレットでもありますから、動画を見たりすることも可能です。これまで退屈だった待ち時間を、“顧客にとって楽しい時間”に変えるアイデアもいずれ登場するのではないでしょうか」

スマートミラーを導入した美容室での接客イメージ

同社はそこに「画像認識(顔認識)技術」を組み合わせることで、さらにユーザビリティは向上すると考えています。

「美容室は顧客ごとにメンバーズカードを作り、過去の来店日やサービス内容を管理するケースがほとんどです。初めての来店の際に、スマートミラーによる顔認識を実施すれば、2回目以降は座るだけで顧客データが表示され、前回の髪型や来店日時が瞬時でわかるようになるでしょう」

これは消費者だけでなく、店舗にとってもメリットがあります。美容室では通常、顧客ごとにカルテを作成しています。最近では電子化も進んでいますが、スマートミラーを導入することで、店舗運営を効率化し、その分、サービスを拡充することができます。

たとえば、店頭にスマートミラーを設置すると、来店者の顔を即座に認識。該当顧客のデータを呼び出し、来店と同時に受付を済ますことが可能になります。もしこれが実現すれば、受付時間は短縮し、よりスピーディーな店舗運営が可能になるでしょう。

次世代型のデジタル広告としての活用も


同社はスマートミラーと画像認識技術を組み合わせた「来店者のデータ解析サービス」を提供しています。その背景について、次のように語ります。

「現在のAIは、音声認識の精度はまだまだですが、画像認識は得意としています。弊社が画像認識(顔認識)に着目したのは、その精度の高さです。最近では、性別と年齢層であれば、およそ9割の正答率があります」

同社のサービスを利用すれば、店内にスマートミラーを置いておくだけで、来店者の性別、年齢層、来店数などのデータを自動で計測することが可能です。

「たとえば、アパレルショップでは鏡も多く配置されているので、スマートミラーを複数組み合わせて設置すれば、店舗を訪れた消費者の“カスタマージャーニー”を知ることもできます。消費者の滞在時間、どの棚に興味を示し、最終的に何を買ったのか。そうした消費者の動線は、これまで把握しづらいものでしたが、スマートミラーを活用すればデータを取れるようになります。それによって、消費者の動線を意識し、どの棚にどんな商品を置くかなど、より精細かつ正確な店舗レイアウトを実現できるようになります」

さらに、パーソナライズした広告を表示するデジタルサイネージとしても、スマートミラーを使うことができます。

「顔認識によって、性別と年齢を判別し、ユーザーに適した広告を表示することも可能です。現在のデジタルサイネージは、ユーザーに合わせて表示が変わることはありませんから、活用が広がれば、次世代型のデジタル広告として注目を集めるかもしれません」

顔認識により、性別と年齢を判別し、最適な広告の表示が可能


アイデア次第で、無限の可能性を秘めている

なお、ジーエルシー社が提供するスマートミラーによって解析できるのは、「性別、年齢、表情、着用している衣服の色、顔の向き、通行人数」の6種類の情報です。

「現状では特に、小売店との相性がいいテクノロジーだと捉えています。同じものを扱っていても地域や環境によって訪れる消費者は異なりますから、来店者のユーザー層、動線をデータとして蓄積できることは、店舗を最適化する上で非常に役立つと考えています。これから利用が広がる可能性は、十分にあるのではないでしょうか。また、その情報をどう使うかは、用途によって変化します。スマートミラーはOSが搭載されているため、専用アプリの開発が進めば、今後さらに利用シーンは広がると考えられます。医療分野においては、すでに映像(お手本映像)を組み合わせたリハビリ専用装置としての活用事例もあるほどです」

また、スマートミラーにはカメラが付いているため、防犯装置として利用することも可能です。

「鏡×インターネットによって生まれるメリットを考えれば、アイデア次第で無限の活用法がありますし、そのポテンシャルこそがスマートミラーの最大の魅力とも言えます。たとえば、IoTを活用した『スマートホーム』においては、ヘルスケア機器として活躍し、鏡の前に立つだけで、体重やその日の健康状態がわかるようになるといわれています。現状は、私たち自身もその可能性を模索しているところですが、まずは多くの方に、一度スマートミラーに触れてもらい、その便利さを体感してほしいですね」

インストアテクノロジーとして、今後さらに注目を集めそうな「スマートミラー」。普及が進めば、これまで勘に頼っていた店舗レイアウトも、データを基に日々改善していくことが可能になります。また、ニーズに応じ、姿を変えられるのが「スマートミラー」の特徴です。どんな分野で活用が広がるのか、これからも目が離せません。
Written by: BAE編集部

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