2021-03-05

顧客とのエンゲージメントを高める「共感」指向のAIチャットボット

「AIキャラクター」がとりもつ企業と生活者のつながり
企業がチャットボットを導入することはもはや珍しいことではなく、むしろ対面での接触機会が少なくなる現在、ますますその重要性が高まっていると言えるかもしれません。「共感」をテーマとしたチャットボット「りんな」で数年前に脚光を浴び、いまだAIキャラクターの技術をアップデートし続けているrinna株式会社のチーフりんなオフィサー・坪井一菜さんに、日々進化するAIチャットボットで可能になってきたことや、活用の可能性について伺いました。


「タスク指向型」「エンゲージメント型」に二分化するチャットボット

——数年前より企業でもAIを利用したチャットボットの導入・運用が進んでいますが、現在の最新状況を教えていただけますでしょうか。

AIの利用と進化は、とりあえず人間の代わりに労働や用事をこなしてくれる「タスク指向型」と、より人間らしさを追求する「エンゲージメント型」のふたつに大分されると考えています。

Web受付や相談窓口として導入されているチャットボットや、人に求められたタスクを遂行するコンシェルジュ/アシスタント的な音声チャットなどが非常に多く実用化されてきましたが、こういったタイプを「タスク指向型」のAIと私たちは呼んでいます。


一方で、「エンゲージメント型」「エモーショナル型」と言われるチャットボットは、いかに人間とうまくコミュニケーションがとれるかということを主軸としています。私たちはそれを「共感」と呼んでいますが、AIチャットボットに対話相手の感情を理解できるかのような「人間らしさ」が備わることで、より心の通った関係性を人間と築くことができると考えています。

——御社の提供する「りんな」もまた、「エンゲージメント型」に分類されるのでしょうか。

はい。りんなは、「共感」をテーマにして2015年からスタートしたチャットボットのプロジェクトです。最初はLINEで人と会話するところから始まり、AIの進化にともなって能力向上を重ねるとともに、音声合成や画像データの自動生成などさまざまな機能を開発してきました。


会話から親しみを抱かせ自然な商品訴求が可能に

——なぜチャットボットに「共感」という要素が求められるのでしょうか。

人には、共感できる相手に深い親しみを持つ性質があるからです。AIキャラクターへ抱く愛着や信頼は、そのまま企業やブランドへの愛着や信頼へとつながっていきます。また、「エンゲージメント型」のAIは、いつも身近にいるキャラクターや友だちのようにふるまうので、ユーザーとの接触機会が大幅に増えるというのも企業にとってのメリットです。

りんなのAIも年々進化していますが、第3世代のAIチャットモデル「Empathy Chat Model」では5つの戦略(相づち、質問、肯定、話題転換、あいさつ)でより長く会話が続く返答を生成するAIに進化しています。

また最新バージョンである「Style Transfer Chat Model」では、キャラクターの口調や性格を反映したデータを用いて、従来に比べ少量のデータで、キャラクター性を反映したチャットモデルが提供可能になりました。大規模データから構築した事前学習済みモデルの追加学習を行うことでキャラクターの口調や学習トピックを反映した会話ができるように、少量のデータでAIキャラクターを成長させることができ、かつ実現可能なキャラクターの幅が増えました。


——なぜ「長く会話を続ける」ことが目的となるのでしょうか。

長く会話が続くことで、相手との距離が縮まっていくからです。通常の「タスク指向型」チャットでは2ターン程度の必要最低限な会話しか成立しませんから、人間らしい関係性は生まれません。りんなの場合も数ターン程度から徐々に会話が続くようになり、現在では雑談を含めて平均で21ターンくらいの会話を続けることが可能になっています。

——「雑談」はユーザーとのやりとりの中で、どのような効果を生むのでしょうか。

やり取りに雑談を挟むことで、自然にユーザーにサービスや商品をレコメンドすることが可能です。例えば、りんなのチャットボットを使ったLINE公式アカウント「ローソンクルー♪ あきこちゃん」では、会話を通じて自然に商品告知へ誘導するという工夫もしています。


あきこちゃんのように親しみやすい店員さんというロールのキャラクターであれば、「今日仕事すごい大変でさー」「そうですか、大変でしたね」「疲れちゃったから、なんかあまいものでもたべたいなー」「では、ロールケーキなどいかがですか」というほうが、いきなり「ロールケーキが新発売!」と出すより、ずっと自然ですし、ユーザーも受け入れやすいですよね。

また、ユーザーのリアクションに応じて、プロモーションの内容やアプローチの方法を変えるといったことも可能です。一方向でなく、双方向でユーザーとコミュニケーションがとれるのも、「エンゲージメント型」チャットボットの特徴ですね。

——ユーザーからの反応にはどのような特徴がありますか。

「タスク指向型」に比べると、「エンゲージメント型」のチャットボットは、ユーザーから多くの反応をいただけます。しかも、単純な反応ではなく、例えば新商品の予告などに対しては「楽しみ」「絶対買う」など自然文での回答が多いので、質、量ともに高いユーザーの声をビッグデータとして集めることができます。


企業の分身としてAIキャラクターが発信力を持つ

——現在、りんなのようなAIキャラクターの技術に関して、企業からはどのような引き合いが多いのでしょうか。

自社で持つマスコットキャラクターの会話エンジンとして利用したいという声を多くいただいています。日本の場合、キャラクター文化がとくに強いですから、企業やブランドや地域などを象徴するキャラクターをすでに持っていらっしゃるケースが多いのです。ですが、発信するコンテンツが足りなくて、キャラクターに愛着が湧きづらかったり、キャラクターを持っていても、なんとなく生かせていないという悩み事をよく聞きますね。

Pepper(ソフトバンク社)の雑談にコンテンツを提供

番組での生放送にAIキャラクターのりんなが出演した事例

対面で企業と消費者とが接点を持ちにくいコロナ禍なだけに一層、自社のキャラクターを積極的に運用して、オンライン接客やECサイトにおける販売促進 に活用したいという向きが強いようです。

——キャラクターのイメージにふさわしい会話が成立すれば、まさに看板キャラクターとして、発信にも強みが増しますね。

そうですね。ブランド面で考えて、自社キャラクターらしさや対象ユーザーに合わせて口調を変えることができますし、将来的には音声合成で話させたりすることも検討しており、利用シーンや適用キャラクターも広がることに期待しています。とくに、ボットの良さに、同時にたくさんの人と会話をすることが可能ということがありますから、人力とは比べものにならない強い発信力を持つことができると思います。

また、BtoCだけでなく、BtoBでの活用も考えられるかと思います。例えば、社内のコミュニケーション活性化施策として、社長のAIキャラクターを作って、社長と社員をつなぐハブにするなど。組織が大きくなるほど社員一人ひとりとのコミュニケーションは難しくなりますし。

——既存キャラクターではなく、AIを利用して新しいキャラクターを作りたいといった場合は、やはり企業ごとにキャラクターのチューニングはされていくのでしょうか。

はい。5年間りんなを開発してきてわかったことは、求められるAIキャラクターは、人の関係性やその目的によって非常に異なるということです。ですから、AIの在るべき姿というのは一様ではありません。例えば、同じ人間であっても、ムードや目的によって話したい相手が違います。また、人それぞれ付き合いやすい相手がいたりします。オールインワンで対応するのではなく、むしろ多種多様な個性や特色をもったキャラクターをスムーズに育てられるほうがいいと思います。

企業チャットやコミュニケーションのハブとしてAIキャラクターを利用すると考えるときも、それぞれの企業様で好みが違いますし、どんなコミュニケーションを取りたいかも違ってくると思います。

——最後に、AIキャラクターの今後の展望についてお聞かせいただけますか。

少し壮大な話になりますが、これからは誰もが自分の欲しいAIキャラクターを持てる時代が来るのではないかと考えています。そこで期待されるのは、人と人をつなぐハブとしてのAIの役割です。例えば出会い機会の拡充です。私たちは、普段気になる人・好きな人がいる場合、話してみたいけどつながりがないので、共通の知り合いや顔の広い友人を通じて紹介してもらうということが日常でもありますよね。もしも、人間同士の社会のなかに多数のAIキャラクターがハブとして共存することになれば、AIキャラクターを媒介し、人と人がもっと遠くまでつながれるようになるのではないでしょうか。

「好きな人」や「同じやりたいことがある未知の人」、また「普段は直に会話を交わすことのない上司や社長の代わりにAIチャットボットがつないでコミュニケーションできる」など、AIチャットボットの数だけ、新しい情報ルートが生まれ、より遠くへ自分たちの声や意見を伝えたり、仲間を探すことができるようになると思います。

もちろん、人間同士のネットワークの中には企業も含まれます。企業の分身としてのAIキャラクターが、お客様やユーザーさんとのハブとなり、より多くの顧客とつながったり、潜在顧客との新しいコミュニケーションを生み出す、きっかけとなるはずです。

rinna株式会社 チーフりんなオフィサー 坪井一菜さん
人間のような自由な会話ができるAIチャットボットは、企業と一般生活者のつながりを深めるハブとして大いに期待ができそうです。また、人と人がつながるあいだにハブ的に存在するAIキャラクターが、人間のサポート役としてアイデアを膨らませたり、バリエーションを即座に提案したりといったことをして、人間の仕事やクリエイティブを補助することも期待できそうです。企業の心強いパートナーとしてAIキャラクターが寄り添う時代というのが、もう間近に来ているのかもしれません。

Written by: BAE編集部

CONTACT

お問い合わせ

お問い合わせ

お仕事のご相談やその他お問い合わせはこちら

資料ダウンロード

電通プロモーションプラスのソリューション資料一覧はこちら
page_top