2020-04-24

リテールAIカメラが実現する「売れる」棚マネージメント

クロスセルを誘発する小売・実店舗へのAI活用
行動追跡や商品のレコメンドなどECではお馴染みのテクノロジーに対し、リアルの店舗においても行動分析や購買履歴からお客様にあった商品をすすめるなど、AIとビッグデータを活用した取り組みが次々と導入されています。小売の現場で「AI」はどのような役割を果たすのか、Retail AI社 代表取締役、永田洋幸さんにリテールテックが目指すものと、実践から見えてきたリアル店舗でのAI活用の可能性について伺いました。


Amazon Goで再注目されたリアル店舗の可能性

——「リテールテック」が注目されるようになったのはいつのことでしょうか。

ビッグデータで顧客分析や実店舗における購買分析などが可能になってきた7〜8年前が1つの起点となりますが、ここ数年リテールテックが注目されるきっかけになったのは、やはりAmazon Goの登場(2018年)によるところが大きいでしょう。完全に無人で買い物ができる小売店、というインパクトだけでなく、オンラインショッピングの巨人であるAmazonが、クラウドサーバーと直結したIoTカメラやセンサーなどを全力投入し、リアル店舗を再発明したという事実に、多くの小売関係者・流通関係者が刺激されたわけです。「やはり店舗は必要だ」と。


——具体的にRetail AI社では、どのような「リテールテック」に取り組まれていますか。

弊社では、小売業務のスマート化を推進するスーパーマーケット/ディスカントストア「トライアル」(Retail AI社の兄弟会社にあたる)におけるハードウエア、ソフトウエアの開発・店舗への導入までを、一気通貫しています。

代表的な取り組みに、直営店におけるタブレットデバイスを設置したスマートショッピングカートによるレジ会計待ちのないゴースルーレジの実現や、店内のデジタルサイネージによるデジタルマーケティング施策があります。実店舗の責任者は、日々の売上やお客様の反応に敏感ですから、前例のない大型IT設備の導入には消極的になりがちです。日本のスーパーは「無人レジ」を10年ほど前より取り入れ地道に導入を進めていますが、「ゴースルーレジ」となると未開拓の世界です。ですから、我々の店舗が実証実験の場となることで、成果を実証する必要がありました。

まず配慮したのがスマートショッピングカートの仕組みです。ひとつはAmazon Goのような見えないセンサーは使わず、顧客自身が商品のバーコードのスキャンを行うこと。この「ピッ」という馴染みのある仕組みにお年寄りも安心して使っていただけたたようで、スマートショッピングカート利用者の1/2以上が50歳以上、80代利用者も多いという非常に好意的な結果となりました。また、タブレットでは支払いボタンを押し、プリペイドカードの残金から決済をします。オンラインでの事前登録やスマホアプリ登録が不要なことも、顧客にとっての利用のハードルが下がり導入しやすいシステムとなり、結果、リテールの現場責任者も安心して導入できるサービス形態となっていることがわかりました。

また、Retail AI社では、小売店におけるビッグデータやAI活用によって業務の自動化や顧客体験の向上を可能にします。弊社の開発する「リテールAIカメラ」はトライアル各店舗に連結2250台が導入され、商品棚の変化を画像キャプチャで定点記録したものをAI学習させ、売上改善施策に役立てています。リテールAIカメラは、さまざまな可能性を秘めたIoTデバイスの「目」と考えています。IoTセンサーには重さや音、傾きなどさまざまな種類があり、リテールAIカメラにもほかのセンサーを導入していく可能性があります。Amazon Goではもうカメラは多数のセンサーや機能の一部になっていますし、カメラも動画分析を行っているようです。弊社ではカメラによってできることはたくさんあると考えています。また開発・生産を内製化しており、安価に製造できます。これに加えて動画のエッジ処理をAIカメラ内で行っており、オペレーションコストも安価になります。これらが私たちの強みでして、スマートショッピングカートに加えて、AIカメラにも重点を置いています。

Retail AI社 代表取締役 永田洋幸さん

トライアル店舗で実証された技術やデバイスは他社へ技術提供したり、販売するといったことも始めています。


流通・発注まで無人を目指すリテールテックの現在

——小売店舗用リテールAIカメラでは、どんなことができますか?

現在の使い方としては、商品棚に向けて店中に設置し、棚変化をエッジ処理でAI学習します。これにより、商品の売れ行き状況をはじめ、どんな商品が選ばれ、あるいは購入が悩まれているかなどがわかってきました。カメラでは人間を撮影することもできますが、プライバシーに関わる法律などを踏まえるとそういった使い方を一般店舗で導入するのはまだ先のことです。まずはAIカメラを棚の管理をするスタッフの代わりに使うというやり方を成功させてきました。


AIカメラの第一の効用は、商品棚管理の自動化です。一般の小売では、いまでも棚の欠品は担当者が目視で定期的にチェックし、倉庫から商品を運び陳列しなければなりません。欠品補充が遅れれば、購買チャンスを逃してしまいます。リテールAIカメラでは補充タイミングを担当者にアラートすることが可能で、チェックの手間がなくなります。今後、バックエンドシステムが接続されれば、AIカメラが自動で在庫発注をかけることも可能になります。

——AIカメラでは、ほかにどのようなことが可能ですか。

例えば、類似製品群からなぜその銘柄を選んだのか、または選ぶまでの時間はどうだったかといった情報から、購買の押しを仮説分析することはもちろん可能です。スマートショッピングカートと連動されることによって悩んでいるときにどのクーポンを投げたら購買につながったのかといったように、購買を上げていくことができるかと思います。ほかにも、顧客の導線をカメラで分析し、店内の回遊に合わせて商品を配置するといったことも考えられます。

——「メガセンタートライアル新宮店」へのAIカメラの導入から1年が経ちました。購買アップの成果は出ているでしょうか。

はい。非常に期待できるのは棚配置の自動改善です。AIカメラでは、売れた商品の配架位置も記録しますから、商品が手に取られる場所を見て配架を変更し、銘柄の売上が5%ほど伸びたという実績があります。

——面白いですね。AIによる最適な陳列方法に、人間はなぜ気づかなかったんでしょう。

人間が配架すると、商品を直線上にきれいに並べますよね。でもAIカメラの分析によると、購買者は棚の中央段あたりを見ていて、均等に目を配ったり、商品を手に取るわけではないんですね。そこで商品の陳列幅を縦ではなく横中央だけ広げると、さらに売れました。

こういった知見がAIに溜まれば棚マネージメントをAIに任せることも可能になるでしょう。また、状況、時間帯などの条件によって、配架をリアルタイムに変更し、売り場を最適化させてくことも目標にしています。

リテールAIカメラによる棚画像分析のイメージ

——AIカメラから見えた購買パターンや法則はありますか?

新しい法則ではないですが、商品の並びによって「あわせ買い」や「もう1品」を誘発できることがわかりました。バスケット解析で紙おむつとビールを並べて陳列したら売上が上昇した、という話は有名ですが、トライアルでは、紙おむつとビールを買った人に、さらに「2杯目はこちらのレモンサワーはどうですか?」といった提案は有効となっています。

——レコメンドする商品も、ビッグデータとAIを活用して導き出されているのでしょうか。

AIカメラとお客様のカート内の商品情報を連動させ「おすすめ」をスマートショッピングカートのディスプレイに提示させるなどして、新しい購買体験を提案するということをやっています。レタスを買ったお客様にドレッシングのクーポンを表示するといったことですね。先ほどの棚の配置+ディスプレイでの提案で、さらなる「あわせ買い」を提案することが可能です。

——リアル店舗でもワントゥーワンの提案が実現可能になるということですね。

お酒を買わない人にお酒をすすめることはありませんし、一方、レモンサワーの購入履歴がある人には、提示できるクーポンで新しいブランドのレモンサワーをすすめてみることもあります。

ショッピングでは、自分が欲しいものが見つからないこと、欲しくないものをすすめられることは、もっともストレスですよね。リテールAIマーケティングでは、自分のことをよくわかったコンシェルジュがおすすめしてくれるような状態になるのが理想です。


リテールテックでリアル店舗はどう進化するのか

——リテールAIは、日本ではどのような段階にありますか?

一般社団法人リテールAI研究会では、AIの導入レベルの定義として「リテールAIレベル5」というものを提案しています。完全に無人での店舗販売を可能にする上では、流通においても人対人の商談が不要になる完全な自動化をレベル5に設定した場合に、日本の小売はレベル1〜2の段階です。まだまだ進化するのはこれから、という状態です。

——将来的に“未来のリテール”はどのようなものになっていくのでしょうか?

アニメで見るような「未来のお買い物体験」の実現はまだ先ですが、AIに基づいて商品の売上が改善され、AIで改善すればするほど、より良い棚がリアルタイムに創られていくということは間違いないでしょう。お店にスタッフが居なくても、購買体験が良くなり、ストレスなく快適に欲しいモノが手に入ることが今、求められていると思います。

リテールAIを含む、現在研究が進むリテールテックを完全無人店舗実現の布石として捉えた場合、永田さんは先端技術の投入そのものが目的化してしまう「テクノロジードリブン」は避けるべきだと仰います。
利益が確保でき、お客様が使って喜んでくれる「オペレーションドリブン」の視点が、今後のリテールテック発展のためのヒントとなりそうです。

Written by: BAE編集部

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