2020-04-09

女性視点で紐解く! 新しい消費行動「パルス型消費」

「パルス型消費」時代の新常識“コスメはTwitterで売れ”
購買に繋がる導線が多様化してきたことで、ユーザーは「欲しい」と思った瞬間に、「いつでも」「どこでも」商品を購入できるようになり、消費行動は大きく変化しました。その消費行動を、Googleは「パルス型消費行動」と名付けました。

では、「パルス型消費行動」はこれまでの消費行動と何が違い、どのようにマーケティングに活用することができるのでしょうか。女性のインサイト分析・トレンド分析のスペシャリスト、トレンダーズ株式会社 代表取締役社長 黒川涼子さんにお話を聞きました。


認知から購入までの動線が垂直に近い「パルス型消費」

——Googleが提唱する「パルス型消費行動」は、これまでの衝動買いやジャーニー型消費行動とは異なるといわれます。具体的に何が違うのでしょうか?

衝動買いは一般的に「高価なものを衝動的に購入する」ものですが、Googleの提唱するパルス型消費行動の対象は“日用品”です。つまり、日常生活で必要なものは、スマホの普及によって、「欲しいときにその場で買う時代が到来した」ということを言語化したわけです。

一方で、ジャーニー型消費行動は、認知をして、興味・関心を持ち、比較・検討し、購買につなげるものですが、パルス型消費の場合には「認知・興味・関心→購入」とそのステップが短縮されていることが大きな特徴です。

当社でもそうした事象を「バーティカルファネル」と名付け、認知から購入までの流れをシームレスに展開することで、その転換率を向上できるというマーケティング理論を提唱しています。


従来型の購買ファネルよりも、バーティカルファネルやパルス型消費は、認知から購入までの動線が垂直に近くなっています。そのため「認知し、興味を持ち、その場で買う」ユーザーに対して、どうアプローチするかが重要となります。

——「パルス型消費」(およびバーティカルファネル)が広がった背景については、どのようにお考えでしょうか?

以前よりも購入までのステップが短縮された背景には、現代社会の情報量の多さがあると考えています。それはつまり、「選択肢が多すぎて、選べない」状態にユーザーは常に置かれているともいえます。

同時に、デジタル上では、自分が興味のある情報が優先的に入ってきますから、自分にとって関心の薄い事柄に対しては、なかなか目に入らない。そのなかで、パルス型消費が起きている前提には、「好感認知」があると考えられます。

たとえば、コスメに興味のあるユーザーだから、コスメの情報に興味を惹かれるわけですよね。一例を挙げるならば、興味のあるジャンルの商品を、自分の好きなインフルエンサーがおすすめしているのを“偶然”SNS上で見て、その場で商品を購入する、といったものです。また、メルカリなどのフリマアプリの登場によって、「失敗したら売ればいい」という選択肢が生まれたことも、パルス型消費を後押しする要因のひとつになっているのではないでしょうか。

ここで重要になるのが「偶然」という「運命」です。総じて女性は「運命」という言葉に弱い傾向にありますから、何か商品を買う際にも運命的な要素があると、それが言い訳となって、背中を押してくれます。女性なら、この心理はきっと共感してもらえると思います。

トレンダーズ株式会社 代表取締役社長 黒川涼子さん

——ふらっと入ったお店で、偶然、自分に合ったサイズの服が1着だけ残っていた。たとえば、そんなことですよね。

まさにその通りです。使えるお金には限りがありますから、そのなかで何を買うか、そうなったときに、やっぱり「運命」は強い。ですから女性の消費とパルス型消費というのは、非常に親和性が高いと個人的には感じています。



Twitterは情報収集ツールから販売促進ツールへ

——女性の日用品となると、コスメとパルス型消費は親和性が高そうですね。

はい。最近だと、女性のパルス型消費を起こしやすいプラットフォームとして、Twitterが挙げられます。これは日本だけの傾向で、海外の方は非常に驚くのですが、「日本ではTwitterでコスメが売れる」のです。


なぜTwitterなの? と思うかもしれませんが、Facebookは年齢層が高く、Instagramは拡散というよりも、フォロワーへの発信がメインです。そのなかでTwitterは、不特定多数のユーザーが情報をシェアし合うプラットフォームであり、若年層にとって「定番SNSのひとつ」として定着していることが大きな要因になっていると考えられます。

また140字という文字数制限があることで、「ヤバい!」「神!」などのTwitterならではの口語に近い表現が使われることで、訴求力の高い投稿が増えていることも要因のひとつです。

たとえば、「これ、神コスメ! 今すぐ使ってみて!」という投稿を見たユーザーがいたとしましょう。それを見た別のユーザーが、同じように感じていれば、リツイートする形で賛同します。その輪が広がって、一気に拡散していきます。ECやドラッグストアで、Twitterで話題になったコスメが売り切れる、という現象は2年ほど前から始まり、今では当たり前のことになっています。なのでコスメ業界ではすでに、Twitterは無視できない存在であり、ユーザーとの重要なタッチポイントという思考が強くなっています。

つまりいま、Twitterは今や情報収集のツールから、購入までをつなぐツールへと進化しているのです。

Twitterでバズったコスメに関する投稿のイメージ(出典:https://twitter.com/ykss_2141
 


——Instagramでは、自分の好きなインフルエンサーの紹介ですから、信頼性は高いと感じます。しかしTwitterで見かけるのは、見ず知らずの他人の投稿です。ユーザーは、その投稿の信憑性をどうやって測っているのでしょうか?

そもそもInstagramがどちらかといえば“建前”の世界だとすると、Twitterは“本音”の世界という風に捉えているユーザーは多いです。また投稿のリツイート数=賛同者の数だと考え、「こんなに多くの人がいいというなら、試してみよう」という風に情報の信憑性につながっているように感じます。

Twitterは若年層に強いSNSですから、「Twitterでコスメを買う」消費行動は10代〜20代の女性ユーザーが中心となっていますが、最近は30代の女性にまで波及し始めています。

では、なぜTwitterの情報に頼るのかといえば、やはり情報量が多すぎて、「選べずに困っているユーザーが多いから」です。つまりある意味においては、選択肢は少ない方が購買につながりやすいのです。


今後は、感性に訴えかけるクリエイティブが求められる

――リテールメディアの国内・海外動向についてお聞きできますか。

——パルス型消費を意識し、商品開発の時点から、SNSに投稿されることを見越したパッケージデザインなども重要になってきていますよね。

はい。認知から購入までの決断が非常に短時間で行われていますから、投稿されるであろう商品画像を通じて、「魅力を訴求できる」ことも重要ですね。

今後は「画像やバナーを見て、そのまま購入につなげられる」ような、感性にダイレクトに訴えかけるクリエイティブが求められる時代になるのではないでしょうか。

——具体的に、感性に訴えかけるようなクリエイティブに必要な要素はありますか?

ひとつは“手触り感”。ハンドメイド風デザインは、ここ数年のクリエイティブトレンドです。デジタル全盛のいまだからこそ、作り手の思いが伝わる“手触り感”が人の心を動かす傾向にあります。同様に商品コピーや広告メッセージにおいても手触り感は重要で、丁寧でキレイな言葉ではなく、ときにはユーザー目線のダイレクトな表現の方が伝わりやすいケースも多いです。

当然、商品ごとに特性があり、すべてに当てはまるわけではありませんが、Twitter経由での情報拡散を狙うのであれば、特に意識すべきだと思います。

——女性ユーザーとパルス型消費の相関関係を知ることは、今後さらに重要になりそうです。ちなみに、コスメ以外でも、Twitterでバズりやすいジャンルはありますか?

Twitterでバズったコスメを「バズコスメ」といいますが、同様に「バズレシピ」なるものもTwitter上には存在しています。それがコンビニの食材を使った料理だったりすると、店頭から商品がなくなるという現象も頻発しています。

Twitterでバズったレシピ投稿の一例(出典:
https://twitter.com/ore825


今後Twitter起点でモノが売れるジャンルが、さらに広がる可能性も十分にあると思います。また、時代はいま、「ジェンダーレス」な方向に向かっていますから、女性のおすすめを男性が参考にして、相互で情報交換が進むことでトレンドが生まれるなど、時代性を象徴するような形で新たなヒット商品のスタイルが誕生する可能性もあると考えています。

次、何が起きるのか。私もみなさんと一緒にその変遷を見守りながら、これからもトレンドと女性のインサイトを追いかけ続けていきたいと思っています。

「欲しい」と思った瞬間に、商品を購入する新しい消費行動「パルス型消費」。
購買のチャネルが多様化していき「いつでも」「どこからでも」モノが買えるようになったことで、人々の消費価値観は大きく変化しました。その中で、SNSとEコマースを組み合わせ販売促進を行う「ソーシャルコマース」の重要性は高まっており、ユーザーの消費価値観の変化や活用するSNSの特徴を踏まえた施策が必要になってくるでしょう。
Written by: BAE編集部

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