2021-12-02

商品パッケージをAIが生成。実用段階まで来た「AI×クリエーティブ」

AI評価によるパッケージデザイン一新が売り上げ増に貢献
AI活用は「クリエーティブ」の分野にも進出しています。株式会社プラグが提供する「パッケージデザインAI」は、あらゆる商品の「顔」とも言うべきパッケージをAIが評価し、さらには生成も行うというもの。AIが人間の「創造的行為」をどのようにエンパワメントするのか、それによってこれからのクリエーティブはどのように変わっていくのか。株式会社プラグ 経営企画室の根岸由紀さんにお話を聞きました。


商品開発の「時間短縮」と「コストダウン」につながる

——はじめに「パッケージデザインAI」の概要についてご説明いただけますか。

920万人分の調査データにもとづき、AIが画像をアップして10秒でパッケージデザインの評価結果を算出するサービスです。
2021年9月からはAIによる画像生成サービスも始めました。私たちの調べでは、AIが評価と生成を繰り返してパッケージデザインを生成していくというサービスは日本初と認識しています。もっと言えば、海外においてもこのようなニッチな取り組みを行っている企業を私たちは把握していないので、世界初と言ってもいいかもしれません。

——パッケージデザインにAIを活用するメリットはなんでしょうか。

「時間短縮」と「コストダウン」がメリットとして大きいかと思います。従来の商品開発における市場調査は「期間」と「予算」の都合で、通常は1〜2回程度しか実施できませんでした。ところが「パッケージデザインAI」では、パッケージデザインの評価と生成がわずか1時間で完了します。商品を市場に出すまでに、何度も検証を繰り返すことができるというのは、お客様にも好評をいただいているポイントの一つです。また、これまで予算の関係で市場調査をすることができず、商品担当者のセンスでクリエーティブを行っていたという中小企業様からも、AIサービスならコストを抑えられるということで、導入いただいています。

最近ではコロナによる需要も高まっています。消費者を一堂に集めて行うグループインタビューなどの会場調査が一切できなくなってしまった。そうはいっても商品開発を止めることはできないので、オンラインで実施できる「パッケージデザインAI」を試されるお客様も多いです。


ブランドイメージを指標とした評価も技術的には可能

——「デザイン評価」の結果はどのようにアウトプットされるのでしょうか。

「デザイン評価」には、4つのメニューがあります。1つ目は「好意度予測スコア」。そのデザインがどれほど好まれるかという好感度を5段階評価で予測します。好意度は性年代別でブレイクダウンすることも可能です。2つ目は、「ヒートマップ」。好意度とデザインのどの部分に相関があるのか、可視化できるようになっています。3つ目が「イメージワード」。かわいい、シンプル、目立つ、おいしそう、効果効能を感じるなど、19種類のイメージワードでスコアが出ます。デザインの好意度を表現するワードとしては、この19個で7〜8割を網羅できると弊社の分析でわかっております。4つ目は、「好意度のばらつき」。全員が好むデザインなのか、それとも好き嫌いがわかれる商品なのかというばらつきを見ることができます。

性年代別に好意度スコアを予測してくれる

感覚的な言葉で評価がアウトプットされるのでわかりやすい

——どのようなタイプの商品でも評価ができるのでしょうか。

現在はビール、日本酒、炭酸飲料、スナック菓子、コーヒー、ヨーグルトなど51カテゴリーで評価が可能になっています。文具やビジネス書籍といった商品のパッケージにも対応しています。

——例えば、そのデザインが企業のブランドイメージにどれだけ合っているか、といった評価をすることも可能でしょうか。


サービスとしては提供していないのですが、ご依頼があったブランドの商品パッケージをAIに機械学習させれば、「ブランドらしさ」といったものを評価することも技術的には可能です。


「デザイン評価」と「画像生成」は表裏一体の技術

——「デザイン評価」に続き、「画像生成」サービスの提供を始めた狙いはなんでしょうか。

実は当初から「画像生成」サービスの開発を目指して研究はしてはいました。しかし、AIによる画像生成の質を高めるには、生成した画像を高い精度で評価できる技術も合わせて必要になることは想定されていました。そこでまずは「評価」の部分から提供を始めたというのが経緯になります。

——AIによる「画像生成」が実現することで、クリエーティブにおけるどのような課題が解決されますか。

メリットとしては、わずかな時間で生成される1000案という膨大なデザイン案の中から、デザインの方向性を検討できることが一つ挙げられます。また、制作におけるコミュニケーションを円滑化させるという効果も期待できます。例えば、デザイナーに修正指示を伝えるときに、うまくデザインイメージを言語化できないという課題がありました。AIに案出ししてもらった1000パターンのデザインを用いることで、よりイメージに近い具体案をもって伝えることができます。何度も修正のやり取りをしたり、提案用に何パターンもデザインを作ったり、ということもなくなり、結果として関係者全員の負担も減るはずです。


——具体的な「画像生成」の仕組みを教えていただけますか。

背景やロゴ、商品名といった人間の手によって作られたいくつかのデザインパーツをAIに入力すると、生物の遺伝的進化を模倣した遺伝的アルゴリズムにもとづいて「評価」と「生成」を繰り返し、約1時間で1000案ものデザインパターンを生成します。

デザインを生成している途中の画面

生成するにあたって、性年代別・商品カテゴリーでターゲットを絞り込むことが可能です。アウトプットされた1000のデザイン案は好意度順にランキングでチェックできるだけでなく、先ほどもご説明した「おいしそう」「かわいい」などのイメージワードで絞り込めます。ここから「おいしいデザインとは何か」「高級なデザインとは何か」といった示唆も得ることが可能です。



——これまでに「パッケージデザインAI」はどのような成果をあげていますか。


「生成」に関してはまだサービス提供がスタートしたばかりなので実績が出るのは2022年以降になりますが、「評価」に関しては導入事例が増えています。例えばカルビー様の『クランチポテト』はパッケージを変えたことで売り上げが1.3倍に、大手食品メーカーの商品もパッケージを刷新することで売り上げが2.3倍となりました。



AIを活用することで、クリエーターはより本来の仕事に注力できる

——今後、私たちはクリエーティブ領域においてAIをどのように活用していくべきでしょうか。

AIが得意なこと、できないことは何なのかを把握しAIを活用することが、今後「AI×クリエーティブ」を推し進める上で重要かと思います。

例えば、私たちがパッケージデザインへのAI導入を推進する狙いとしては、デザイナーやマーケターがより大事な仕事に集中していただけるように、時間を作りだしたいという思いがあります。というのも実際の商品開発の現場でマーケターは調査に数ヶ月かかり、デザイナーはロゴや色味の調整といった作業に数ヶ月の時間がかかっています。本来デザイナーが力を発揮するのは、「本質を見極めて可視化する」という仕事であると思います。このAIは、デザインの評価や微調整をAIに任せることで、より大切な仕事に時間を使っていただけることに価値があるサービスだと考えます。

——最後に、今後の展望についてお聞かせいただけますか。

まずは多くの方にお使いいただき、ご意見やご要望をお聞きすることが重要だと考えています。実際新しいサービスの価値や今後の発展の方向については、お客さまから教えていただくことが多いです。マーケターやデザイナーに役に立つサービスに継続的に進化してけるよう確実に前進していきたいと思います。

株式会社プラグ 経営企画室 根岸由紀さん
パッケージデザインは商品の購買決定を大きく左右する因子でありながら、「デザイン」という感覚的な領域であるがゆえに、人のセンスに頼らざるを得ない検証の難しい部分ではありました。AIは「デザイン」を数値として可視化し、さらには人間のクリエーティブな仕事をサポートする役割を果たしてくれます。Webデザイン、広告など、あらゆる商業デザインでのAI活用が模索されている現在、「パッケージデザインAI」は「AI×クリエーティブ」を推進する上での大きなヒントになりそうです。

Written by: BAE編集部

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