2019-11-20

デジタルの力で無限化する、リアルイベントの体験価値

LINE活用サービス『1/0(ワンゼロ)TYPE EVENT』
グローバルにデジタル化が進み、だれもがスマートフォン片手にネットやSNS、ゲームを楽しむことが日常になっているなか、ライブやイベントといったリアルな体験の場の価値が向上し、企業にとってイベントは顧客と直接出会える魅力的なコミュニケーション機会となっています。
一方で、イベントは費用対効果を測る効果測定に明確な解がないという課題もあります。顧客の「ロイヤルカスタマー化」が求められる現在、イベントというリアルな場と顧客を結びつけ、その効果の可視化を実現するデジタルの力が重要視されています。
イベント体験による感動は一瞬で、経験も一時的なもの。その場にいる人だけが体験できるからこその価値です。
このようなオフライン(イベント)での感動をオンライン(デジタル)の力で無限の価値にできないだろうか。イベントでの効果的なデジタル活用法を、株式会社電通テック OMOプランニングセンターの杉江弘樹と、株式会社電通ライブ第2クリエーティブルーム長の関口真一郎が語りました。

※2022年4月より電通テックから電通プロモーションプラスへ社名変更しました。


イベント来場者の「ロイヤルカスタマー化」ニーズの高まり

——株式会社電通ライブはイベント制作や運営を手がけていますが、昨今の企業ニーズに変化はありますか。

関口——最も大きいのは、イベントの費用対効果を厳しく問う企業が増えたことです。以前から同様の要望はありましたが、最近特に多くなってきました。どんな人が来て、どういうリアクションがあって、本当にこのイベントに来て良かったと思っているのか。あるいは企業のイベント担当者が「ロイヤルカスタマー化せよ、イベントが絶好の機会だ」というミッションを持っているのに、その方法論の確立がし切れていないという課題があります。

来場者の情報は知りたいが、単に紙のアンケートをとるといった常套手段ではやりたがらない来場者も多く、やはり、リアルタイムにさまざまな仕掛けができるデジタルが力になるのではないかと考えました。特にSNSのつながる力と拡散する力は、オフラインの代表格でもあるイベントと親和性が高いだろうと。

左から株式会社電通テック OMOプランニングセンター 杉江弘樹、株式会社電通ライブ 第2クリエーティブルーム長 関口真一郎

——具体的には、イベントの効果を可視化する上で、どのようなデジタル施策が考えられるでしょうか。


関口——例えば、LINEを活用した施策は有効な手立ての1つかと思います。

杉江——電通ライブとのコラボで開発した『1/0(ワンゼロ)TYPE EVENT』は、イベント施策における課題解決に特化したLINEを活用するサービスです。具体的にはLINE公式アカウントを活用して、顧客と1対1のコミュニケーションを仕掛けていき、例えば紙のアンケートでは困難だったイベント来場者や未来場者の、属性情報や行動ログ、さらにはアンケート回答まで得ることができます。そうすることで、来場者、未来場者それぞれに対し言葉を変えて、「展示物が変わったのでもう一度来てみませんか」「あと〇日で、終了します。ご来場おまちしています」と再来場、来場を促したり、関連グッズの告知や販売もできます。また、イベントのテーマや特性、ターゲット層に応じて、さまざまな演出、仕掛けを企画して有効に活用できます。


「カードキャプターさくら展」と「進撃の巨人展」で効果を検証

——具体的な活用事例を教えていただけますでしょうか。

関口——なかよし連載20周年を記念して企画され、昨年から今年夏まで開催された「カードキャプターさくら展 -魔法にかけられた美術館-」では、カードキャプターさくらファンの来場者が撮った写真をLINEで集め、展示物の一部にするという試みを実施しました。

杉江——「さくら展」ではイベント前からLINEの公式アカウントを作り、トーク機能を使ってアンケートを取りました。友だちになってくれたLINEユーザーの9割がアンケートに答えてくれ、イベント来場者を対象にしたフリーアンサーでもかなりの文量を書いてくれました。スマートフォンを使って気軽にスピーディに書けるという世界を作ったことが功を奏したのだと思います。「さくら展」は東京の後、展示物や演出を変えて大阪でも実施しました。LINEを通じても告知したのですが、大阪での実施をLINEで知った、あるいはSNSを通じて口コミで知ったという人が一定数いたようです。また、東京と大阪それぞれの来場者特性を可視化できたのも大きな成果です。


関口——最近は「進撃の巨人展FINAL」でLINEを活用しました。「さくら展」との違いは、よりグッズ販売に重きを置いたことです。アンケートでこんな書き込みがあったとか、LINEの友達がこんなに増えたとか、それだけでロイヤルカスタマー化したと言えるかは疑問が残ります。来場者がイベントでどんな行動を取り、主催企業の商品・サービスにどう興味関心を示したかが、重要になると思います。
そういった顧客のロイヤルティをより明確な数字で出していくためには、グッズの販売実績を示すほうが説得力が増すのではないかと。また、イベントの収益ではグッズ販売が無視できないウエイトを占めます。そこで、「巨人展」ではオリジナルグッズの販売を目的とした情報発信をLINEで行いました。

「リーブス商会」という原作に出てくる店の名前を使ったLINE公式アカウントを開設し、お店からの発信という体裁で商品を紹介したのですが、キャラクターとトークする中で「このキャラクターが好きなあんたには、この商品がおすすめだ」という風に、まるで個人間の対話のような人間味のある反応をさせたので、おすすめされる側も、驚きや喜びとともにかなり受け入れやすくなっているというのがポイントです。

(C)諫山創・講談社/進撃の巨人展FINAL製作委員会
「進撃の巨人展FINAL」で販売されたグッズ

杉江——確かに「さくら展」のときには、LINEは世界観を共有する場という意味合いを強く出していました。キャラクターのケロちゃんが楽しげにトークを進めながら、アンケートを取ったり、好きなシーンを送ってもらったり。コンテンツとファンの関係を、LINEを活用することでより深めることができたと思います。

「巨人展」は、アニメやキャラクターといったコンテンツビジネス開発を得意とする当社のUX・コンテンツセンターと連携して展覧会の全体設計を行い、LINE公式アカウント名でサブキャラの商人の店を前面に押し出し、展覧会情報とともにグッズの追加情報を次々と発信しました。
また、東京での展覧会では、LINEを使ってチェックインすることで、グッズを購入した際のPOS情報とアンケート情報を紐づけできるようにしました。何歳でどこから来てどのキャラクターを好きな人が、いつ何を何個買ったか、データとして記録・蓄積・分析ができる設計です。


イベントの顧客体験価値を高めることで顧客との関係を深化

——2つのイベントは、課題に対して成果を出しています。今後の展開は?


杉江――LINEのビジネスサービスも変化しています。今ではLINE Pay、LINE Beacon(位置情報を使ったコミュニケーション機能)といったオンラインとオフラインの垣根を越えたサービスが続々と登場し、利用者も増えつつあります。当社としては、実際に生活者の行動変化を促すアクティベーション領域でLINEのクライアントサービスを拡大していこうとする中、多彩な企画やクライアントメリットの充実を図りながら、イベントの顧客体験価値をどう高めるかがまず重要と考えます。さらに、イベントを通じて収集したデータをもとに顧客の意識・行動を可視化し、CRMにつなげてイベントそのもののROI(投資利益率)を高めていくことが、クライアントサービスとして重要なポイントとなってくるでしょう。

関口――イベントの企画運営とデジタルマーケティングの垣根はなくなってきています。購買もキャッシュレスが進んでいることから、例えばイベント会場でグッズが売り切れて買えなかった人がその場でスマートフォンから予約購入をするような動きも増えてくるでしょう。来年、5Gが導入され通信環境が大きく変わります。このスピードを生かしたSNSの施策で、どれだけ顧客やクライアントを驚かすようなものを打ち出せるか、トライしていきます。


杉江
――LINE Beaconを使って、ある一定エリアにいる顧客からリアルタイムで情報をもらうことや、タッチラリーでイベント会場を回るだけで自然にポイントがたまるというようなことはもちろん、LINEで事前に来場予約をとることもすでにやろうとしています。LINEチケットというサービスと連携し、LINEから入場チケットを購入した顧客がイベントでどのような行動を取ったのかを追跡し、その場でその顧客だけへの特別な体験を提供するといったことも視野に入れていきたいです。
一人一人の顧客をしっかり理解して、企業とイベント来場者、ファンとの関係をどうつなげていくのか。突き詰めると、ツールとしてLINEは使いやすいんです。顧客の体験や経験は数値化しにくく、企業はその情報を活用することが難しいのですが、LINEを活用することで、さまざまな行動を紐づけ・可視化でき、データとして残せるようになります。私たちの強みは、イベントによるエクスペリエンス最大化とデジタルマーケティングによるCRM最適化を一貫して企画運営できるところ。今後も株式会社 電通テックと株式会社電通ライブは新しい取り組みにチャレンジしていきます。
杉江弘樹
株式会社電通テック OMOプランニングセンター
OMOコミュニケーション・プロデュース推進1部 部長/LINEチームマネージャー
BTL全領域のプロデュース業務を担務した後、電通出向を機にアクティベーション・プランナーとして活動。メーカー・流通から官公庁まで、ローカルからグローバルまで、幅広くブランドアクティベーションを設計。昨今はLINEを中心に企業のデジタルトランスフォーメーション支援に従事。電通ソーシャルデザインエンジン所属。

関口真一郎
株式会社電通ライブ クリエーティブユニット
第2クリエーティブ ルーム長 兼 関口ディレクター部 部長
スペース領域を中心に、国内外展示会、イベント、POP UPストア 他幅広く手掛ける。
クライアントのブランディングに関わるクリエイティブ・戦略を含 めたプロジェクトにプロモーション分野のプロデューサーとして参 画し、プロモーション領域だけにとどまらず、ブランディング構築 のパートナーとしての活動も多い。

Written by: BAE編集部

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