2018-06-21

ヒット商品開発の裏側。絶妙なバランスで成り立つクリエーティブ

ヴィレッジヴァンガード×電通テックが生み出した化学反応「脳麺」
昨年、ヴィレッジヴァンガードのヒット商品となった「脳麺」。人間の脳をモチーフにしたピンクのラーメンは、商品パッケージや周辺クリエーティブも話題となりました。

特に、女子高生の頭を器に見立て、ピンク色の麺が飛び出しているメインビジュアルは、多くのメディアでも取り上げられた他、SNS上でも拡散。昨年末にはADC賞入選、今年の初めにはJAGDA賞入選と、業界内でも高い評価を得ました。

この「脳麺」がどのように誕生したのか、商品開発からクリエーティブワークまでを、ヴィレッジヴァンガードコーポレーション 事業開発部 部長 姫野文信氏と電通テック アートディレクター 石原絵梨氏に語っていただきました。

※2022年4月より電通テックから電通プロモーションプラスへ社名変更しました。


学生に向けて「脳の働きを助けるラーメン」を

 
(左から)株式会社ヴィレッジヴァンガードコーポレーション 姫野文信氏、株式会社 電通テック 石原絵梨氏 (ロケーション協力:ヴィレッジヴァンガード 渋谷本店)

――2017年、ヴィレッジヴァンガードのヒット商品となった「脳麺」。まずはその誕生の経緯を教えてください。


石原――はい。まずヴィレッジヴァンガードさんから”オリジナル商品を開発したい”というオファーが「パンダの穴※」にあり、2015年に「ヴィレパン」というブランドが誕生しました。その縁で「ヴィレパン」のオリジナル商品を提案する大きなプレゼン大会が電通テック社内で開催されることになり、私もそこに参加しました。当時、提案の総数は100を超えていたと思います。そのなかから選んでいただいたのが、すべての始まりです。

姫野――ヴィレッジヴァンガードの社内でも、オリジナル商品の開発はしていますが、やはり凝り固まってしまう部分もあり、社外の方からアイデアをもらえる機会というのは、非常にありがたかったです。オリジナリティあふれる脳麺に出会ったときは、「見つけた!」という感動さえ覚えました。

――「脳麺」を選んだ決め手は何だったのでしょうか?

姫野――ネーミングと、商品ビジュアルの強さですね。もしこれがコンビニに置いてあったら違和感を覚えるかもしれませんが、ヴィレッジヴァンガードにある分には、“いい意味で”溶け込める。むしろヴィレッジヴァンガードらしい商品として、ユーザーに受け入れられると感じました。


石原――
ヴィレッジヴァンガードさんは学生のお客さんも多いため、「学生を応援する商品」を作りたいと考えました。学生といえば、やはり試験勉強。そこで「頭が良くなる→脳の働きを助けるラーメン」という発想で“脳麺”に辿り着きました。商品ビジュアルに、マンガやアニメに登場するようなキュートさと、インパクトを持たせたいと思い、ピンクの麵を製麺会社さんに特別に作っていただきました。

姫野――
パッケージのピンクとブルーのパステルカラーは、販売時期の季節にもガールズコーナーにもマッチしていましたし、何より目立ちますよね。ヴィレッジヴァンガードの商品は個性の強いものが多いですから、エッジの効いたものでないと埋もれてしまうので、その点もいいなと思いました。

石原――それは当初から意識していたことでもあります。だから商品名(ロゴ)も、あえて図形っぽくすることで「何だ、コレ?」というフックになるようにしています。「脳麺」とパッと読めなくても、下の脳の形と、そこから見えるピンクの麺がすべてを説明してくれると考えました。他にも細かい部分だと、よく見るとパッケージの縦横に線が入っているのですが、これは方眼紙のイメージを加えることで、“勉強”の要素を演出したんです。

姫野――
“脳(みそ)”が名前に付くのに、塩味というギャップも面白いですし(笑)。

石原――ありがとうございます(笑)。ストレートに味噌味という選択肢ももちろんあったんですが、ピンク色の麺をとことん楽しんでほしいと思い、スープが無色の塩味にしました。

姫野――
しかも食べると意外とおいしい、という……(笑)

石原――はい、見た目だけでなく、味にもこだわりましたからね(笑)。女子高生ではなく、ラーメンがメインのビジュアルでは、“シズル感”も強く意識しました。


姫野――こんなビジュアル見せられたら、「どんな味がするんだろう?」って、気になりますよね。うん、あらためて塩味にして正解だったと思います。


店頭で分かりやすく、埋もれないためのクリエーティブ

 

――
ピンク色の麺の製造も苦労したと聞いています。しかしその甲斐あって、「脳麺」はヒット商品になりました。また周辺クリエーティブも広告賞に入選するなど、大きな話題となりました。制作にあたっての狙いは何だったのですか?

石原――ヴィレッジヴァンガードという場所に掲出するとなると、ポスタービジュアルも普通のものでは埋もれてしまうと考えました。そこでターゲットである学生の頭(脳)からピンクの麺が飛び出している、という尖ったヴィジュアルでいこうと考えました。ただあまりに気持ち悪すぎるとマイナスイメージになってしまうため、同じ女子高生をコピー&ペーストすることで「頭から麺が出ている」ということを記号として扱い、少しクールダウンさせています。目指したのは、「気持ち悪さ25%+おかしさ25%+かわいさ50%」です(笑)。

所狭しと商品が並ぶ、ヴィレッジヴァンガードの店内(写真は渋谷本店)

石原――また、「脳麺」は普通のラーメンとは違いますから、他とは違ったアプローチをすることができました。チャレンジングな部分もあったとは思うんですが、ヴィレッジヴァンガードさんが全面的に理解を示してくださって、自由な発想でクリエーティブを創ることができました。その点はいまも大変感謝しています。

姫野――こちらこそ感謝です。石原さんの提案内容がよかったから、スムーズに進んだんですよ。

石原――ありがとうございます。ちなみに当時、店舗のスタッフさんの反応はいかがでしたか?

姫野――すごくよかったですよ。やっぱり店頭プロモーションというのは、非常に重要ですから、あんなインパクトのあるビジュアルで、説明しなくてもパッケージだけで何かすぐわかるというのは、スタッフからしても「売りやすい」わけです。ビジュアルよし、キャッチよし、さらに味もよし。まさに売れる要素の詰まった商品だったと思います。

石原――すごくうれしいです。企画当初から「売りやすい商品にしたい」という思いを持って、商品や広告ビジュアルなども作成しました。様々な企業のプロモーションに携わってきた経験を詰め込むことが出来ました。

――メインビジュアルに出演している女の子も、とてもハマっていますね。どういった基準で選定されたのですか?


石原――KOTOちゃん、かわいいですよね。実は彼女、私たちが決めたのではなく、『CHEERZ(チアーズ)』というアイドルを応援するアプリによる公開オーディションによって、ユーザー投票で選ばれたんです。アプリとコラボレーションした理由は、学生をターゲットにした商品ということもあり、SNSに注目していました。そこで発売前から話題になるような仕掛けとして、『CHEERZ』と連携し、出演者を決めることにしました。結果的にKOTOちゃんに投票してくれたファンの方も脳麺を購入してくださったり、SNSにコメントを投稿してくださったりと、相乗効果も生まれました。

姫野――ヴィレッジヴァンガードのプロモーションは基本、店頭とSNSを主戦場にしているので、脳麺が若い子を中心にSNSで拡散していた点も、ヴィレッジヴァンガードと相性のいい商品だったことを示している気がします。

石原――そういえば、今年の2月にあったファッションイベント「rooms EXPERIENCE 36」に脳麺のブースを出させていただいたときにも、“面白い”と写真を撮ってくださる方が多かったです。

姫野――あのビジュアルですからね、やっぱり大人だって気になるんですよ(笑)。たしか初日で予定していた販売分は売り切れるほど、人気だったはずです。ヴィレッジヴァンガードで脳麺を見つけた人たちも「他にはないものを見つけた」喜びを味わえたと思います。それは先日のイベントでも同様だったのではないでしょうか。だから思わず、衝動的に購入してしまったのかもしれません。


広告制作のノウハウは商品開発にも活かせる

 

――脳麺の求心力は、いまも健在のようですね。

姫野――だと思います。

石原――当時、本当に自由な発想でモノ作りをさせてもらって、それがいまでも販売すれば売れるというのは、すごくうれしいです。いま振り返ってみても、本当に幸せな仕事だったと思っています。

姫野――ヴィレッジヴァンガードというのは、モノやコトを楽しんでくれる人が集まる場所です。とはいえ以前は、目的もなく訪れる方も多かったのですが、最近は目的を持って訪れる方も増えました。そのなかで“つい買ってしまった目的外のアイテム”として、脳麺は多くの人たちから、愛されるべくして、愛された商品だったと感じています。

石原――ありがとうございます。商品開発と広告制作というのは似て非なるものですが、広告制作のノウハウを活かし、商品開発まで経験できたことは、自分にとって大きな財産となりました。

姫野――こちらこそ、ありがとうございました。弊社としても、常に広い視野を持ち続けるためにも、外部から刺激をもらうことは非常に大切だと思っています。ぜひ継続性を持って、この関係を続けていきましょう。

石原――はい、ぜひまたご一緒させてください!

インタビュー中だけでなく、撮影中もふたりは和やかな様子で、当時を懐かしんだ

ヒット商品には、視点やアイデアも大切ですが、「売りやすい」ことも重要です。そのなかで脳麺は、インパクトのあるビジュアル戦略が功を奏し、ユーザーにとっては“気になる”ものに、店舗スタッフにとっては“売りやすい”商品となりました。

またSNSで情報が拡散した大きな要因も、そのビジュアルにありました。プロモーション段階での効果的なアプローチまで実現した「脳麺」は、商品開発する上でのヒントが詰まった好例と言えるのではないでしょうか。

石原絵梨
1987年生まれ。2011年多摩美術大学卒業。同年電通テック入社。
東日本大震災後、岩手県大船渡市の「丸橋とうふ店」のパッケージが2012年グッドデザイン賞を受賞したことをきっかけに、パッケージを軸にしたコミュニケーションプランニング、商品開発などを多く手掛ける。タカラトミーアーツより「もちばけ」「山本くん」、ヴィレッジヴァンガードより「脳麺」、三河屋製菓より「えびせん屋台村」発売中。NY TDC、ADC賞、JAGDA賞、TECHNE ID AWARDなど入選。
パンダの穴とは:「電通テック」と「タカラトミーアーツ」で立ち上げたガチャブランド。「ちょっとヘンな世の中に、ちょっとヘンなガチャを」をコンセプトに、電通テックのクリエーターが商品を企画デザイン。

Written by: BAE編集部

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