2021-01-27

効果を最大化する「クリエイターファースト」
─2022年のSNSマーケティング

2021年の振り返りから見えた、2022年のSNSキーワード
コロナ禍を機に、急激にニーズが高まっている「SNSマーケティング」。ユーザーとオンライン上でつながるだけでなく、最近は「TikTok売れ」などに代表されるように「売れる場」としても注目を集めています。

そのなかで、今年重視すべきSNSマーケティングのキーワードとは、どのようなものなのでしょうか。

2021年のSNSプラットフォームの動向を振り返ることで、2022年のキーワードを探るべく、SNSを中心としたクリエイターマーケティングを展開し、「TikTok For Business Award 2020」のパフォーマンス部門でブロンズも受賞した、株式会社Natee 取締役COO 朝戸太將さんに、電通テックでソーシャルメディアコンサルタントであり、SNSマーケティングに関するウェビナー講師も務めた菅原裕亮がリモートでお話を伺いました。

(左)株式会社電通テック ソーシャルメディアコンサルタント 菅原裕亮、(右)株式会社Natee 取締役COO 朝戸太將さん

※2022年4月より電通テックから電通プロモーションプラスへ社名変更しました。


コロナ禍により増加した、「SNSの接触時間」と「EC利用」

菅原――現在、SNSマーケティングへの注目度が加速している背景には、新型コロナウイルスの感染拡大も大きく影響しているように思います。まずは、コロナ禍がSNSと生活者の関係に与えた影響はどのようなものだったでしょうか。

朝戸――コロナ禍といわれる現在の状態が始まったのが2020年。物理的な接触を避ける必要があったことから、いわゆる“おうち時間”が急増し、生活者のSNS接触時間も大きく増加しました。そこには、「初めてのパンデミック体験」によって生じた、人と会えない寂しさを少しでも軽減したいという生活者の思いがあったのではないでしょうか。

菅原――そうですね。2020年は「居場所」を求めてソーシャル空間に滞在するユーザーも多かったように感じます。ちなみに、2020年の接触時間の増加傾向は、2021年も続いたのでしょうか?

朝戸――はい、続きました。これは2020年から現在まで、生活も仕事も一気にデジタルシフトが進むなかで、デジタル上で情報収集する時間が増加しているからだといえるでしょう。一方で、「安全に会う(接触する)方法」が見えてきたことで、リアルとデジタルのバランスを上手に取りながら生活する方も増えている印象です。

2019年以降、SNSの平均利用時間は増加傾向にある 
画像出典:Glossom株式会社が2021年7月に発表した「スマートフォンでの情報収集に関する定点調査2021」より

菅原――2020年は、米Amazonの売り上げが前年比で37%増となるなど、世界的にEコマース(EC)の売上も急伸しましたが、2021年はどうだったのでしょうか?

朝戸――ECも同様に、増加傾向は継続しています。2020年に、ネット通販の利便性を多くのユーザーが再認識し、2021年は

菅原――EC事業に参画する企業はさらに増え、レッドオーシャン化している印象です。競合他社の参入により、SNS広告だけではユーザーを刈り取れなくなってきたため、昨今は家電や消費財といった競合の多い企業から、「広告出稿に寄らないユーザーとのエンゲージメント創出」に関する相談が増えてきています。


SNSで重要なのはコンテンツ。「短尺動画」トレンドは2022年も継続の兆し

菅原――コロナ禍を機に「SNSで知って、ネットで買う」ことが以前よりも普通のことになりましたよね。そのためSNSマーケティングのコスパも自然と向上し、ニーズも高まったという印象があります。

朝戸――私もそう思います。SNSはユーザーの生活の一部ですから、大切なのはそこにどう入っていくか、どうやって振り向いてもらうかです。そのためには、やはり良質なコンテンツが重要になります。

菅原――SNSを通じて生活に溶け込んでいくために、どれだけコンテンツ投資できるかが企業にとって重要になりますね。現在、どのようなコンテンツがSNSとの相性がいいのでしょうか?

朝戸――最近ですと、「動画」と「IP(キャラクター活用)」ですね。動画の単位時間あたりの情報量は非常に多く、画像と比べると5,000倍にもなるといわれています。ちなみに1分間の動画は、一般的なWEBページの3600ページ分の情報量があるともいわれているんです。

菅原――ならば、長い動画ならより多くの情報を届けることができますし、企業にとっては、長尺動画を望むケースもあるのではないでしょうか?

朝戸――ですが、長くなると飽きられてしまう、というリスクも生まれます。ただし、6秒間ループ再生される動画で話題となった「Vine」は2017年にサービスを終了していますから、短ければ短いほどいいわけではなく、むしろ長さより、「体験」や「共感性」が重要という印象を受けています。

菅原――2020年は巣篭もり需要もあって、Netflixなどの配信動画サービスが普及した「長尺動画」がトレンドだった年なように思いますが、2021年はTikTokをはじめ、Instagramのリール動画も一般化していった印象です。YouTubeのショート動画も流行りましたし、「短尺動画」がトレンドでしたね。

2021年7⽉に「YouTubeショート」という機能が公開。YouTube上でもショート動画はトレンドになっている

朝戸――そうですね。TikTokもかなり勢いがありますし、「短尺動画」トレンドは2022年も続くと私は見ています。


若者のライフスタイルにマッチした「音声メディア」「音声SNS」

菅原――音声メディアの台頭も、2021年の見逃せないトピックスだったと思います。さまざまな音声メディアが群雄割拠していますが、「聴覚」を起点としたマーケティングの可能性をどのようにお考えですか?

朝戸――Z世代の若者たちにとって、スマホでコンテンツを消費するのは日常の一部です。しかし動画は、視覚と聴覚の両方を奪われるため、徒歩での移動中や、勉強中は見ることができません。そんなときでも、音声なら聴覚だけで楽しむことが可能です。日常の中には、実は「耳だけは空いている」という時間が意外とあるんですよね。


菅原――昔はラジオ一強だったところに、新興メディアが参入し、音声コンテンツ専門のクリエイターも登場するなど、「音声の民主化」という状態が生まれていますよね。これだけ多種多様なコンテンツが日々増えていくなかで、企業にとって重要になるのは「クリエイター」といかに協力していくかだと感じています。

朝戸――はい。現代は、誰もがSNS上で発信や表現ができる「クリエイターエコノミー」の時代です。TikTokのようなプラットフォーム側からのレコメンドエンジンも進化しており、さまざまなユーザーと出会う機会があり、さまざまな投稿に触れる機会があるため、ユーザーと商品のセレンディピティ(偶然の出会い)も起きやすくなっています。一方で、音声SNS「パラレル」のようなクローズドのSNSも人気を博しています。

菅原――DXが急激に加速した結果、用途によって、SNSを使い分ける文化が自然と生まれたのかもしれませんね。

朝戸――リアルで会えないなら、オンラインで会えばいい。実にシンプルですが、いまの時代にマッチしたSNSのカタチですよね。


ファンマーケティングに活用される「SNS」

菅原――企業目線でSNSを捉えると、「ユーザーをファン化するツール」としてのニーズが高まっているように感じます。SNSで双方向のコミュニケーションをしながら“つながり”、その先にオウンドメディアを用意することで、“ファン化”を促進する。そうやってファンコミュニティを形成しようという動きが加速している印象を受けています。

朝戸――生活者のSNS接触時間が増えたことは、企業にとっても、いい流れですよね。人間もそうですが、ユニークな面もあれば、真面目な面もある。SNSでつながることで、企業の多面性、たとえばSDGs活動なども届けることができますし、“深くつながる”きっかけ作りができますよね。

菅原――SNSを通じてより人間味のあるコミュニケーションをとりつつ、より深い関係性を築けるという点はいい動きですね。まさにファンマーケティングを展開する場になっていると感じます。

朝戸――はい。パレートの法則で「売上の8割は、2割の優良顧客が生み出している」というのがありますが、ではその優良顧客(ロイヤルカスタマー)とは誰なのかを、これまで企業は把握できていませんでした。しかしオウンドメディアのようなファンコミュニティを作成することで、ロイヤルカスタマーの声に耳を傾けることもできるようになるなど、多くの利点が生まれます。

菅原――最近企業が注目しているユーザー生成コンテンツ「UGC」も、ファンによる自発的な発信ですし、ファンマーケティングの重要度は増していますよね。

朝戸――では、どうすれば「UGC」が生まれやすくなるか。起点はインフルエンサーからの発信であるケースが多いことを考えると、プラットフォームに合わせた「クリエイター起用」が重要であるといえると思います。

プラットフォームに合わせた「クリエイター起⽤」が結果につながった、進研ゼミ(⾼校講座)の⼊会促進を⽬的としたPR投稿の例
画像出典:Nateeウェブサイト


菅原――ユーザーが自発的に発信したくなるキーオピニオンリーダーとしてインフルエンサーを起用するというのは大切な手法だと思います。投稿マインドが低いユーザーにとっても、「このような投稿をすれば良いんだ」という参考事例にもなりますし、企業側が「製品の利用シーンを投稿してね」というよりもユーザーにとって受け入れられやすいという利点もあります。

朝戸――ユーザーはプラットフォームを探しているわけでなく、良質のコンテンツを探しています。YouTubeがクリエイターたちをサポートしているのも、そうした理由からです。結局、いいコンテンツがなければ、プラットフォームは廃れてしまいます。昨年、Twitterが投げ銭機能を実装したのも、Twitterのクリエイターたちをサポートするためです。

菅原――良質なコンテンツがなければ、プラットフォームのアクティブ率も下がってしまう。クリエイターと良好な関係を築くことは、プラットフォーム側にとっても死活問題なんですね。

朝戸――はい。ですからクリエイターファーストであることが、ユーザーファーストであるともいえると思います。Instagramもクリエイターをサポートするために、Instagramの投稿で収益を上げるアフィリエイト機能を実装しています。ファッションとの親和性も高いプラットフォームですし、紹介した商品が売れると、クリエイターにもインセンティブが入る仕組みは、まさにクリエイターファーストの視点で生まれたものと考えることができるのではないでしょうか。


ダウンロード数世界一。ユーザー層の拡大に伴い誕生した「TikTok売れ」

菅原――各プラットフォームがクリエイターファーストを加速させるなかで、特にTikTokで、「TikTok売れ」なんて言葉も登場しましたよね。

朝戸――2021年、世界でいちばんダウンロードされたアプリが「TikTok」でした。日本だけでなく、世界中で今、いちばん注目されているプラットフォームと捉えることもできるでしょう。

菅原――日本では「TikTokは若者向けのプラットフォーム」という印象でしたが、これだけ世界的にヒットしているということは、日本のユーザー層も拡張しているのでしょうか?

朝戸――はい。2018年時点では、Z世代(10代〜20代前半)中心だったTikTokユーザーですが、現在はミレニアル世代(20代〜30代)にまで、年齢層が拡大しています。年齢層が広がると同時に、TikTok経由での購買アクションが多く見られるようになり、「TikTok売れ」という言葉も生まれました。こうして2021年は、TikTokにとって、非常に重要な年となりました。

Z世代が中心だったTikTokユーザーだが、AppAnnieによると2021年6月時点では3人に1人が25〜44歳となっている 
画像提供:Natee


菅原――ファッションなどぱっと見で良さが伝わる商材においては、TikTokは有用なユーザーのコミュニケーションツールだと思いますね。一方で、家電などぱっと見で差別化ができない、具体的な説明が必要なものは、Instagramの方がビジネス上は勝機があるようにも思います。TikTokのユーザー層が広がっている要因も、やはりコンテンツにあるのでしょうか?

朝戸――そうですね。TikTokは「検索」ではなく、「レコメンド」による視聴が多いプラットフォームです。その点においても、ゲームチェンジを起こしたプラットフォームであるといえます。アカウントを作ってフォロワーが「0人」の状態でも、動画を投稿すれば、数百再生されることが普通に起こります。バズりやすい環境があるというのは、クリエイターにとって参入しやすいですし、大きな魅力となります。まさにTikTokは、クリエイターファーストなプラットフォームなんです。

菅原――まったく接点のない人にも自社の商品を表示させることができるということは、企業にとって新規顧客を獲得しやすいプラットフォームだともいえそうです。ユーザー側も、受け身のまま次々に新しい情報を取り込むことができますし、意図した検索ではない、偶然の出会いもあるというのは新しい体験ですよね。


2022年のSNS注目キーワードは「短尺動画」「クローズドSNS」「メタバース」

菅原――2021年のSNSプラットフォームの動向を振り返ることで、SNSマーケティングにおける重視すべきキーワードが見えてきたように思います。あらためて、2022年のSNS動向を、どのように予想していますか?

朝戸――「短尺動画」は2022年、さらに盛り上がりを見せると予測しています。TikTokの動画投稿やInstagramのリール動画は、ユーザーといま、いちばんつながりやすいアプローチだと思います。まだまだユーザーも増えていくでしょうし、この勢いが急に衰えるとは思えません。一方で多くの人とではなく、身近な人と深くつながる「クローズドSNS」にも注目しています。音声SNS「パラレル」はZ世代から絶大な支持を受けていますし、マーケティング活用という視点においても、ポテンシャルは非常に高いように感じています。

菅原――たしかにそうですね。短尺動画の中でも、私は特にYouTubeショートが伸びると思っています。TikTokやInstagramのリール動画に慣れ親しんだZ世代にとっては非常に受け入れられやすく、YouTube内で通常動画とショート動画両方を視聴する、といった文化が根付くと感じています。また、「パラレル」のように多面的な性格や飾らない自分を出せるSNSコミュニティも増えていると思います。そこで触れる広告も、世界観を踏まえていれば、自然と受け入れてもらえる可能性がありそうです。


朝戸
――もうひとつは、「メタバース」。これもSNSと決して無関係ではありません。ご存知の通り、Facebookが社名をMeta(メタ)と変更した理由にもなったメタバースは、いま世界中の企業が注目しているキーワードです。容姿も声も性格も、すべてを変えた新たな人格を仮想空間上で持ち、リアルと行き来する。そんな未来の到来を予感させますよね。となれば、リアル用のSNSアカウントと、仮想空間用のSNSアカウントを使い分けるといった可能性もあるはずです。メタバースが広がれば、SNSを取り巻く環境にもきっと大きな影響があると見ています。

菅原――メタバースに関連するところでは、企業参入の話題の絶えない「NFT」も注目したいですね。デジタルコンテンツの情報管理が変わると同時に、クリエイターにとってはこれまでとは違う稼ぎ方ができる可能性があるので、我々のビジネス環境も大きく変わる可能性があります。 2021年同様、2022年も新しいSNSトレンドが生まれるでしょうね。私たちもUGCを生み出し活用するようなサービス開発も行っていくなど、SNS起点でありながらSNSに閉じない領域まで強化していこうと思います。

本日はありがとうございました。
朝戸太將(あさと・だいすけ)
株式会社Natee 取締役COO
東京大学を卒業後、リクルートキャリアを経てNateeに創業メンバーとしてジョイン。創業期よりTikTok事業の統括を務め、広告主の認知や購買促進など多様なニーズに対してTikTokを軸としたソリューションを提供。2020年末には「TikTok For Business Award」でブロンズ賞を受賞。

菅原裕亮
株式会社電通テック
OMOソリューション事業部ソーシャルメディア推進部
不動産営業・本社勤務を経て2018年電通テック入社。
SNS・WEBに関わる、企画から実施までトータルでプロデュース。
SNS立上げ/運用、イベントにおける展示コンテンツとの LINE連動施策、大規模スポーツ大会パートナー企業SNS企画・運用等の実績を有する。

Written by: BAE編集部

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