2019-02-13

中国の消費を牽引する90後はなぜ、中国市場を動かせるのか?

アジアITライターが語る、中国の若者のインサイト
急発展を遂げた中国。現在、「90後(ジョーリンホウ)」や「95後(ジョーウーホウ)」と呼ばれる1990年代生まれの若者たちに大きな注目が集まっています。その理由、背景、彼らのインサイトやニーズなどについて、中国アジアIT専門ライター・山谷剛史さんに解説していただきました。


中国では、物価が上昇し続ける以上、消費する方が得

先日発表された観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によれば、訪日外国人の一人あたりの旅行支出における買い物代は11万円強で、中国だけが平均値の5万円強をダブルスコア以上、上回っていることがわかります。これは、他国と比べても高く、これほど消費に積極的なのは中国だけです。その理由は、急成長を遂げた中国ならではのものです。

まず今の中国人は、収入データで読み解く以上に裕福です。家族の結束が強い中国では、家族や、もっと広げて大家族や親族が、家族のためにお金をポンと気前よく出してくれる傾向にあります。日本人は自己責任のもと、自分の財布は自分で管理するという人が目立ちますが、中国ではそうした人はむしろ“珍しい”部類に入ります。

好景気も作用して、中国では毎年、給料が上がり続けています。当然、世帯収入も増え続けていますし、年を追うごとに彼らは豊かになっているといえます。


多くの人で賑わう中国の繁華街

筆者が中国をウォッチし始めたのは2000年代前半からですが、その頃は今よりも明らかに貧しく、ホワイトワーカーでも月収1,000元に届かない人が、中国の都市部でも珍しくありませんでした。しかし今では、食堂の臨時工でも月収2,000元を超すレベルとなっています。

しかし給与が上がる一方で、物価も年々上昇しています。特に住宅費、食費、エンタメ代金は、上昇の一途を辿っています。特にスマートフォンをはじめとした電子製品や情報機器は、「今所有しているものよりもワンランク上のモノを買いたい」という意欲がありますから、中国人は自らの意思でより高価な商品を購入しています。

その背景には、物価が上がり続け、持っているお金の価値が毎年下がっていくのなら、むしろ、「どんどん消費しないともったいない」という思考があります。

また、家族親族がマンションの一室を資産として有しているケースが珍しくないことから、若い世代が親から家や部屋を借りてセカンドハウスとしたり、そこでカフェや語学や趣味の学校をオープンさせたり、リアルとネットを兼ねた店や民泊を開業したりするなど、部屋で好きな仕事をする動きが、2015年あたりから多く見られるようになりました。

もともと中国人はフリーランス的な考えをもっていて、会社に忠誠を尽くして会社員になろうとする人はあまりいません。さらに家族親族の持つ空き部屋を活用すれば、独立して自分の仕事ができる状況などもあり、好きなことを仕事にしている若者も中国では増えています。


中国市場で大きな注目を集める1990年代生まれ

そんな中国では「90後(ジョーリンホウ)」や「95後(ジョーウーホウ)」と呼ばれる1990年代生まれの若者たちに大きな注目が集まっています。なぜなら、彼らは現在、ネットからトレンドが生まれる中国を牽引している存在だからです。

中国でスマートフォンが普及しだしたのが2010〜2011年あたり。92年生まれ以降であれば、大学生になり晴れて自由を獲得し、スマートフォンを持ち始めた、そんな世代となります。さらにスマートフォンでエンターテインメントが利用できるようになったのは、筆者の記憶では2015年以降だったかと思います。

2015年に「直播(ジーボ)」と呼ばれるライブストリーミングが流行り、その後2017年に中国のTikTok「抖音(ドウイン)」や「快手(クワイショウ)」などのショート音楽動画SNSが流行。他にも動画アプリや、スマートフォンがカラオケになるカラオケアプリ、写真をきれいに加工できるアプリ「美図秀秀(ビューティープラス)」も人気となりました。

その中心にいたのが90後であり95後でした。つまり、スマートフォンが流行ってから現在にいたるまで、エンタメの中心にいて、華のある人気のアプリで自分を見せて拡散させ、スマートフォンカルチャーを引っ張ってきたのが彼らなのです。

これは中国問わずですが、やはり若い世代の方が流行により敏感で、若い人の方が注目も集まりやすいこともそこには大きく影響しています。加えて現在、スマートフォンでの動画配信においては、90後より、95後の方が積極的に利用しており、彼らを中心に利用が拡大しています。


(左)ショート音楽動画SNS「快手(クワイショウ)」(右)写真加工アプリ「美図秀秀(ビューティプラス)」


90後がネット利用に積極的な背景

2010年代、中国最大のEコマース企業・阿里巴巴(アリババ)がECサイトの主力を「淘宝網(タオバオ)」から「天猫(T-mall)」(現在、中国最大のインターネットショッピングモール)へとシフトしました。

この天猫が誕生した背景には、「ニセモノや粗悪品をつかまされるかもしれない」といった「オンラインショッピング不信」を払拭しようとした狙いがあります。そのため同サイトでは、商品到着後7日は返品・交換が可能。さらにT-mallが認定した正規品を扱う店舗でなければ出店できないというルールを設けました。

これにより、中国のECサイトは以前より信用できるものへと変化しました。

つまり、90後や95後が大学生となり、晴れて自由になって見た中国社会は、一昔前にあった人間不信社会は薄れ、きれいな社会になっていたのです。

きれいな社会だから、90後や95後はこれまで全く普及しなかった中古取引に抵抗を見せることもありませんでした。その証拠に、アント フィナンシャルとCBNDataが発表した芝麻信用(個人信用評価システム)のレポートにも、若い中国人ほど、中古や商品レンタルに抵抗がないという調査結果があります。

以前よりも信頼性の高まった社会となった中国は、2015年以降になると、アント フィナンシャルの支付宝(アリペイ)内の「芝麻信用」が登場し、そこで算出される“信用スコア”を活用したシェアサービスやレンタルサービス、中古販売買取サービスも登場して、ネットの利便性はますます向上しました。

さらに「美団外売(メイトゥアンワイマイ)」などのフードデリバリーやネットスーパー、阿里巴巴のスーパー「盒馬鮮生(フーマフレッシュ)」をはじめとした、オンラインとオフラインを融合した“ニューリテール”と呼ばれるスーパーの登場により、食料品や料理など、様々なものを宅配できるようになったのもこの頃です。

2015年前後には、ソーシャルECサービス「小紅書(シャオホンシュー)」が女性を中心に人気となり、また網易考La(ネットイース カオラ)をはじめとした越境ECの利用が加速し始めました。その背景にも、新しいサービスを積極的に利用する90後の存在が大きく影響しています。最初に“新しいもの好き”の彼らが利用し、SNSによって口コミで拡散、利用が拡大しました。


家で消費し、自分らしさを求める90後

外出するより家での消費は今の中国の若者の特性といえます。クーポンサイト「美団点評」のビッグデータから分析された、80後(1980年代生まれ)と90後の実態レポートによれば、90後の人気娯楽ランキングは上位から「ホームパーティー」「レース」「密室脱出ゲーム」「ボルダリング」「射撃」です。

ホームパーティーが人気というのは、まさにフードデリバリー世代だからこその結果でしょう。一方、80後は「馬術」「DIY」「ゴルフ」となっており、80後と比べると、90後はインドアなエンターテインメントが人気であることがわかります。また80後と90後の比較論では、80後は華やかな趣味が好きで、90後は自分の好きなことを目指す傾向があるとよく言われています。

90後は流行を追い求めた80後とは異なり、時に「非主流」と呼ばれ自分らしさを追求する世代です。


だからこそ、彼らに刺さるプロモーションというものを一括りにして語るのは難しいのです。しかし、「家での消費」「安い中古商品やレンタル商品を受け入れる」「新しいものに抵抗なく触れる」「いいものは拡散する」といった特徴や、最新の人気サービスを最も積極的に利用する世代であるというキーワードはあります。もし日本企業が彼らにアプローチしたいと考えるならば、そうした傾向を捉えることが重要になるでしょう。

彼らはまだ、大学生や若手社会人でそれほど所得はありませんが、バックには家族親族がいて、高価だけれど本当に欲しいモノは本人の所得以上のものだろうと買える財力があるというのも彼らの特徴のひとつです。

このように90後、95後がトレンドを生み、消費を生むのです。この流れはこれからもしばらく続くと筆者は予想しています。だから90後、95後の心を掴めれば、確実に中国全体でのヒットとなるのです。

山谷剛史
アジアITライター
2002年より中国やアジア地域のITやトレンドなどについて、日本のIT系メディアを中心に執筆。また企業向け中国調査レポートも行っている。著書に『中国のインターネット史』(星海社)、『新しい中国人』(ソフトバンククリエイティブ)などがある。

Written by: BAE編集部

CONTACT

お問い合わせ

お問い合わせ

お仕事のご相談やその他お問い合わせはこちら

資料ダウンロード

電通プロモーションプラスのソリューション資料一覧はこちら
page_top