2018-12-19

新たなアイデアで広がる「電子ペーパー」の活用法

フルカラー化で表現力がアップ。デザインやアートにも活用が可能に
「電子ペーパー」といえば、つい最近まで電子ブックリーダーという印象でした。
しかしながら、近年、新たなニーズが高まる中、フルカラー化やフレキシブル化対応に向けた技術革新が進み、デジタルサイネージや電子棚札、さらにはアートやアーキテクチャへとその応用域が広がり、既存のイメージを超えたところで注目を集めています。
電子ペーパービジネスに携わる、E Ink Japan株式会社の住田直樹さん、株式会社クレアの斉藤利一さんにお話を伺いました。
左からE Ink Japan株式会社 代表取締役 住田直樹さん、株式会社クレア 代表取締役 斉藤利一さん


電子棚札で再注目された電子ペーパーのメリット

――電子ペーパーといえば電子書籍のものというイメージでしたが、最近になって注目度が上がっています。理由は何でしょうか。

住田ご存じの通り、電子ペーパーは、「紙」の置き換えを目指したところから開発が始まり、2008年ごろから、電子ブックリーダーを中心に商用化されてきました。2013年ごろに主に欧州のスーパーなどで電子棚札に利用され始めたことがきっかけで、その需要が広がりました。

電子ペーパーの棚札は、ワイヤレスで瞬時に書き換えられ、値札を貼り替えるといった手間がかかりません。ここまでは、液晶を採用した棚札と同じですが、電子ペーパーは、書き換え時以外には電力を消費しない、つまり常態表示には電力を必要としないのです。これは非常に大きなメリットです。 また、視野角も広いため、店舗での買い物客にも見やすい点で、実績を買われたことが需要の増加した一因と思われます。

2015年ごろの欧州における電子棚札市場の電子ペーパー棚札占有率は5%未満。現在は70%を超え、日本でもじわじわと広まりつつある

住田
─さらには、半導体の技術進歩も相まって、薄さや軽量化、表示の美しさや見やすさといった点での品質改良、リフレッシュ時の表示のスピード向上や、ゴースティング(残像)の解消なども進み「電子ペーパーはもっと使える」という認知が広がりました。

それに伴い、商品化に向けた多様なアイデアが出されるようになり、現在では、大型のもので、サイネージ、交通標識、メニューボードなど、小型のもので、リモコン、玩具、時計、ラゲッジタグやプライスタグ、セキュリティ機能付きクレジットカードといった電子ペーパーを活用した商品が次々と生まれています。

(左)クレジットカードに「ON/OFF」の機能と電池を組み込めば、セキュリティ番号などの個人情報を必要なときにのみ表示でき、クレジットカードの本来の軽さ、薄さ、丈夫さも保てる
(右)航空会社が発行するラゲッジタグなどは一度導入すれば、何万回も書き換えが可能


斉藤
─電子ペーパーのリーダーやタブレットなども、最近になってバリエーションが増えました。カバーや加工によっては耐水性も保てますね。タッチも紙より書きやすいくらいだと評判ですし、長時間使っても目が疲れないので、教育用の端末としても注目されています。もちろん、書き損じによる無駄も生まれません。液晶にはない機能や魅力が電子ペーパーにはあります。

電子ペーパーは日常生活でさまざまに活用されている


紙や液晶にはないメリットを生かすことがカギ

――電子ペーパーを上手に活用するには、どんな工夫が必要でしょうか。

斉藤紙の長所である視認性を保ちながら、電気的に書き換えられ、かつ省電力であるという電子ペーパーの特性やメリットを理解し、生かすことでしょう。

当社の電子ペーパーサイネージ(EPS)は、液晶やLEDのサイネージとは違った価値を提供できると考えています。
先述の通り、常態表示の際に必要な電力は、同じサイズの液晶の約100分の1に抑えられます。災害などで電力がストップしても、モバイルバッテリーでの駆動ができますし、PCやスマホとHDMI接続して書き換えが可能です。

24時間表示することが必要なバスの時刻表や、時間ごとに書き換えるケースもある交通標識、多くの人の情報源となる観光案内ボードなどには最適です。
視野角が広く映り込みが少ないため、太陽光が注ぐ場所でも読みやすいのも特性の一つです。アメリカ・カリフォルニア州では、自動車のナンバープレートにも採用されていますよ。
(写真協力:Mercury Innovation)

バス停や看板への活用例。電柱のサイネージとして実証実験も行われており、街中や公共施設への導入を推奨する自治体も

住田─電子ペーパーは、バックライトを使わない反射型ディスプレイなので、目に優しいというのがまた大きなメリットですね。ですから、美術館や博物館といった薄暗い屋内環境の中のガイドなどにも向いています。実際にエストニアの国立博物館には既に導入されており、展示の雰囲気を壊すことなく、表示が見やすいと好評です。


開発のアイデアが電子ペーパーをアートや洋服に変えた

――アパレルやアーキテクチャなどにも活用されているそうですね。

住田─はい。空間演出やインテリアは、海外にその先行事例があります。液晶よりも薄く、軽量に実装でき、模様や絵を自由に変えられるパネルや壁紙、床面として使うことができます。

電子ペーパーの形と色を変えて組み合わせたアーキテクチャ。壁面、テーブルや床などにも使うことが可能

住田─電子ペーパーは、これまで、紙の置き換えとしての発想しかなかったのですが、紙以外の素材への適用も広がりつつあります。正直なところ、開発当初は、電子ペーパーが、アパレル業界や建築業界などからもご関心をお寄せ頂くことになろうとは想像すらしていなかったことです。
現在では、「腕時計の文字盤やベルトに使いたい」「電子ペーパーで洋服を作ってみたい」「壁紙に活用したい」といった問い合わせ、要望を、幅広い業界からいただいています。

(左)“身に着ける電子ペーパー”。ブルーと白を表示する電子ペーパーの上から、柄を印刷した素材を使用した服
(右)文字盤だけでなく、ベルトの表示も変えられる時計


住田─折り曲げできるフレキシブル電子ペーパーを用いた腕時計は、すでに商品化されています。
印刷を施した電子ペーパーのワンピースは、柄や色がふわっと変化します。展示会では注目度が非常に高く、これを身にまとったモデルを街中で撮影したいという取材依頼を頂き、テレビ番組内で取り上げられたこともありました。
どこか近未来的な雰囲気を醸し出す電子ペーパーは、これまでにないイメージ 作りや演出にはとても魅力的だったのでしょう。

さらに、壁面における活用例としては、サンディエゴ国際空港レンタカーセンターで、アートインスタレーションがあります。

太陽光発電で稼働し、コンピューターで制御。「Ueberall International」というアーティストチームの作品

自由に書き込み、折ったり曲げたりもできるように

――フルカラー化の実現で、活用はさらに広がるでしょうか。

住田─カラーの電子ペーパー「ACeP(Advanced Color ePaper)」についてその技術を大まかにご説明しますと、顔料が入った透明なマイクロカプセルが電極板の間を上下することで、絵や写真が表示されます。4色の顔料シアン、マゼンタ、イエロー、ホワイトを用いて、現在、3万2千色の表示が可能です。
写真やイラストはもちろん、手書き風のチョークアートまでさまざまな表現が可能。斜めからも見やすい


住田─カラー電子ペーパーは、現時点では、デジタルアートやサイネージへの参入を主に検討しています。これまでにお話ししました電子ペーパーならではの特性や利点を生かしたニーズをいかに市場に見出していくかということが今後のカギになりますね。先述の洋服などは、フルカラーを用いれば、よりデザイン性の高いものが作れることでしょう。

斉藤─アート作品との親和性の高さもますます注目されるようになりました。アーティストの方々は、質感や表現力だけではなく、電子ぺーパーのリフレッシングの際の“ジワリ感”や“ゴースティング(残像)”なども面白がってくれる傾向にあるようです(笑)。ポスターとも映像とも違う魅力を表現できるのだと思います。

――今後、電子ペーパーの世界はどう進化していくでしょうか。

斉藤─電子ペーパーはQRコードの表示などにも最適ですから、国内のキャッシュレス化が進むと、活用シーンが広がるでしょう。目に優しいため、中国などでは学習塾で使う教材やノートも電子ペーパーが検討され始めています。日本でも近々、同様の利用ニーズが生じると考えています。

住田─技術的には、今後、カラー化、大型化、フレキシブル化がますます進むことでしょう。
このような期待される技術革新が進展することで、さらに耐久性の高い商品や見開き型電子ブックリーダーといった新しい発想のアプリケーションの創出がより実現可能になるものと考えています。
開発に着手しやすいソリューションなども提供しており、今後も活用のアイデアやバリエーションが一層増えることを期待しています。

技術や表現力の向上とアイデアがマッチして、将来性と市場を広げた電子ペーパー。紙、ディスプレイに次ぐ表示媒体として、存在感はさらに増していきそうです。
サイネージやプロモーションへの活用の際は、人目をひく表現方法や、雰囲気をこわさない設置の仕方、カラーの利用が望ましいかなど、電子ペーパーならではの特性を考慮し、最大限生かす形で使うことがカギとなるでしょう。
Written by: BAE編集部

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