2023-02-09

エンゲージメントを向上させる、「感情」を起点としたコミュニケーション

いまビジネスシーンで注目を集める「感情知性」のスキル
喜怒哀楽など、人間の「感情」に着目した、ユニークなtoB、toCサービスが次々と登場しています。

ビジネスシーンでの1on1に特化したコミュニケーション支援ツール「emochan」は、「感情」を切り口としてお互いの思考や価値観を交換し合う対話を促し、関係の質を高めることを目的にしたサービス。

「感情」起点のコミュニケーションは、toCにおける顧客との関係性構築にも有効だと、株式会社KOUの中村真広さんは言います。その理由について、お話を伺いました。


関係の質を高めるのに必要なのは「議論」ではなく「対話」

――まず「感情」という点に、着目した理由はなんでしょうか。

以前、私自身が成長ベンチャーの中で組織づくりをする中で得たとある気づきがきっかけです。それは、上司や部下など、コミュニケーションにおける「対話」の重要性。会社といえど、結局は人の集まりですから、人と人との関係性で企業活動は生まれてくるものです。それではコミュニケーションがうまくいかないチームにはどんな原因があるのか。よくあるケースが「課題」ありきの話し合いになってしまい、話が噛み合わず、ぶつかり合ってしまうというものです。ディスカッション(議論)ではなく、対話を行うためにはどうすればいいのか。そう考えたときに、自分の感情をその場に出すということが必要なんじゃないかという仮説が生まれてきました。


――お互いの感情を開示することで、対話の質はどのように変わりますか?

例えば新規事業の立ち上げにあたって、ワクワクしているマネージャーと、ビクビクしているメンバーがいたとします。マネージャーからすると、ビクビクしているメンバーの気持ちが見えていないので「なんでお前は頑張れないんだよ」と、その行動や結果を批判するという形になりがちです。でも、「なんでこの人はビクビクしているんだろう」という、感情とその裏側にある価値観に目を向けることができれば、人によって価値観が違うのは当然ですから、批判の対象にはならないはずです。感情を切り口にお互いが見ている「景色」を交換することで、相手に評価を下すのではなく、お互いの理解を深めて、共に思考する、良い関係性になっていくのです。


感情を切り口にして、互いの思考や価値観を共有

――「感情」を切り口にした景色交換、というのは具体的にどういったものでしょうか。

emochanでの対話は 、チャット形式でのガイドのもと1on1の形式で行われます。1on1の進行役はチャットbotが務め、「どのテーマについて話しますか?」「このテーマを選んだ背景はなんですか?」といったemochanの問いかけにお互いが答えていくことで、対話が進んでいきます。

ファリシテーションの画面

また、1on1のテーマを設定する際、お互いにそのテーマに対して抱いている感情を、「ウキウキ」や「ドキドキ」「ニコニコ」といった8つの感情から選ぶという仕組みを取り入れています。これが「感情を切り口にした景色交換」です。感情を開示した後に、あらためて意見交換をする時間が設けられ、話す側と聞く側に分かれて、お互いに自分の考えをシェアします。

感情を選ぶ画面
選択した感情をもとに、自分の考えをチャットでシェアする

――アイコンから感情を選ぶという仕組みが面白いですね。

日本人には感情を表に出すことに、苦手意識のある方が多いと思うんです。本来、日本語は感情を表現するボキャブラリーが豊かなはずなのに、自分の中にその言葉を持っていない。そこで、心理学者のプルチック氏が提唱する人間の8つの基本感情の中から、自分の感情に一番近いものを選ぶという仕組みにすることで、感情を開示しやすいように工夫しました。またtoB向けツールといえど、実際に使うのは企業のマネージャーやその部下だったりするので、親しみやすいチャット形式を採用したり、キャッチーなアイコン、ドキドキなどのオノマトペを使用するなど、toCっぽいUI/UXを意識しています。

――emochanを導入した企業からはどのような反響がありますか?

当初私たちが想定していた成長ベンチャーをはじめ、意外なところでは小規模なプロファームの方々にもemochanを使っていただいているのですが、いずれのお客様からも、1on1の冒頭で感情を開示することで、1on1の対話の広がりや深さが全然違ってくるという感想をいただいています。


「感情知性」という考え方をtoCのビジネスにも応用

―emochanのような、感情を起点としたコミュニケーション支援ツールは、国内外で他にも存在するのでしょうか。

toB向けのサービスとしては、まだ見かけませんが、ビジネスシーンにおいて自分や相手の感情を上手に取り扱うスキル、いわゆる「EI(感情知性)」や「EQ(感情指数)」という分野は、世界的にも非常に高い注目が集まっています。相手の感情を受け止めて寄り添えるか、相手の感情の奥にある価値観への眼差しがあるか、そういったEI、EQのスキルがリーダーにあるかないかで、パフォーマンスがまったく変わってくるということが言われ始めているんですよ。

――なぜ感情知性に注目が集まっているのでしょうか。

背景としては、AIなどが発達して、機械が担う仕事の領域が広がっていることがあるかと思います。人じゃなきゃできないこと(ピープルスキル)はなんだろうと考えたときに、感情で人と人が繋がり合う、そのマネージメントの部分はその当事者、人でないとできないだろうと。

――toCにおいても、この感情を切り口にした仕組みは横展開できそうでしょうか。例えば、最近ではECサイトや、企業のサービスページに、チャットbotが導入されるケースも増えましたよね。

感情を切り口に人と人との関係の質を高めていくという意味では、継続的な関係性を築いていく業態にはすごく活きてくる でしょうね。例えば、保険ですとか、スクール事業ですとか。emochanは、ちょっとドライな言い方をすると、離職率を下げるなど、自社の従業員のLTVを最大化するためのツールとも言えるんですよ。それと同じように、先生と生徒の関係性構築に応用することで、リピート率を高めてLTVを最大化するといった考え方です。

――顧客エンゲージメントを高める手段として活用できそうですね。

そうですね。突飛な話になりますが、この仕組みは恋愛マッチングや婚活にも使えるなと思っているぐらいでして(笑)。どんなシーンであっても、あるテーマに対して自分がどういう気持ちがあって、なぜそう感じるのかということを話し合えば、誰でもみんな仲良くなれるんじゃないか、と私は思っています。

株式会社KOU 代表取締役 中村真広(なかむら・まさひろ)
コロナ禍以降、オンラインとオフラインのハイブリッドな働き方が浸透していっているのと同様、企業と顧客の接点もますますリアルとバーチャルのハイブリッド化が進んでいます。例えば小売であれば、対面だからなしえた接客を、オンラインでどのようになすべきか、お得意様との関係性をどう築いていくか。そう考えたときに、emochanが提案する「感情を切り口とした景色交換」という手法は、大きなヒントになりえるのではないでしょうか。
Written by: BAE編集部

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