2021-02-03

デジタルヒューマンが切り開く、顧客コミュニケーションの新たな可能性

「人間らしさ」が生み出す顧客との信頼関係
近年、バーチャルモデルのimma(イマ)が広告に起用されるなど、デジタルキャラクターの企業活用が進んでいます。そんな中でも注目を集めるのが、「対話+感情表現型 AIアバター」とも称される“デジタルヒューマン”という概念。今回は、デジタルヒューマンの活用状況や今後の可能性について、デジタルヒューマン株式会社の荒尾和宏さんにお話を伺いました。


AIによる双方向コミュニケーションで顧客体験を向上

デジタルヒューマンは一言でいうと、対話と感情表現を行い、コミュニケーションが取れる最先端のAIアバターです。


ビジネスにおいてコミュニケーションの手法も多様になってきましたが、リサーチ企業 Gartner, Inc.は、顧客と企業間における人間同士の1対1のやりとりは、今後10年以内に85%が⼈間以外(チャットボットやAIなど)とのやりとりになると予測しています。

今、私たちの生活の至る所で稼働している印象のあるチャットボットには、ユーザーにとっての不満要素がまだいくつもあります。例えば、機械的で親しみにくい点や生身の人間と話すことができない点。また、電話なら口頭で伝わりますが、チャットボットはキーボードを使わなければならないため、キーボードを使い慣れていない高い年齢層の方からすると不便さを感じます。

調査によれば、人間のコミュニケーションにおいて、チャットボットが司る言葉と文字が伝えることができるのはたったの7%で、残りの38%は声のトーン、55%は顔の表情に依拠することがわかっています。さらに、アメリカの経営学雑誌ハーバード・ビジネス・レビューでは、マーケティングや顧客価値を上げるのに一番効果的な方法は、顧客と感情レベルでつながることだといわれています。


こうした背景から、チャットボットの次なるチャネルとして期待されているのが、デジタルヒューマンです。人型のアバターによるお客様とのコミュニケーションは、スピーディーで効率的であるというだけでなく、感情的なつながりを生み出せるというメリットもあります。これらのメリットを生かしながら、企業と顧客間のやりとりをより満たされたものにし、顧客体験価値を高めていこうという考えの下、開発されました。

——実際に、デジタルヒューマンでどのようなことができるのでしょうか。

デジタルヒューマンは、リアルタイムで目の前の顧客と1対1で話をすることができます。話す内容に関しては、チャットボットと同じように、ある程度設定されている内容やFAQを基にしており、それに対して回答していくようなイメージです。

最近、大手企業の広告に起用されるようなバーチャルモデルが登場していますが、バーチャルモデルはCGとリアルな背景を融合させたものです。あくまでも、写真や動画などのワンショットのデータで、かつ一方的なメディアになります。デジタルヒューマンは、顧客と会話ができる双方向のコミュニケーションを可能にします。

また、デジタルヒューマンは、8つの異なる感情「幸せ、悲しみ、共感、恐怖、驚き、嫌悪感、怒り、好奇心」を表現し、約1,000個のアバターデザインから導入先の企業ごとに適したキャラクターを作成します。人との感情的なつながりを生み出す上で、ヒューマンタッチは非常に重要なものです。「ヒューマンフェイス」を通じて、顧客との信頼を築き、カスタマーエクスペリエンスを向上させられることが大きなメリットだと考えています。


顧客の体験価値を高めるデジタルヒューマン

——リアルな表情と声質で、対話ができるといったデジタルヒューマンは、顧客とのコミュニケーションにどんな効果をもたらすのでしょうか。

チャットボットと比較すると、デジタルヒューマンでは顧客のブランドに対する興味心が4倍、商品を選ぶ時に使った時間が2倍になったことが証明されています。さらに、購入する可能性がある顧客であるホットリード(購入する可能性がある顧客)に関しては、チャットボットの2倍になった上、フォームの完了率も13%向上しました。Eコマース、ECサイトにおいては、成約率は3倍に高まり、単純にチャットボットで何か物を紹介したり、文字だけのページを紹介するよりも圧倒的に顧客が楽しんで買い物をしてくれて、購入率も上がりました。

また、顧客がブランドに対してどのくらい愛着があるかを計るNPS®️指数については、同じブランドでチャットボットが平均10だったのに対し、デジタルヒューマンでは平均51という数値が出ました。89%の顧客が従来のチャットボットよりも対話を楽しんでおり、「価値ある新しい体験」をしたという結果が出ています。

世界初のデジタルヒューマン・メンタルヘルスコーチ ラグビー ニュージーランド代表オールブラックスの生ける伝説 ジョン・カーワン

——こうした結果が得られたのは、生身の人間に近い表情や声のデジタルヒューマンが、顧客に親近感を与えたからでしょうか。

デジタルヒューマンをご覧になられたらわかると思いますが、生身の人間と比べるとやはり少し抵抗がありますよね。ですが、接していくうちにだんだんと愛着が湧き、あたかも一人の存在を感じる様になるようです。顧客がこれを実際に体験したことにより、自然とブランドに対する思い入れや関心が強くなるのだと考えています。

——特に得意な分野や利用シーンについて教えてください。

アドバイザーやブランディング、マーケティング、カスタマーエクスペリエンスなどの幅広い分野、そして金融や小売、ヘルスケアや観光、教育、通信など、多岐にわたる業界での導入が進んでいます。

実際に海外でも日本でも、金融、保険関係の企業や通信キャリアなどが比較的早く導入し始めています。オーストラリア最大の銀行ナショナルオーストラリアバンクのUBANKではカスタマーサポート、ニュージーランド最大の健康保険会社であるSouthern Cross Health Societyはヘルスプランのよくある質問対応、家電量販店のnoel leemingでは店頭販売員として導入。その他にも、コスメアドバイザーやメンタルヘルスアドバイザーなど、さまざまなシーンでデジタルヒューマンが活躍中です。

現状では、健康保険のプランの案内や資料送付など、ルーティンである程度まわせることができる、細かい煩雑な業務をデジタルヒューマンに任せるという所が多いですね。

UBANK社におけるデジタルヒューマンの利用イメージ

また、デジタルヒューマンを利用されたお客様からは、相手が人間の場合、同じことを何度も聞くことに抵抗がある、恥ずかしいという声をよく聞きます。その点、デジタルヒューマンであれば気を使わずに何度も質問できるので、それもこうしたシーンで活躍できる一つの理由かもしれません。


AIが相手の行動を理解することで双方向性はさらに高まる

——コロナ禍において生まれてきた新しいニーズもあるでしょうか。

対面で行っていたことを非接触に置き換えて人と人との接点を減らしていきたいというニーズが増えています。ショッピングモールのインフォメーションカウンターや病院の受付への導入も検討されています。それから、メンタルケア方面での利活用も注目されています。心が不安な中、誰かが話を聞いてくれるというのは大きな意味があることだと思っています。

また、社内のパーソナルアシスタントにできないかという相談も多いです。新入社員が4月からすぐに在宅業務となった会社も多かったですが、経費の申請一つにしてもやり方がわからない。最初は何でも聞いていいというスタンスでやっていたものの、同じ質問が複数人から何度も来たり、質問数が増えると人では対応しきれなくなってくる。そういう時に、アシスタントとしてデジタルヒューマンが必要だというニーズがありますね。


「接触を減らす」「人と人をつなげる」この一見相反する2つのニーズを満たすポテンシャルをデジタルヒューマンは持っています。

——現在需要が高まりつつあるデジタルヒューマンですが、今後、どのような活用が進んでいくことが予測されますか。

例えば今話があがっているのは、24時間365日対応できるマンションの管理人や、会議室予約やスケジュール確認をするオフィスのアシスタント、あとは医療分野でもデジタルヒューマンが活躍するのではないかと考えています。実際にアメリカでは、PTSD患者のサポートワーカーとしてデジタルヒューマンが利用されています。人間により近い心のケアなどに、双方向性のコミュニケーションが可能なデジタルヒューマンが使われていく未来が、一つ想像できます。

小売分野での利用にも注目しています。バーチャルキャラクターによる接客といった事例は既に出てきていますが、デジタルヒューマンによる双方向コミュニケーションによって、顧客の購買体験をさらに一歩進めることも可能でしょう。例えば何が欲しいかわからない顧客に対して、会話の中から本人の年齢や性別、目的や気分などの情報を収集して、要望に応えたり。そこから読み解いたニーズと店舗の在庫とをうまく掛け合わせることで売上につなげることも期待できます。

また、世界的大規模イベントでの外国人向け観光ガイド、遠隔接客というのもトレンドになっていきそうです。今後は、人とデジタルヒューマンがお互いに助け合って活動することができるのではないかと思います。

——さまざまな利用シーンが期待できますが、現状の課題、そしてデジタルヒューマンの今後の可能性を教えてください。

アニメやマンガ文化が浸透している日本では、3Dのリアルなキャラクターに対して違和感や不気味さを感じる人が多いです。また、文化的にロボットに慣れ親しんでいる日本人だからこそ品質へのこだわりが強く、バーチャルヒューマンが話す合成音声の日本語にもより高いレベルが求められています。

一方で、今後の展望という話では、バーチャルヒューマンが人の行動を理解するという方向に技術が向かっています。例えば、会話の内容を機械学習し、対話相手の特性に応じて最適な行動をとるようにしたり、バイタル認証で個人を特定したりといったことができるようになるかもしれません。さまざまな認識技術を実装することで、より人間に近づき、生活のあちこちに溶け込んで、人間とデジタルヒューマンが共存する新しい社会が生まれていくのだと思います。

高度な会話エンジン、リアルなCG、合成音声、顔認証技術など、あらゆる先端技術の結集によって、より“人間らしい”外観と内面を手にいれたAI、デジタルヒューマン。さらに技術が発展し、男性には親しみやすい女性キャラクター、年配者にはゆっくり話すキャラクターなど、ユーザーに応じて性別や話し方を柔軟に変えることができるようになれば、顧客体験価値をより高めていくこともできそうです。デジタルヒューマンは、企業と顧客のエンゲージメントを高める存在として、今後も活躍の場を広げていくことでしょう。
Written by: BAE編集部

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