2018-02-16

“グローバルニッチ”に刺さる日本のコンテンツ

世界にファンを持つ日本の「オタク」文化
ひと昔前まで、日本で「オタク」といえば、アニメやマンガ、ゲームを愛する一部の人たちを指す言葉でした。しかしいまや10代、20代にとって、アニメやマンガ、ゲームは特別なものではありません。むしろ愛すべき存在です。それを象徴するかのように、なりたい職業ランキングに「声優」がランクインすることも増えました。

こうしてサブカルチャーから日本を代表するカルチャーへと成長を遂げた日本のアニメやマンガ、ゲームは現在、世界中に多くのファンを有しています。そんな日本のポップカルチャーを愛する外国人ユーザーに対して、越境EC事業を展開しているのがTokyo Otaku Modeです 。


世界に点在する、日本文化を愛する人々

Tokyo Otaku Mode Inc. CO-Founder/CEO・小高 奈皇光(こだか・なおみつ)さん

――Tokyo Otaku ModeのFacebookページのファン数は2,000万人を超えています。これは世界的に見てもかなり多いのではないでしょうか?

はい。グローバルで比較したデータがあるのですが、Eコマース分野では、アマゾン、iTunesに次いで、世界第3位。ブランド分野で比較しても、ルイ・ヴィトンに次いで、世界第25位です。

誰もが知るアマゾンやiTunesといったグローバルサービスに次ぐファン数をFacebookで集めている理由は、Tokyo Otaku ModeがECサービスでありメディアでもあるからです。当社がFacebookで発信しているのは日本のポップカルチャーですから、そこには写真もあれば、動画もあり、エンタメの要素が多く存在しています。その差がファン数に表れたのでしょう。


ですから、当社の理解としては、「日本のポップカルチャーを愛するグローバルニッチたちが、Tokyo Otaku ModeのFacebookページに集まっている」と捉えています。“グローバルニッチ”と表現したのは、海外の人にとって日本のアニメや漫画といったエンタテインメントは、まだまだ発展途上で拡大の余地があるからです。

同様に、日本のコンテンツを愛するニッチが世界に点在しているんです。
彼らはファッションが好きでパリに憧れるように、東京に憧れを抱いています。そのニーズに、当社のFacebookは多岐にわたる情報を発信することで応え、ファンを増やしてきました。

同社のFacebookページのファン数は現在2,000万人以上(!)。内99パーセントが外国人ユーザーです。Facebook上で海外ユーザーとコミュニケーションを取り、自社ECサイトへ誘導し、日本のポップカルチャー関連グッズを販売しています。


見るアジア人、買うアメリカ人


――そんなTokyo Otaku ModeはFacebookページを軸に据えながら、越境ECをメイン事業としています。創業から約7年が経過したこともあり、ユーザーの特徴なども見えてきたのではないでしょうか?

そうですね。物販をする以上、配送が必要になるため、ユーザーの住所まで知ることができます。現在では地域ごとのユーザーの好みや特徴など、細かい情報を把握できるようになりました。当社のECサイトはIDを作成しないと利用できないのですが、現在その総数は300万を超えています。
グローバルで見ても、アニメやマンガ、ゲームに興味のあるユーザーのアカウントを300万以上持っている会社は珍しいと思います。

――ちなみに、Facebookページのユーザー層とECサイトのユーザー層では違いはありますか?

あります。Facebookページのユーザーの約半数はアジア圏のユーザーで、購入よりも閲覧が中心です。 一方、ECサイトで商品を購入しているのは、北米(アメリカ、カナダ)のユーザーがおよそ半数を占めています。なおECサイトにおいては、アジア圏ユーザーの割合は1割〜2割ほどです。
アジア圏のユーザーは可処分所得が多くないこともその理由のひとつですが、クレジットカードの保有率がまだまだ低く、そもそも決済ができない、というのも大きな要因になっています。

ジェトロ(日本貿易振興機構)が2017年に発表したデータによれば、インド・インドネシア・ベトナム・フィリピンのクレジットカードの保有率は、4パーセント以下です。また、いまや世界第2位の経済大国である中国も、モバイル決済アプリ(電子マネー)の普及は進んでいるものの、実はクレジットカード の保有率は低く、同データ(参考)によれば、16パーセントとなっています。
一方、アメリカやカナダは「クレジット大国」ですから、当然クレジットカードの保有率も高く、越境ECへのハードルも低いわけです。

――文化が違うアジアと北米のユーザーでは、やはり好きなものも違うのでしょうか?

はい。北米ではアメコミのように、エンタメ性の強い、わかりやすいストーリーのものが受けています。作品だと、『週刊少年ジャンプ』系のタイトルが人気だと思います。

一方アジア圏ユーザーの趣向は、日本人と似たようなところがあり、メイドに代表されるような“萌え系”と呼ばれるキャラクターが登場する作品や学園系も比較的受け入れられやすい土壌があるように感じます。そこが一番大きな違いでしょうか。ちなみに香港では『ドラえもん』、中国全体だと『銀魂』なども人気ですね。


“熱狂的な”海外ユーザーのペルソナ


――海外発送の送料(約2,000円前後)を支払ってでも、御社のECサイトでアイテムを購入するユーザーは、“熱狂的な日本ファン”と言えると思います。そんな日本好きな外国人ユーザーの特徴を教えてください。


これまでのデータから見えてきたペルソナで言いますと、1つ目の像は男性で30代、北米在住、主にフィギュアを購入しています。
2つ目の像は女性で20〜30代、同じく北米在住。アニメも好きですが、日本文化そのものが好きで、“ゆるキャラ”と呼ばれるかわいい系のぬいぐるみやJファッショングッズも買います。

キャラクターでは、任天堂の「ゼルダの伝説」のリンクが人気です。これはゲームから火が付いたもので、海外にもコスプレイヤーがいるくらいです。それと「Fateシリーズ」というPCゲームからアニメになり、世界中で大ヒットしている作品は、男女問わず、関連商材(フィギュア、ぬいぐるみ、Tシャツなど)が非常に人気です。


――そうしたデータから、日本企業が海外に発信をする際に、意識すべきことは何だと思いますか?


日本には、世界にファンを持つアニメやマンガといったコンテンツがあります。企業(または商品)と作品がコラボレーションすれば、そこにストーリーが生まれ、外国人ユーザーも親しみやすいのではないでしょうか。

日本の強みは、コンテンツの豊富さにあります。アニメやマンガには、スポ根もあれば、恋愛もありますし、アドベンチャーもある。だから世界中にファンがいるわけです。
発信したい国や地域で人気のコンテンツとコラボレーションするという戦略は、認知拡大を狙う上では、非常に有効だと思います。

またアニメは、「海外では子どもが見るもの」というイメージがあり、多くの作品が子ども向けで、成長するに従い自然とアニメから卒業してしまいます。つまり、「アニメに飽きたから、好きじゃなくなった」という理由ではないのです。

一方で、日本には大人向けの作品や、子どもから大 グローバルニッチに刺さる日本のコンテンツ 人まで楽しめる作品などコンテンツが豊富ですから、そういった作品に出会った海外のユーザーは、大人になっても引き続きアニメを楽しんでいるんです。

現在では、NetflixやAmazon Primeなどが日本のアニメ作品を配信し、海外ユーザーが日本のアニメに触れる機会も増えてきています。これまで以上に日本のアニメが海外で注目され、人気になる可能性は高いと考えています。

――今後、御社がコンテンツ作りに参入する可能性もあるのでしょうか?

はい。今後は商品化と販売/流通だけでなく、「コンテンツ作り」まで視野に入れています。当社発の人気作品、人気キャラクターを生み出すことができれば、垂直統合型のビジネスモデルを実現することができますし、日本企業の海外発信のサポートをより強固なものにすることが可能になります。現在はそこに向けて、少しずつ準備を進めているところです。

そしてその夢と並行して、今後も変わらず、日本のコンテンツの魅力を、世界中にお届けしていきたいと考えています。



グローバルニッチに刺さる日本のコンテンツ

世界に点在する、日本文化を好む“グローバルニッチ”たち。彼らの心をつかむ上で、日本のコンテンツは大きな効果を発揮します。国ごとに人気の作品があり、ファンがいる。その土壌を活用して海外に発信することは、有効な選択肢のひとつと言えそうです。
Written by: BAE編集部

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