2020-07-03

企業カンファレンスや展示会が増加。ビジネスに浸透するバーチャル空間の有用性

ニューノーマル時代を知る VR業界 VR空間編
これまでのビジネスや生活様式を変える新常識「ニューノーマル時代」の業界展望をお伝えするこの企画。今回はVR空間編です。
外出自粛やリモートワークの推進などを背景に、企業セミナーの実施やバーチャル・オフィスの設置といった、VR空間(仮想空間)のビジネス面での活用が増加しています。
リアルに負けない現場の空気感やコミュニケーションを実現でき、移動や準備をリアルより楽にするメリット等が買われているVR空間。企業が活用する際のポイントは、どこにあるのでしょうか。また、VR空間自体の今後の可能性はどのように広がっていくでしょうか。
スマホ、PC、VR機器を使ってバーチャル上でのイベントや交流を可能にするサービス「cluster(クラスター)」の開発・運営を行う、加藤さんに伺いました。


セミナーや展示会へのVRニーズが急上昇中

——新型コロナウイルス感染症によるイベント自粛が続き、VR空間でのイベントやセミナーの実施が増えています。バーチャルSNSである「cluster」への影響はいかがでしょうか。

影響は明らかで、問い合わせ件数は10倍以上に増えました。イベントをやればやるほど増えていくという感じです。リアルで人が集まれない状況下なので、無観客で開催して動画で配信するか、バーチャル上で開催するかという二択になるようです。clusterがVRやPCだけでなく、ちょうどスマホ対応をリリースしたことも大きいです。

——どのようなイベントのニーズが増えているのでしょうか。

エンタメ系のコンサート等のほか、会議、カンファレンス、展示会、セミナーなどの、ビジネスユースが急増しています。特にニーズの増えたオンラインイベントやカンファレンスに対応するため、4月にはパッケージ版もリリースしました。

「clusterスターターパッケージ」は会場、演出、スクリーン、音響等の一式を提供。数十人規模のセミナーや勉強会などであれば即日で準備が可能だという

——リモートワークが推進され、音声や動画による簡易なリモートツールを使ったセミナー等も増えています。VR空間のほうを活用するメリットはどのような点にあるでしょうか。

人がたくさん集まったときに発生するコミュニケーションの複雑性に対応するには、VRが適していると思います。私たちも社員約40人でリモートツール上の会議を行ったことが何度もありますが、全員の顔が一画面に表示されず、反応も見えにくいことにフラストレーションが溜まりました。
VRなら全員がアバターで表示されますし、拍手やイイネをしたりチャットにコメントをしたりと、話者に対するリアクションを返すことができ、インタラクティブな会議が可能になります。話者のほうも参加者の反応や会場の空気を読めて話しやすくなりますね。
少人数だとリモートツールの方が便利ですが、人数が増せば増すほど複雑性も増しますから、VRのメリットが顕著になるようです。

大人数がVR空間に集合でき、インタラクティブな交流が可能。モニターの掲示や動画サイトへの中継も行える。参加者はVRヘッドマウントディスプレイがなくてもPCやスマホアプリからも入れる

——2020年の3月にはcluster上で大手通信会社による大規模なカンファレンスも開催されましたね。

はい。代表取締役社長がリアルな姿のアバターで登壇されるなど、企業としての格を守った演出が採用され、既存のバーチャルイベントのイメージをアップデートするイベントとなりました。予想の1000人を大幅に上回る約2万人が視聴され、コストも例年の半分に抑えられたそうです。
イベントの長さを視聴しやすい尺にする、アバター等をスマホアプリでも表示しやすい解像度にするといった工夫も功を奏して、画面が固まるといったトラブルもなく、好評な結果を得られました。

クラスター株式会社 代表取締役社長 加藤直人(かとう・なおと)さん


現実特有のコストから解放され、体験が生きる

——セミナー等のほか、ビジネスユースとしてはどのようなVRの活用が増えているでしょうか。

オープン、クローズドの両面で、展示会や商談会が増えています。車などのCADデータから3Dモデルを用意して、参加者に見てもらうという使い方ですね。乗車時の再現や、車を浮かせるなど、現実的に不可能な演出も可能です。

アンケートによる満足度でも、非常に良い評価をいただいています。
これはVRイベントに共通のメリットですが、設営、搬入出、移動、接客などにかかるコストやリソースは激減します。3Dモデルや演出の準備は必要ですが、行列の誘導といった現実特有の面倒くささがありません。参加者側も、どこからでも気軽に参加でき、移動などの面でぐんと楽になります。

——技術やコンテンツに関わる展示が向いているでしょうか。

実はそうでもなくて、業種の新旧を問わず活用されています。VRになじみのない業種、例えば不動産や教育などの関連業界でも、打ち合わせをcluster上で実施すると、「なるほどこういう感じか」「思ったよりずっといいね」と理解を示してくれますね。
向き不向きで言えば、映像や3Dモデルにしにくいような抽象度の高いテーマには対応しにくく、ビジュアルが重要なジャンルとは特に相性がいいと思います。

また、ライブイベントのスポンサードと、演出の組み合わせなども有効です。例えば、カップ焼きそばのCMにも出演している人気VTuberの輝夜 月(かぐや・るな)さんによる数千人規模のライブがcluster上で開催された際に、スポンサーの食品会社に関連するユニークなエフェクトが話題になりました。拍手や笑顔といったリアクションだけではなく、参加者が会場にカップ焼きそばの3Dモデルを飛ばせる仕掛けを展開したんです。
他にも、会場前のエントランスでCM動画を流したり、3Dモデルの展示などを行ったところ、ファンが3Dの焼きそばと撮影した画像がSNSに多数拡散されました。

人気の理由は、VRには2Dのネット上にはない「体験が伴った広告」が可能だという点です。情報を渡すだけではなく、参加して、その中で遊んで、ブランドの表現やブランドの価値に触れてもらうことができます。
2020年の3月に発表された「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」などもそれ自体がキャンペーンの場になっており、中でライブやイベントが開催されました。今年の夏以降、この他にもclusterを使った大規模なイベントやキャンペーンが予定されています。

動画配信サイト等とのコラボで初日に5万人を動員した“バーチャル渋谷” 画像:KDDI株式会社ニュースリリースより


ユーザー自身が生み出すコンテンツも拡大。経済が活性化

——コロナの影響と前後して、clusterのユーザー層やその行動に変化はありましたか。

20代、30代でITへのリテラシーが高い層が多かったのですが、2020年の3月にスマホにも対応して以降、それ以外も急増したという感じです。
面白い傾向としては、年齢層の低い小中学生のユーザーが増えていることでしょうか。友だち同士で会話したり、cluster内のゲームで一緒に遊んだりしているようです。

——ユーザーが自主的に楽しむ動きも増えているのでしょうか。

今年の3月から、cluster内にユーザー自身が常設のVRワールドを設置できるようになり、C to Cの活用が増えています。小規模イベントやミニゲーム、ギフト機能を使ったチャリティーライブなど、ユーザー同士がVR空間で物やサービスを提供しあう形の活動も広がっています。

——VRの中での経済活動は順調に拡大していくでしょうか。

はい。C to Cでも、B to Cでも、「VRの中で買い物もできるようにして欲しい」というリクエストは非常に多いので、夏に向けて物販機能も実装していきます。
VRゲームなどにもミリオンを超えるヒット作が誕生しており、市場全体が活性化しつつあると思います。

cluster上でも行われた同人誌即売会「ComicVket0」。作者がユーザーと交流し、作品を紹介するなど、リアルなコミケと同じ体験が可能 画像:株式会社HIKKYリリースより


ネット上のビジネスに、フィジカルを付加する時代

——今年の夏以降、VR業界はどう変わっていくでしょうか。

音楽ライブなどの需要は、さらに増えると思います。4月に「Fortnite」内でトラヴィス・スコットがデジタルアバターの姿でライブを行って注目されましたが、clusterでも、今後VTuberはもちろんリアルなアーティストやミュージシャンのライブへの取り組みを増やしますので、ぜひ楽しみにしていてください。

2020年4月にオンラインゲーム内で開催された米国の人気ラッパー トラヴィス・スコットによるライブは2000万人以上の観客を集めた

今なら、バーチャルイベントはメディアやSNSで話題になりやすいという利点もあります。ただ、これは黎明期特有の現象で、もう少ししたらバーチャル上のイベントは誰にとっても当たり前のものになっていくでしょう。体験とコミュニケーションのためにバーチャル空間で人間が長く過ごすことが当たり前になり、インターネットと同様、全人類がバーチャルな体験を日常的に享受するようになると思います。

そのためにVR業界が今やっていることは、「集まるコストの高い体験をさらにバーチャル空間に乗せていく」という試みです。10年先にそうなると分かっていることですが、「安全に集まろう・交流しよう」というソーシャル・ディスタンシングという課題によって、より加速していることを感じています。

VR以外のテクノロジーの進化や、副業やリモートワークを始めとする多様な働き方の浸透などによって、“人間の仕事”そのものの概念やスタイルも大きく変化してきました。
並行して、遊んでいること自体が生業になり、今人間が「仕事をしている」と思いながらやっていることは自動化される、といったパラダイムの転換が進むと私は思うのですが、人を楽しませたり、繋いだりするためのエンタメやコミュニケーションは最後まで残ります。そのために、VRは重要な役割を担うと思っています。

今後はVTuberだけでなく、実在人物のデジタルアバターによるライブも増えていくという。5Gによるイベント規模や演出の拡大にも期待が高まる

——そのような潮流の中で、企業側が心掛けるべきことはなんでしょうか。

よく言われることですが、物理的なアセットをベースに考えるビジネスから、今後はインターネットや仮想空間でのビジネスをベースに、物理アセットを紐づけていく方法を考えたほうがいいと思います。
新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、多くのビジネスが「フィジカルとは離れたところでビジネスを構築して、それをリアルにどう乗せていくか」という発想に変えざるを得なくなったという影響もあります。

とは言え、フィジカルがなくなるわけではありません。例えば、私は電子書籍が大好きですが、紙の本の味わいも理解しています。ただ本質的な価値を持っているのは中身や、書いた人の想いの部分。書店もECも接触点であり、売るためには中身を伝えることやマーケティングが重要だというところに、目を向けるべき時代だと思います。ある種の原点回帰というか、コンテンツの価値とは何かということに目がいくようになるんだろうなと。

課題としては、技術の発展よりも、人の考え方や習慣の方が変わるのが遅いことかなと感じています。頭を切り替えることが難しい業界などもあるかもしれませんが、これからは慣れていかなければいけません。そのためにも、ぜひclusterを積極的に体験・活用してもらえると嬉しいですね。

リモートワークの普及を背景に、企業セミナーや展示会など、ビジネス面での活用も広がっているVR世界。演出やPRの手法も増えており、VR上でのイベントや施策は今後さらに拡大しそうです。リアルで培った経験や固定観念にとらわれず、仮想空間上でユーザーにどのような価値を手渡せるかが、喜ばれるVR体験を生むカギとなりそうです。

Written by: BAE編集部

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