2022-11-09

3年ぶりのリアル開催に沸いた「CEATEC 2022」オフライン会場レポート

注目のワードは「メタバース」と「サステナブル社会」
国内最大級のIT見本市「CEATEC 2022」。10月18日(火)~同月21日(金)、幕張メッセにて3年ぶりのリアル会場での開催となり、562の企業・団体が出展しました(オンラインは2022年10月1日~同月31日の開催)。
特に盛り上がっていたのが、ビジネスやエンタメへのメタバース活用、サステナブルな暮らしの実現を目指すサービスやテクノロジーに関連する展示です。注目された人気のトピックを中心に、会場の様子をレポートします。


会議にも店舗にも。メタバースがビジネスに続々進出

会期中、最も注目されたのが、仮想空間「メタバース」関連の出展を集めた「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」のスペース。アバター生成などの体験を希望する来場者が集い、入場までに30分以上の待ち時間が生じた日も

Meta(メタ)、NTTドコモ、ソフトバンクを始め、国内外の20社以上がメタバース関連のサービスを披露。すでにVRファンを中心に定着してきた仮想空間内でのゲームやエンタメ関連の展示だけではなく、会議、EC、ショールームなどに関する展示も目立ち、実用面への活用も着々と進んでいることがわかりました。

凸版印刷は企業向けショールームサービス「MiraVerse®(ミラバース)ショールーム」、バーチャルモールアプリ「メタパ®」などを公開。現実空間を正確に取り込んだ臨場感の高いメタバース。フォトリアルな表現力で、モビリティの内部なども細部まで再現
凸版印刷の3Dアバター自動生成サービス「MetaClone(メタクローン) ®アバター」を体験。その場で撮影された写真から約1分で、顔がそっくりの3Dモデルデータが生成される
CyberMetaverse Productions(サイバーメタバースプロダクション)によるVR店舗のモデル。バーチャル試着や自在な空間演出を通じて商品やブランドの世界観を表現できる
エンタメへのXR活用もさらに進化しており、各社のアイデアが光るユニークなサービスが続々登場しています。

メタが開発するAR機能。風景写真やセルフィーをARでデコり、Instagramにポストできる。写真左と中央、アプリを通じてリアル空間の上に浮き上がる3Dオブジェクト。右は記者の顔写真の上に3Dオブジェクトが載ったもの。SNSも“ARで盛る”のが当たり前になりそう
NTT コノキューはARグラスをかけるだけで、目の前の街の風景に、スポット名、紹介文、ルート案内などの情報を重ねて映し出す「AR観光マップ」などを開発中。スマホでの検索や地図アプリを使う必要がなくなり、ハンズフリーでの観光が可能になる
バスキュールとJAXAの共同ブース。国際宇宙ステーション(ISS)からのリアルタイム映像を再現したメタバース空間を浮遊したり、ボリュメトリックビデオ(リアルタイム3D映像)を利用したアーティストのライブパフォーマンスに参加できるといった体験を提供

POKET RD開発による「i avatar」(アイ アバター)。3Dアバター生成技術にもバリエーションが続々登場。写真から完全自動で生成できるだけでなく、絵柄、等身、衣装、メイクなどのカスタマイズも可能。生成したアバターのデータは動画配信や、各メタバースプラットフォーム内で活用できる

メタバースについては「リッチな仮想空間を新設しても、まだ人が集まりにくい」といった課題も指摘されていますが、会場では老若男女問わず多くの人々が高い関心を示し、時間を割いてアバター生成、メタバース空間の散策、ライブやスポーツを観覧する体験などに興じていました。

メタバース内でのバラエティ豊かな体験を介したショッピングやエンタメは、今後さらに多くのユーザーを魅了しそうです。

HMDより気軽にVR世界を楽しめるARグラスなど、デバイスも進化している。メタバースがより多くの人の日常に浸透するには、スマホやスマートグラスから仮想空間への簡易なアクセスを可能にすることはもちろん、快適さと没入感のバランスなどが求められる。画像は薄型軽量のスマートグラス「Nreal Air(エヌリアル エア)」


大小の視点から環境問題を解決に導く

近年の大幅な気候変動やエネルギー問題等の喫緊の課題を踏まえ、それらに対応するソリューションやテクノロジー、サステナブルな社会の実現に向けたサービスに関連する展示も目立ちました。
脱炭素やグリーンエコノミーに積極的に取り組もうとする各企業の姿勢が見てとれます。
環境貢献をテーマにしたSONYのブース。再生素材の開発に意欲的。自社のパッケージやオーディオ機器のフレームなどの再生素材化を進める。掲げられたロゴや展示用の什器にもオリジナルのリサイクルペーパーを使用
SONYブースの展示の一部。左はSUVタイプの試作車「VISION-S 02」。右は大型LEDディスプレイとデジタルシネマカメラ技術によって、実際のロケーション撮影のような映像制作を実現するバーチャルプロダクションシステム
CEATEC 2022の全ての展示の中から、学術的・技術的な観点や将来性などの視点でイノベーション性が優れていると評価されたものが選出される「CEATEC AWARD 2022」。
こちらでも、モビリティ分野の脱炭素化に貢献する超軽量小型高出力超電動モーター、電力等を自力でまかなうオフグリッド住宅に関連するソリューションなど、エネルギーに関わるものが数多く受賞を果たしています。
東芝エネルギーシステムズによる超電導モーターの実物模型。超軽量化と高い出力を同時に実現。中小型の旅客機用、船舶、大型トラック等のエンジンを代替でき、CO2を排出させない。大型モビリティの脱炭素化への貢献が期待される。「CEATEC AWARD 2022」トータルソリューション部門グランプリを受賞
※ 画像はCEATEC 2022公式サイトより

北良、WOTA、MUSVIの共同出展による、電力や水を自給自足するシステムを集約した自律式居住ユニット「WHOLE EARTH CUBE」のブース。リビングスペースのほかシャワー、トイレ、キッチンなどを備える。インフラのない場所での生活や災害対策のほか、住宅への応用が進められている。「CEATEC AWARD 2022」パートナーズ部門グランプリを受賞
※ 画像左は公式リリースより

「WHOLE EARTH CUBE」では写真左のような管理画面でエネルギー残量を見える化(画面は開発中のイメージ)。また、どこにいても“繋がり”をサポートできるよう、ユニット内に大型液晶パネルを通じた遠隔コミュニケーションシステムも導入されている。観光、イベント、移動式店舗などへの活用もできそうだ
「CEATEC AWARD 2022」経済産業大臣賞を受賞した、シャープの屋内光発電デバイス「LC-LH」を用いたディスプレイ。一般的な太陽電池の約2倍の発電効率で、小さな面積でも高い電力を得られる。センサー、バッテリー、リモコンなどへの活用が期待される
E Ink(イーインク)ブース。電子ペーパーは省電力や紙製品の代替を通じて脱炭素に貢献するソリューションとして期待され、サイネージや棚札などへの活用が進んでいる。カラー化によって表現力も向上。赤と黄色のモーションで表示が目立つ電子棚札が人気

CEATECが開催意義として掲げる重要なテーマが、経済発展と社会課題の解決を両立する「Society 5.0」の推進です。
環境やエネルギー問題においても、Society 5.0の実現に向けて大小様々なテクノロジーは着実に歩を進めているようです。

「CEATEC AWARD 2022」受賞展示物の一覧パネル


次世代のライフスタイルを支えるテクノロジー

CEATECの花形といえば、SF映画のワンシーンを現実のものとするような、未来を感じるテクノロジーです。

今回も、コロナ禍を経て加速した遠隔技術、非接触技術などを始め、次世代の生活を支えるであろうソリューションやサービスが、メディアやSNSで大きく取り上げられました。

スマートホーム、ヘルステックなどに関わる技術も成長し、社会実装へと進んでいます。会場では多くのユースケースを閲覧でき、人々の暮らしの中で活かされていく様子が具体的にイメージできました。

「CEATEC AWARD 2022」トータルソリューション部門準グランプリを受賞した京セラの「高精細 空中ディスプレイ」。リアルな3D映像に指先を近づけると、ジェスチャー連携によって360度自在に動かせる。高精細を活かした美術や医療への応用が期待される

アルプスアルパインによる「ステルス空中インターフェース」。空中表示と入力を可能にする。必要のない時はインターフェースを消した状態にすることもでき、壁や机などにさりげなく埋め込める。「CEATEC AWARD 2022」キーテクノロジー部門準グランプリを受賞
三菱電機による進化型遠隔操作サービスプラットフォーム「VISUAL HAPTICS(ビジュアル ハプティクス)」の体験ブース。ロボットの指先にどのくらいの力がかかっているかが、画面上の「色の濃淡」で表示される。オペレーターはデバイスの装着などから解放され、同一画面を通じた直感的な操作が可能になる
物流のラストワンマイル問題等に貢献する、三菱電機の「搬送用ロボット(AMR)サービス」。自動運転の技術が応用されており、リゾート地等で乗車用や移動ゴミ箱として活躍する。暮らしに馴染みやすいスタイリッシュなルックス。側面にサイネージを設置したタイプなどもある
情報通信研究機構のブースに展示された、警備、掃除、宅配、接客等へのロボットの普及を想定した、データ送信にまつわる新技術。警備ロボットが巡回で撮影した見回りデータを、各ロボット間のリレーで送信するといった使い方を想定。オフィス内であれば5Gよりも素早く大容量データを移動できるという
会話の活性度を見える化する、ハイラブルのソリューション「Bamiel(バミエル)」。360度方向の音を拾うタマゴ型のデバイスで周辺の会話を計測。話が盛り上がっているスポットをヒートマップで示す。ディスカッションの改善や、店舗やイベントでの適切な人員配置などに活用できる
建材や家電を一括でコントロールするLIXILのスマートホームシステム。エアコンや照明などのオンオフはもちろん、外出先からスマホで施錠を確認したり、シャッターを開閉したりできる。管理アプリの使いやすさ・見やすさにこだわっているという
※ 画像左は公式サイトより
シャープの非接触バイタルセンシングソリューション。「カメラ+赤外線センサー」に顔を向けるだけで、脈拍数、血圧、呼吸数、体表面温度が測定できる。PCやスマートミラーに内蔵することを想定。測定精度をさらに向上させ、医療機器として使用されるレベルを目指すという
※ 写真左は公式サイトより
1×1.75×0.35(ミリ)まで、超小型化されたシャープのバイタルセンサー。脈拍数や血中酸素飽和濃度、血圧などを計測。指輪、メガネ、イヤホンなどに搭載すれば、ごくわずかな接触面からヘルスケア情報を収集することが可能になる
※ 画像右の赤丸は編集部が付記
口に指を差し込むと甘噛みするユカイ工学のロボット「甘噛みハムハム」。価格は税込みで4,950円。とぼけた味わいによる独特の癒しを提供する
革新的なアップデートから、地味にスゴい技術、少し未来の楽しいアイデアまで。CEATEC 2022のリアル会場には昨年までのオンラインのみの開催からは得にくかった体験による実感や意外な発見、そして熱気がありました。

100を超えるカンファレンスが場所と時間を選ばずにオンデマンド視聴できるようになるなど、オンライン併設のメリットも実感できるようになっています。将来的には、会場全体が大胆にメタバース化する――などの可能性もあるのかもしれません。

国内のテクノロジーの進化の節目を綴るCEATEC。今後のイベントそのもののアップデートにも期待がかかります。
Written by: BAE編集部

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