2018-07-06

昭和歌謡が若者や外国人に人気!?アナログレコードブームの背景

「デジタル化」により音楽は時代や国境を超えていく
配信サービスの急増など、これまで以上に音楽の楽しみ方は多様化しています。アナログレコードもその一つ。かつてレコードを楽しんでいた層だけでなく、若者にもその文化が広がっています。その背景を、レコード専門店「ユニオンレコード」の方々に伺いました。


日本と海外で同時に盛り上がりをみせている

Spotify、Apple Musicなど、音楽系のサブスクリプションサービスが生活者の間に浸透してきています。従来のようにCDを購入するのみならず、定額制サービスや、動画配信サービス、個性的なフェスなど、音楽との接し方が多様化する中で、盛り上がっているのが「アナログレコード」。


盛り上がりを象徴するかのように、2018年4月20日に新宿にオープンしたのが、首都圏を中心にレコードショップを展開する株式会社ディスクユニオンによる、アナログレコードのみを扱う専門店「ユニオンレコード新宿」。ジャンルごとに分かれた全4フロアを有し、全国でも有数の規模を誇っています。

ユニオンレコード新宿店長 大島靖広さん(左)、ディスクユニオン店舗統括 新宿エリアマネージャー 昆祐記さん(右)

「最近のレコード人気は異常なほどの盛り上がりを見せています。しかも、3年ほど前から継続しているのも過去の盛り上がりと違う点です。若者を中心とした人気はこれまでも何度かありましたが、あくまで一部の狭い分野での流行でした。ところが今回の盛り上がりは日本の若者やレコード世代のみならず、国をまたぎ世界的なムーブメントとなっています」(大島さん)

「90年代のブームはヒップホップやクラブカルチャーが中心で、しかもかつてレコードが主流だった時代からの地続き的な流れもあった上でのブームでした。そのような流れも途切れた2000年代以降の中では、今回の盛り上がりは継続的ですし、外国からのお客様も以前はアメリカやイギリスの方が主流だったのですが、最近ではアジアからいらっしゃる方も増え、世界的な盛り上がりを実感しています。しかも、外国のお客様も明らかにレコード世代じゃない若い人も多いんですよ」(昆さん)

お二人の話によると、現在のアナログレコード再流行の兆しが見え始めたのは約10年前から。古いレコードが売れるだけでなく、人気アーティストが新作を、ダウンロードコードや同内容のCDを付属したレコードとして販売するといった動きを見せるようになり、取り扱い数の増加とともに、売り上げも増えているといいます。

「レコードってCDと比べるとプレス数が少ないんです。レコード=限定生産という印象が強いせいか、SNSで告知しただけで予約が埋まってすぐ売り切れてしまう商品も増えていますね」(昆さん)

「レコードの“プレミア感”に心が煽られるんでしょうね」(大島さん)


世代や国境を超えて支持される歌謡曲とアナログレコード


従来のアナログレコードファンのみならず、昔レコードを聴いていた世代の方がふらっと訪れるというユニオンレコード。その中に混じって、海外からもレコードを求めてやってくるお客さんも数多く見受けられるそうです。

「海外の方に関しては、日本語が話せる方に話を聞いてみますと、どうやら海外ではこんなに密集してレコードを販売している店はないようです。海外では、90年代のブームが去った後、大型レコード店の廃業も続いたようで、そもそもCDやレコードを売る実店舗自体も減っていますしね。

また、最近海外で細野晴臣さん、坂本龍一さん、山下達郎さんなどの日本の古いポップスが流行しているようで、実際かなりの問い合わせが届いています。当然、リアルタイムでは聴いていないはずなのですが、動画サイトなどの影響もあって情報が拡散しています」(大島さん)

「実は日本の若い子たちも、キャンディーズのシングルとか、昔の歌番組で流れていたようなレコードを買っていったりしています。ここ最近、レコードと並行して『昭和歌謡再評価』というのもありまして、弊社にも『ディスクユニオン 昭和歌謡館』というお店があるのですが、明らかにその世代ではない方が多くいらっしゃいます」(昆さん)

インターネットによって、知る由もなかった異国の音楽や、親世代の歌謡曲にも誰もが手軽に出合えるようになりました。それによって、時代を超えて良質なコンテンツ(日本の名曲)が支持される状況が生まれています。そういったデジタル環境が世界的な盛り上がりを支えているのではないでしょうか。

また、情報があふれる時代だからこそ「探し出す」魅力も増しているように思います。かつてレコードで販売されていたような楽曲は、それだけで特別感が高まります。周りの友達が知らない名曲を探し当てた。「自分だけ」という特別感が味わえるのもレコードの魅力かもしれません。

さらに、若者たちがレコードに惹かれるのは、フィジカルな部分の魅力も大きいと大島さんは指摘します。

初めて手にしたレコードの存在感が忘れられないと魅力を語る大島さん

「レコードファンやコレクターは、ジャケットが綺麗かとか、帯が付いているかとか商品の状態を気にすることが多いのですが、若い人たちはそのようなコンディションは関係なく、自分が見たことのある有名なジャケットを手に取る傾向があります。特に7インチと呼ばれるようなひとまわり小さいシングル盤は、価格が安いというだけでなく、コンパクトで可愛いというイメージがあるのか、よく買われていきます」(大島さん)

「レコードの魅力としてよく言われるのは、CDと比べた時のジャケットの大きさ、手にした時のインパクト。そういったフィジカルな部分です。特にデジタルで音楽に親しんでいる若者たちにはそれが新鮮で、かっこいいな、オシャレだな、家に飾りたいなと、そんな動機で手に取って、せっかくなら音も聴いてみたいなと再生機器も買っていく。当店でもレコードプレイヤーについて質問されることが多いですし、オールインワンタイプのプレイヤーも増えてきています」(昆さん)

ユニオンレコードでは、レコード盤と併せて、プレイヤーも販売している

「お店をオープンする時に、採用で若い人の面接をしたのですが、ちょっと興味のある曲や、話題になっているアーティストは配信サービスで聴きつつ、好きなアーティストになるとアナログ盤を2枚持っているなんて子もいました。よく若い人はモノを持たないといわれますが、厳選した上でちゃんとモノとして持っておきたいという感じはあるみたいです」(大島さん)


手間すら愛おしい、自分だけの贅沢時間

あらためて、アナログレコードの魅力とは何なのでしょうか。

人それぞれの楽しみ方があるのがレコードの魅力と語る昆さん

「言ってしまえばレコードを聴くのは、とても面倒な作業です。大きなジャケットから盤を出して、ターンテーブルに置いて、針を置いて、針を戻してとか。レコードを聴いている時間は他の作業ができないので、音楽だけに集中している贅沢な時間とも言えます。膨大な商品棚の中から自分の好きな作品を見つける面白みとか、そんな“手間”を含めて、体験として楽しんでいる感覚がありますね。

また、数年前から、フェスなどライブに足を運ぶ人が増えています。SNSでアーティストとリスナーの距離感が近くなっていることもあり、当社でも5年前に多目的イベントスペースとして、dues新宿をオープンさせました。アナログレコードが支持されるのも、世の中の“体験を重視する”という流れに連動したものかもしれません」(昆さん)
アナログレコードブームの背景にあるのは、“デジタル環境”によって音楽コンテンツが世代や国境を超えて人々に届くようになったという状況。普段は配信サービスでデジタルの楽曲を楽しみながら、特別なアルバムはアナログで買うなど、楽しみ方は変化していますが、音楽に限らず良質なコンテンツの価値は時代や国が違えど、変わらず人の心に響くようです。
Written by: BAE編集部

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