2020-10-14

顧客体験を一新する店舗DX。単なるデジタル化に留まらない“+α”の視点が成功のカギ

来店力をアップする店舗のメディア展開とは
社会全体で進むDX(デジタルトランスフォーメーション)。新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、店舗におけるDXに対するニーズも急速に拡大しています。しかし、どこから手を付けるべきか、またコストとのバランスなど、悩みどころが多いのも事実でしょう。自動精算機やパーソナル・オーダーシステムを手掛けるアルメックスの青木さんに、DX導入の最新事例や効果、考え方のポイントなどを伺いました。


DXとは“単なるデジタル化”に留まらないイノベーション

——DXの導入が社会全体のテーマとして注目されています。飲食店を始めとする店舗にもその波が来ていますね。

飲食業界のデジタル化は、20年ほど前からじわじわと進んできました。主に効率化のため、大手飲食チェーンを中心に、タッチ式のオーダー端末や電子マネーでの会計が導入されてきたのです。

しかし、昨今のDXには、効率化のみに留まらない +α が求められています。飲食店舗の業態やサイズ、抱える課題の本質は千差万別です。オーダーや会計の手間を一律で同じシステムに置き換えるのではなく、店ごとの課題を見据えて、ITの導入によって効率化できる部分は効率化して、同時に +α の利益やメリットにしっかり繋げていく。そういった目線が要になっています。

——店舗が抱える課題感や +α を得るためのポイントなどを、どのように抽出すべきでしょうか。

私たちの場合は、まず何よりも先に、スタッフ全員が客として実際に店舗を利用して、現場のリアリティをつかみにいきます。最新のシステムでも機械でも、お客様や働く人にとって使いにくくては意味がありません。

また、独自に設けた測定項目に添って、回転率や客単価、フードロスの数、人時売上高などを評価します。エンドユーザーやスタッフの目線とデータの“見える化”の両側から、課題の棚卸を行うわけです。

その上で、IT化することで働く人が楽になる部分はどこか、費用対効果や +α が確実に表れる部分はどこかといったことを見極めて、例えば自動精算機は入れるが調理ロボットは入れない、というようにDX化の必要・不必要をセレクトしていきます。後述しますが、システム導入後のUIの検証なども細かく行います。

——新型コロナウイルス感染症の拡大による影響は、店舗の課題解決にどう影響しているでしょうか。

今までは、テーブルトップのオーダー端末などは「メリットも大きいが、お客様に手間をかけさせる機会も増えるのでは」とやや敬遠される向きもありました。しかし、今は感染症予防の面から社会的に非接触が推奨され、お客様の側もより安全・安心なオーダーや会計の方法を望まれていますから、対応するシステムの価値がポジティブに受け入れられるようになっています。
また、「単なるコストダウンではこの時流を乗り切れない」というシリアス感も伴って、リテール全体のDX導入のスピードは加速しています。


店舗とユーザーの両方へのメリットで相乗効果を生む

——実際に、店舗のDXを拡張した新しいお店「ディッシャーズ」について教えてください。どのような狙いがあったのでしょうか。

人気ハンバーグ店「びっくりドンキー」を展開するアレフによる新業態の店舗です。我々がパートナーとして、DXソリューションを開発しました。 新店舗の出店を推進するために、出店費や運営費を抑えながら、バックオフィスのシステムを強化したいというのが最初の狙いであり課題です。

各席に置かれた端末から、自分好みにカスタムしたワンプレートディッシュのオーダーが可能。調理・配膳のみをスタッフが担当する。会計は自動精算機で、各種精算方法に対応

——オーダーシステム、キッチン、精算機等が既存店から一新されていますが、実際にはどのような効果がありましたか。

主に次のようなリターンを得ることができました。

・テーブルトップの端末からお客様に直接オーダーしてもらうことで、注文ミスを防ぐ。月間約80食のフードロスを削減。
・お水やおしぼりなどのリクエストも端末から可能に。スタッフがフロアとキッチンを往復するコストを削減。テーブルの消毒などの安全性に注力でき、40卓程度をキッチン2人、フロア1人の最少3人で運営が可能に。
・アルバイトのメニューや端末操作についての学習コストが減り、研修期間が今までの約3日間から数時間に短縮。
・決済システムの自動化によって、会計のスピードが向上。一組平均44秒から16秒に短縮し、個別会計などの手間も簡易に。
※ 各データは試験導入した「びっくりドンキー」南池袋店での数値。

最後に残った重要な課題が、「店舗側ではなく、お客様に対しては、どのような価値やメリットを提供できるのか?」という点でした。そこで、テーブルトップの端末からメニューを自分好みにカスタマイズできるというオーダーシステムに力を入れて、開発を進めました。

ハンバーグの枚数、トッピングやソースの種類、ライスやサラダの分量などを選択。端末に完成したディッシュの画像が表示され、盛り付けのイメージやボリューム感を確認できる

——ユーザーからの反応はいかがでしたか?

実は、オーダーがおおむね1回で済む業態の飲食店にこういった端末を導入する例は少ないのですが、自分好みの注文ができることが買われて、既存の「びっくりドンキー」のファンを中心に好評です。

——カスタムによるパーソナライズ化の実現は、わくわくする食体験に繋がりますね。

それこそがこのシステムのポイントです。完成品の画像を見るのが楽しいですし、カロリーや値段の調整もききます。頼みたかったトッピングを、自分のペースで存分にシミュレーションすることができますよ。

既存店と比べて客単価はまだ大きくは向上していませんが、お客様から「俺メニュー」「エンタメオーダー」とも呼ばれていて、新しい体験が口コミやSNSで評判を呼び、来店のきっかけになっていることは特に大きな効果です。

昨今は持ち帰りのお客様も増え、回転率や滞在時間など、既存の指標を軸に戦略を立てにくくなった部分もありますが、やはり来店客数を維持することや、「まず興味を持ってお店に来ていただく」ことは重要でしょう。

——カスタマイズはキッチンスタッフにとっては手間がかかりそうですが、むしろ調理しやすくなったそうですね。

はい。出来上がりの画像を確認しながら調理ができるため、メニューの構成などを暗記する必要がなくなりましたし、結果的によりお客様のイメージ通りの料理を提供できるようになりました。「メニューの写真と運ばれてきた実物との印象が違った」といったことも起こりにくくなったのです。一見非効率だと思われることも、やり方次第でプラスに変えられる、ということです。

——現在はインバウンドが停滞していますが、回復の際には人気を呼びそうです。

そうですね。端末で多言語対応が可能ですし、料理の画像をすぐに見られるという点でも利便性や魅力を感じてもらえると思います。

オーダー用のタブレット端末は米国などでも目にしますが、紙のメニューをそのままデジタル化したような、実用的なタイプがほとんどです。
UI・UXをうまくデザインすることで、リピーターづくり、ファンづくりに繋がるエンタメ性、ホスピタリティ、メンバーシップといった、日本ならではのおもてなしの心を伝えられるのではないでしょうか。

株式会社アルメックス 取締役 常務執行役員 イノベーション事業部長 青木和孝(あおき・かずたか)さん


メディアとしての店舗の価値を向上させていく

——端末から獲得できるデータは、どのように活用されているのでしょうか。

POS連携でクラウド上にリアルタイムで注文・売上データを保管し、即時にアクセスできるようになっています。同様のシステムを開発する際、「顔認証による顧客属性の獲得などは可能か」といったご質問もよくいただきますが、技術的にはもちろん可能です。
ディッシャーズでも今後の拡張・展開は検討していますが、個人情報管理の安全性や手間を考えると、現状は時期尚早と判断して、実装していません。ITの進化でデータの獲得は容易になりましたが、大事なのはデータをどう扱い、費用対効果を得るか、という点でしょう。

同様に、UI・UX等もオーバークオリティだと、ユーザーの気持ちやトレンドにフィットしません。操作が面倒ではないか、恣意的で凝りすぎてはいないか、といった点は常にチェックを継続する必要がありますね。
配膳や調理ロボットに関しても、最新鋭のものをどんどん入れればいいわけではありません。コモディティ化は進みましたが、冒頭でもお話しした通り、どのスタッフも使いこなせるか、お客様に抵抗感なく受け入れられるか、といった現場感覚とのバランスが重要です。

——DX導入後に、店舗の魅力や可能性を広げるための、ポイントを教えてください。

ソリューションやサービスは導入したらそれで終わり、というわけにはいきません。また、「1年後を想定して完成を目指す」「常にトレンドを取り入れる」という考え方も向いていません。 導入時の課題を満たしたあとも、効果検証の結果、ニーズや時流に合わせて、常に柔軟に改良やアップデートを続けていく必要があります。

ディッシャーズのタブレット端末についても、店舗のメディア展開をさらに推進する機能やコンテンツの拡張を検討しています。
例えば、メニューの人気投票をしたり、オーダーの画像をSNSでシェアできるようにしたり、また、タブレットをテーブル上でモニターやサイネージとしても使えるようにする、適切なタイミングでレコメンドやキャンペーンを配信する、アプリと連携してスマホからのオーダーを可能にするなど、広がりは無限に考えられます。

オーダーだけでなく、コンテンツの配信やスマホアプリとの連携など、店舗のメディア化を推進するためのテーブルトップ端末の活用が検討されている

——飲食業界以外の店舗でも、DX化は順調に進むでしょうか。

そうですね。実際に一般的な店舗はもちろん、アミューズメント施設や交通関連施設、病院、美容院などからも、大小を問わず多くのご相談をいただいています。
テクノロジーに対する生活者のリテラシーも急伸していますので、“順調に進む”というよりも、“あって当たり前”のものになっていくのではないでしょうか。

ただ、今新しいものや便利なものも当たり前になる頃には、お客様の価値観や求められるものも変わっているはずです。やはり、人々の生き方や暮らし方にフィットしながら、体験価値やメディアとしての価値を常に更新し続けていくことが、店舗におけるDXの本質と言えるのではないでしょうか。

ただのデジタル化に留まらない効果をもたらすDX。成功のためには、パーソナライズ化やエンタメ化といったユーザーメリットと、店舗側のメリットや利便性を相乗的に生む仕組みを考えていく必要があるでしょう。また、現在だけではなく将来的なニーズや課題に柔軟に対応できるよう、常に現場を忘れない視点を保つこともカギとなりそうです。

Written by: BAE編集部

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